江戸から続く生そばの老舗で出合った“京都のおうどん”

江戸から続く生そばの老舗で出合った“京都のおうどん”

今月の…お蔵入り

2023.02.20

文:「あまから手帖」編集部 / 撮影:大道雪代

2023年度から新たに始まった京都の連載「芯を食らう」。2月号は「晦庵 河道屋」のしっぽくうどんです。誌面ではお見せできなかった写真を、うどん好きな担当編集者の個人的な思いを乗せて、ご紹介します。

目次

芯のある大和撫子な “京都のおうどん” 料理の価値は、店の空気感で更に上ル。

芯のある大和撫子な “京都のおうどん”

好きな食べ物は、うどん、そば、きしめん(順不同)。29歳、独身、女性。そんな私が本誌で担当する京都の連載「芯を食らう」の2回目にしてさっそく好物登場。

書き手の中井シノブさんから、「次はここのしっぽくうどんにしようと思います」と連絡を受けて、“京都のうどん”ってどんなんやっけ? と、取材前の復習と下見がてら「晦庵 河道屋」へ向かった。正直、うどんは讃岐系のコシがある方を好む。ただ、コシが強ければ強いほどいいってものでもない。というのが私の勝手な持論だ。

「そばもあるのに、なんでうどん?」という疑問は取材申し込みのときに社長にも言われたそう。(笑)でもそれは、しっぽくうどんを食べたら分かった気がした。

喉ごしが絶妙。柔らかさの中にコシがある。 見た目ふんわり系なのに、少しやんちゃな女の子のような…。

いや、具材がきれいに並べられた見た目の美しさとだしの上品さ、柔らかすぎず硬すぎないうどんは、さしずめ一本芯の通った大和撫子か。(!?)

女性の両手ですっぽり収まる小ぶりな丼といい、“京都のうどん”の品のいい美しさにほっとするような幸せを感じる。

うどんしっぽくうどん1300円。特注する真丈、湯葉、煮椎茸、ホウレン草、うずら卵がのる。

料理の価値は、店の空気感で更に上ル。

「晦庵 河道屋」で感じる幸せには、もう一つ、店の雰囲気も大きく影響している。

数奇屋造りの日本建築で、小上がりあり、苔の美しい中庭あり、その中庭を臨む2階の座敷あり。店の空間すべてに“日本らしさ”“京都らしさ”が詰め込まれた風情がある。

昭和7年に建てられた店は、土壁にはひび割れが見えたり、床はきしんだりするものの、手入れが行き届いている。その理由を取材日、目の当たりにした。

開店前の午前10時に伺い、社長に話を聞きつつ、中庭横の半個室を借りて撮影。
その間、女性があっちやこっちやとずっと掃除していた。

あまりにきれいに掃除されているので、どうしても目で追ってしまう。

畳も机も窓も通路も柱も、すみからすみまで掃いたり、拭いたり。中庭の苔には水をやって。それはきっちり丁寧に。聞けば、この大掃除を毎日営業前にやっているのだそう。

日々繰り返される、この地道で丁寧な作業が、居心地良い清潔感のある空間を作っているのだと納得。この空間で食べられる料理には、その値段の何倍もの値打ちがある。

中庭前庭を過ぎると座敷席、中庭を挟んで、奥には椅子の席も。

■店名
『晦庵 河道屋』
■詳細
【住所】京都市中京区麩屋町通三条上ル下白山町295
【電話番号】075-221-2525
【公式サイト】http://www.kawamichiya.co.jp/

掲載号
あまから手帖2023年2月号「コーヒー/珈琲/coffee/コーヒ」
サードウェーブが落ち着いた今、大人がじっくり味わいたいコーヒーとは何か!? ツウが気になるあの人も登場!

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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