ひとさじの赤味噌が味をまとめる/大阪『うどん ごくう』

ひとさじの赤味噌が味をまとめる/大阪『うどん ごくう』

曽束政昭の「一麺口福」

2022.11.04

文:曽束政昭 / 撮影:ハリー中西

襟元淋しくなるような北風から冬の足音が聞こると、カレーうどんに惹かれる。鍋焼きなどの真冬のエースをすする前、丁度いい温め役の繋ぎの投手に『うどん ごくう』のカレーうどんを。味の決め手は、赤味噌だった。

目次

だし×タイ系スパイス 味のつなぎ役には、信州赤味噌を 店舗情報

だし×タイ系スパイス

釜たけうどん一門直系の末弟である店主・松元英樹さんは、和食の経験もあり、だしや天麩羅に定評あり。そんな大阪『うどん ごくう』のカレーうどんは、だし×タイカレーのスパイスという、ちょっと異色の組み合わせで提供される。

大阪『うどん ごくう』カレーうどんカレーうどん780円。50円増で白ご飯。

「最初は軽い気持ちでタイカレーに挑んだんです。もともと周辺にはだしカレーうどんが多く、スパイスカレーも考えましたが、近隣にインドカレー店があったので、どこにも無い味を」とタイカレーのスパイスに至ったそうだ。

大阪『うどん ごくう』タイ系スパイススパイスは、中央ドライパクチー、左から時計回りにレモングラス、ココナツミルクと牛乳のミックス、カルダモン。カイエンペッパー、クミン利いたミックススパイス、唐辛子。

味のつなぎ役には、信州赤味噌を

ところがパクチーやらレモングラスなど、個性的な風味がどうにもうどんだしに合わなかった。つなぎ役が必要だと考え、チョコレートやヨーグルトなどを混ぜて試作を重ねたが、どうにも納得いく味にはならなかったという。

そこで和の食材を再度見直し、採り入れたのが信州赤味噌。スパイスやハーブ系の風味と、しっかりとした和のだしの風味をいい塩梅に取り持った。

もちろん、ただ合わせるだけでなく、しっかりとスパイスを二番だしで炒めて風味を引き出し、タマネギと挽肉を炒め合わせたものを、一番だしでのばして用いるなど、手の込んだ一杯だ。

大阪『うどん ごくう』信州赤味噌八丁味噌も試してみたが、存在感が強すぎて、せっかくのスパイスの風味が隠れてしまうことに。意外にもコーヒーで試作しても馴染んだそうで。そちらは、味の厚みが足りず、赤味噌がベストという結果に。

朝練りのツルツルとしてのびやかなコシのあるうどんを引き揚げるとグイ~ンとのびて、時折跳ねる。ええ、白い服を着てる時に限ってプチッとカレー色の沁みが付いてしまう。

ちく玉天付きのメニューなど、天ぷらは別盛りで提供されるので、ちょいづけしながら食べてもよし、途中からひたして衣の甘みを混ぜながら食べるのもいい。当然のことながら、白ご飯も最後にダイブさせてもいい。どの要素にも、ほんのり言われて分かる程度に効かせた赤味噌が、いずれの食材にも手を伸ばして繋いでくれている。

友達や職場チームスポーツなど、人生の中でいろんなシーンがあるけれど、こういう赤味噌的な役割を果たす人、貴重だしなかなかいないし、当然そうなるのは難しい。ちょっと物悲しい北風に吹かれたら、この一杯で温まりたくなる。食後、上着を脱いで店を出るほどカラダの芯からポッカポカとなった昨年までの記憶がそうさせる。

大阪『うどん ごくう』外観

■店名
『うどん ごくう』 
■詳細
【住所】大阪市西区江之子島1-6-2 奥内第8ビル1F
【電話番号】06-6225-3853
【営業時間】11:30~14:00LO、17:00~20:30LO(水曜は11:00~14:00LO)
【定休日】日曜
【お料理】ちく玉天ぶっかけ850円、ちく玉天カレーうどん1030円。

Writer ライター

曽束 政昭

曽束 政昭

Masaaki Sotsuka

京都府出身。関西のラーメンを中心に、うどんや蕎麦にも精通する、言わずと知れた麺ライター。「最近は食が細くなった」と話すも、「2杯ずつ連続2軒の取材なら守備範囲」。コメンテーターやレポートなどマルチに活躍中。

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