九州と讃岐の間を狙ったうどん

年中冷たいうどんでも大丈夫。むしろ冷やかけは通年出してもらいたい。そんな筆者でも、熱々の釜揚げうどんは好物の一つ。そんな「冷や」好きが、キンと冷えた冬の風に吹かれると、食べたくなるのが京都・出町柳『饂飩店（うどんてん）よこやま』の温かいうどん。

店主・横山功司さんは、九州育ち。香川に３年ほど修行に出た後、京都でこの店を開いた。推し麺は冷たいうどんで、しっかりとしたコシがあり、のびがあるうどん。サックリ軽い衣の天ぷらも定評があり、天ざるなどが人気だ。

相方には魅惑のごぼ天を

その中でも目を引いたのは「ごぼ天うどん」。関西で「ごぼ天」といえば、おでんのごぼ天がまず浮かぶが、福岡ならばゴボウのたたきほどの太さのものを天ぷらにしたものが定番。今でこそ、薄切りや平たく長くスライスしたものや、かき揚げ風の天ぷらのものがあるが、ゴリゴリとした食感のゴボウの天ぷらをあったかいダシに浸しながら、やわいコシのうどんと食べるものが多い。

こちらのごぼ天は、季節野菜と共に別皿で提供される。ぱっと見は福岡のごぼ天に近いものだが、一口噛めばまったくの別物だ。

上品な薄衣の中には、しっとりとダシで炊いたゴボウがあり、ゴリゴリのものを覚悟して噛めば、勢い余って上下の歯がカチッと音を立てる。それほどにしっかりと炊いてあり、柔らかい。特に甘辛い味付けもなく、天然素材のかけダシにも寄り添うようにマッチしてくれる。塩も添えてあり、赤星のビールとも合わせたくなる。天ぷらの腕も確かなようで、どの野菜も上等の天ぷら屋で食べる満足感と変わりない。

ダシは昆布、サバ、ウルメ、煮干しを用い、関西と讃岐の間のような風味。昆布よりも節や煮干しの味わいがあり、むっちりのびやかなうどんによく絡んでくれる。

冒頭でも述べたように、釜揚げうどんが恋しくなっていたので、このうどんドンズバだった。表面が溶けかかったようにとろけてくれるうえ、コシもあり、ノビもある。讃岐の釜揚げの溶け具合やコシがある特色と、福岡のうどんのしなやかさでおおらかさを感じるほどののびがある。店主の目指すところがしっかりと感じられる上、ごぼ天の上品さ、ゴボウの滋味とダシの風味が次々と味覚を優しく刺激してくれる。後半は、ごぼ天をダシに浸して衣の甘さまで一緒くたにして啜る。食道から胃袋に伝わる熱量が、体全体をぽかぽかとさせてくれる上、この１杯の旨みが体の細部にまで行き渡る感覚に、ヒタヒタになる。

ごぼ天うどん1200円。天ぷらは別盛りなので最初はサクサクの衣としっとりのゴボウの対比を楽しみたい。次第にダシにちょい漬けするなど俺流で食べ進むわけです。

お勘定の後、出町柳の駅へ向う。鴨川デルタを越えるあたりまでじんわりと汗ばんでいたが、汗がひく頃にはまたこのうどんのことを考えていた。むっちりとしたコシ、ごぼ天のサクサクしっとり、ダシにヒタヒタ、最後にダシをズズー…ずっとそんな感じで頭を巡っている。

<京都御苑東、静かな住宅街に佇むお店。１組２名様までのご利用でどうぞ。

■店名
『饂飩店よこやま』
■詳細
【住所】京都市上京区寺町通今出川下ル東側扇町281-1
【電話番号】080-3313-9376（店舗専用ダイヤル）
【営業時間】月～木曜11：30～14：00LO、金曜18：00～20：00LO ※金曜夜は予約可
【定休日】土日祝休（不定休あり）
【お料理】ごぼ天ざる1200円、ごぼ天ぶっかけ1200円、天ざる1400円、サッポロ赤星（中瓶）600円。
【Instagram】https://www.instagram.com/yokoyama_udon_kyoto_demachi/