『京都祇園 茅乃舎』新章。うどん1杯から、日常に“だし”を
関西の新たな旗艦店となる『京都祇園 茅乃舎』
祇園町南側。花見小路からほど近い路地の一角に暖簾を掲げた『京都祇園 茅乃舎』は、全国34店舗を展開する茅乃舎にとって関西の新たな旗艦店となる。
京都は言うまでもなく、日本有数の食文化都市である。精進料理、茶懐石、京料理を育んだ背景には、北海道から北前船で運ばれた昆布の存在があった。素材の持ち味を引き出し、余計なものを加えない京都のだし文化は、日本料理の美学そのものと言ってもいい。一方、福岡の里山にルーツを持つ茅乃舎は、鰹節や焼きあご、うるめいわしなど複数の素材を重ねることで奥行きのある旨みを生み出してきた。
昆布を軸とする京都と、重層的な旨みを育ててきた九州。異なるだし文化を持つ二つの土地が祇園で出合った。
“一汁一菜”という、いちばん贅沢な提案
1階は『茅乃舎』のだしや食まわりの商品を揃えたショップ。2階は、全国初となる『御料理 茅乃舎 京都分店』の食空間。ブランドの原点である福岡・久山町の料理店が、初めて京都に登場したことは、同社にとっても大きな意義を持つ。
食のテーマは「一汁一菜」。豪華なコース料理や映えるグルメが注目を集めがちだが、茅乃舎が提案するのは、炊きたてのご飯と味噌汁、そして旬のおかずがひとつあれば幸せという、日本人が長く大切にしてきた食卓のあり方だ。
「京 十穀鍋」に込めた、京都と九州の対話
夜は「京 十穀鍋」が味わえる。福岡本店の看板料理である「十穀鍋」をベースにしながら、京都仕様へと仕立て直した一品。丁寧に引いただしに、黒豆や九条ねぎといった京都ならではの食材を合わせ、穀物の滋味深さを引き出している。 京都の昆布文化と、茅乃舎が培ってきただし文化。その双方を理解したうえで、新しい料理として再構築している。
だしを買う、食べる、学ぶ体験
『京都祇園 茅乃舎』が目指しているものは、物販店でもレストランでもない。1階ではだしを知り、2階では料理として味わう。そして今後はワークショップを通じて、だしの違いや組み合わせを学ぶ機会も用意される。
物販店では、しば漬けを使っただし茶漬けや湯葉にゅうめん、宇治抹茶と和風だしを合わせたスープなど、京都らしい食材を生かした品々が並ぶ。
考えてみれば、「だし」は目立つ存在ではない。料理の主役になることも少ないが日本料理において、だしは味の土台であり、文化の土台でもある。
その目に見えない価値を、五感を使って体験できる場所。それが「京都祇園 茅乃舎」の最大の魅力なのだろう。
京都には連綿と受け継がれてきた食の知恵がある。一方、茅乃舎には福岡の里山で育まれてきただし文化がある。祇園に誕生した新たな旗艦店は、その二つが出会い、新しい価値を生み出す場所だ。
一杯の味噌汁の湯気に季節を感じ、だしの香りに心をほどく。そんな当たり前の豊かさを思い出させてくれる場所が、祇園にまたひとつ増えた。
data
- 店名
- 京都祇園 茅乃舎
- 住所
- 京都市東山区祇園町南側570
- 電話番号
- 075-335-9536
- 営業時間
- 1階(物販)11:00〜19:00、2階「御料理茅乃舎 京都分店」ランチ11:30〜16:00(15:30LO)、ディナー17:00~21:30(20:00LO)※夜は予約可
- 定休日
- 無休(年始は除く)
- 交通
- 京阪祇園四条駅から徒歩5分
writer
中野 弘子
Nakano Hiroko
京都コーディネーターⓇ&フリー編集者。京都の月刊情報誌「Leaf」編集長時代に「町家でごはん」を企画。京都の日常暮らしから全国の伝統文化、エンタメなどを多数取材。著書「よそさんが心地いい京都」(交通新聞社)、ペンネーム古瀬ヒロ著「京都謹製きもの和こもの」「京都いっぴん日用品」(淡交社)などがある。
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