海藻から見る、海・食・未来 第1回海藻サミット【後編】
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歴史と最新の取り組み、この先の展望
続いてのセッションは「海藻は希望、すでに行われている様々な取り組み」について。それぞれ業界が異なるメンバーが登壇し、様々な取り組みが紹介された。
立命館大学の石田雅芳教授は、イタリアからオンラインで登壇し、秋田県男鹿半島の集落に伝わる海藻を軸にした精進料理を解説。
同じく立命館大学から、食マネジメント学部の鎌谷かおる教授は、江戸時代の海藻と水草をテーマに当時の料理本などの書物から読み解く、江戸期の人々と海藻の味わい方や調理法などを紹介した。
化粧品を手がける「OSAJI」の茂田正和さんは海藻と美容の観点から。日本では海藻は食べるものだが、海外ではタラソテラピーなど美容に使われていることを紹介。また日本国内の海藻消費量が多い地域と美肌ランキングに関係があるのではないかという着眼点から、海藻が持つ成分の美容効果の解説と、化粧品原料としての活用の可能性を語った。
京都で約150種類の野菜を育てる農家「石割農園」の石割照久さんは畑で使う海藻肥料について。海藻の肥料に出会ったが、コストが高く日常的に使うことはできなかった。何か策はないものかと考えている中で、地元の料理人との会話から、店でだしをとった後の昆布がらを引き取り畑に混ぜて使うことを試した。京都大学の農学部の教授と研究生がデータを取ったところ、野菜のコクや旨みがアップしていたという循環農業についての話題が提供された。
石川県七尾市でオーベルジュ『ヴィラデラパーチェ』を営む平田明珠さんは、能登半島の七尾市で獲れるアカモクでだしを取ったこと。地域で獲れる海藻を上手に乾燥させて料理に使えば、昆布のように、地域ならではの旨みを引き出すことにつながるのではと考えたと語った。また、先の震災で、石川県の中でも、輪島の方では海底が隆起し、逆に平田さんの住む七尾市の海底は下がった。災害によって自然環境の変化があるので、獲れる魚や海藻も変わったりすることがあるという、体験などが語られた。
目線がそれぞれに違う多彩な海藻にまつわる話題。深掘りし検証がさらに進めば、結びつく可能性を多分に秘めているのではないかと思わせる話題ばかりだった。
海藻料理を味わいながらの懇親会
この日の最後は、立食形式で、料理人が手がけた海藻料理を味わいながらの懇親会が催された。
セッション登壇者に質問する人、料理についてシェフに質問する人など多くの参加者で盛り上がっていた。
料理を担当したのは『木乃婦』高橋拓児さん、『ミルパ』のWilly Monroyさん、『魚三楼』の荒木裕一郎さん、『Motoi』前田元さん、『てのしま』林亮平さん、『シーベジタブル』から塚本みなみさんと濱田航さん。
『シーベジタブル』の塚本みなみさんは「お茶のように海藻をお菓子へ活用するという可能性もあるのではないかと考え、パウンドケーキを作りました」と。磯の香りもする緑色が鮮やかな一品を準備した。
福井県の海女の石森さんを訪ねて、海藻の加工製品化の現場を見学したという『Motoi』前田元さん。海藻のいしづきを取り、手作業で天日干しにしていく手間のかかる作業に驚いたと語る。完成した幅のりはそのままおにぎりに巻いて食べるのが一番だと思うが、今回はその旨みをバターソースに閉じ込めた。乾燥筋青のりをパイ生地に使った魚のパイ包みを提供した。
『木乃婦』高橋拓児さん作のハマグリ煮麺。料理屋で使う海藻を産地から送ってもらう時にその海藻が生息する地元の海水と一緒に届けてもらうことで、現地の海の匂いも一緒に料理として届けるのが、ガストロノミーの使命なのではないかと考えて、生の海藻の香りを伝えるべくトッピングに使ったと語った。
実際懇親会会場でも、提供する際に生の海藻を桶から取り出し、それぞれさっと湯通ししてからお椀の上に乗せていた。食感と香りを保ち、香りを伝えるプレゼンテーションも特別な印象を残す。
様々なジャンルの料理人たちが趣向を凝らした1日限りのスペシャル料理が多彩で、今後の海藻料理の広がりが楽しみだと感じさせるものだった。
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