フォルムも味も洒脱な、祇園『鮨まつもと』の江戸前寿司

京都でいち早く江戸前寿司をうたった店として名高い『鮨まつもと』は、開業から約20年。日々の研究を惜しまないにぎりはより深く、もてなしも丸みを帯びて和やかに。ファンは増える一方です。

京都における江戸前寿司の先駆け

観光客で年中賑わう京都の花街・祇園の花見小路通を、ほんの少し西に入った路地沿いに揺れる色暖簾。端に小さく書かれた「鮨」の一文字に、店主・松本大典(だいすけ)さんの気概を感じます。

『鮨まつもと』が京都に店を構えたのは2006年。京都で江戸前をうたう店は数えるほどしかなかった当時、東京の名店『新橋しみづ』で腕を磨いた気鋭の職人の登場は、一躍話題になりました。

塩と赤酢だけで調味する江戸前風の酢飯は、甘めの酢飯を食べ慣れた京都人には衝撃的。けれど新味があって完成度も高い堅実なにぎりは鮨通の心を着実につかみ、京都の鮨シーンを牽引する存在へと駆け上りました。

『鮨まつもと』外観
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『鮨まつもと』店主・松本大典さん
松本さんは1974年神奈川県生まれ。京都への出店は「風情溢れる古都に、江戸前寿司を広めたい」という熱い想いから。祇園に31歳で独立という若さも、当時はかなり異例でした。
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『鮨まつもと』の酢飯
キレとコク、それぞれが特徴の赤酢2種類をブレンドして作る酢飯。今はイタリアの岩塩を使うなど、マイナーチェンジを繰り返して味を磨いています。
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ゆるりと楽しむ「つまみとにぎり」

料理はおまかせのみで、昼夜ともに「つまみとにぎり」もしくは「にぎり」のいずれかを選べます。

「つまみとにぎり」は東京・豊洲や兵庫・明石から届く白身魚や貝の刺身、あん肝など、酒を誘う一品からスタート。寒い時季なら甘鯛の骨蒸しなどの温かいつまみなどを4品前後堪能した後、にぎりが12貫ほど続きます。ゆっくりお酒を飲みながら楽しみたい方におすすめです。

『鮨まつもと』のつまみイメージ
つまみの一例。甘辛に炊いたあん肝はワサビを添えて提供。素材が引き立つシンプルな調理を心がけているそうです。
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「にぎり」をとことん堪能

「アテは不要。にぎりだけが好き」という方は、ぜひ「にぎり」を。おおよそ18貫前後を小気味よいリズムでいただけます。

脂がのった小肌は塩と酢で〆てから冷蔵庫で5日ほど寝かせて丸みのある味わいに。九十九里浜のハマグリは、柔らかさを保つギリギリまで火入れして、特製の醤油ダレに漬け込んで。大間のマグロは状態に合わせてヅケにする時間を細かく調整。日々の研究を欠かさない丁寧な江戸前仕事を施したにぎりは、見た目も味も洗練されています。

『鮨まつもと』の小肌
秋から冬が特に脂がのっておいしい小肌。
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『鮨まつもと』の中トロ
豊洲から届く大間のマグロの中トロ。「秋以降に獲れる大間のマグロは、イカをたくさん食べている影響で旨みが濃いのですよ」と松本さん。あっさりめのヅケで。
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『鮨まつもと』のハマグリ
繊細に火入れした煮ハマグリ。食感は柔らかで、旨みはギュッと濃い。
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夜は少しハードルが高くて…という方は、まずは昼のおまかせからお試しを。使う部位などが多少違うけれど、魚は同じ。かなりお得にいただくことができます。