京菓子司『笹屋守栄』の、ステンドグラスのような羊羹「光る窓」

京都屈指の人気観光スポット・金閣寺近くで昭和の創業より京菓子を作り続けている『笹屋守栄』。赤ちゃんのほっぺのようにふわふわな代表銘菓「うぶ餅」はもちろん、近年は、京都府立堂本印象美術館のリニューアルを機に考案された「光る窓」なる羊羹も注目を集めています。

多彩な京菓子が並ぶ

昭和12年創業の京菓子司。京都屈指の人気観光スポットである金閣寺近くで季節感あふれる京菓子を作り続けています。

創業時からの代表銘菓は「うぶ餅」。京都丹波産大納言小豆を5日間かけて蜜漬けにする甘納豆と自家製こし餡をやわらかな求肥に混ぜ、国産大豆を自家製粉したきめ細かいきな粉をたっぷり。赤ちゃんのほっぺのようなふわふわ食感と大豆本来の風味が味わえます。

卵と牛乳などで作るモチモチ食感の生地で、京都産丹波大納言で仕込む自家製つぶ餡をはさみ、金閣寺の焼印を押す「鹿苑」。一粒丸ごとを甘露煮にした栗と自家製餡をサクサクのパイで包んで焼き上げる和風マロンパイも人気。こちらの餡は、こし餡と黄身餡、抹茶餡の3種から選べます。桜餅に草餅、水無月、葛焼きなど、季節の生菓子も多彩。あれこれ迷いながら選べるのもこの店の楽しさです。

京都『笹屋守栄』店内
京都『笹屋守栄』店主のお母様
店主のお母様・知代美さん。
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芸術作品がモチーフ

近年、代名詞的な存在になっているのが「光る窓」と名付けられた羊羹。初代が日本画家の堂本印象と交流していたことから、京都府立堂本印象美術館のリニューアルを機に考案されました。
モチーフになっているのは同画伯の作品であるステンドグラス「蒐核(しゅうかく)」。色ガラスやアルミ箔、大丸百貨店の包装紙など、様々な素材を貼り合わせたカラフルなステンドグラスで、射し込む日差しの強度や角度により様々な光が表れます。その遊び心ある作品を和菓子で表現したのは3代目主人の三田村 俊さん。

「菓銘は同美術館館長の三輪晃久先生につけていただきました。黄、黄緑、青、紫、赤、黒の6色を使うのですが、なかでも紫と黒が印象画伯好みの色だったと聞いています。色合いは奇を衒って見えますが、材料や作り方は伝統的な京菓子。作品のイメージを大切にしつつ、かつ自分らしい菓子を心がけました」。

温度を大切に慎重に

京都『笹屋守栄』煮詰める
京都『笹屋守栄』図柄を描く
京都『笹屋守栄』切り分ける
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たっぷりの手間と時間が掛けられる「光る窓」作り。まずは寒天と砂糖を煮詰めて作る錦玉羹を型に流し、慎重に図柄を描きます。そこに口どけの良い淡雪羹、希少価値の高い北海道産白小豆で上品な甘さに仕上げる白羊羹を重ねます。
冷えて固まったら型をひっくり返して取り出し、切り分けます。ここまでの作業の大きなポイントは温度。熱すぎても冷たすぎても図柄や層が崩れてしまうため、細心の注意を払って作られています。
美術館のミュージアムショップでの販売が基本で、通常は店頭に並んではいませんが予約しておけば取り置きも可能です。

京都『笹屋守栄』光る窓
「光る窓」は作れる量に限りがある。同じものがないのも魅力。1本1250円。包装紙や掛け紙、化粧箱には、堂本印象画伯や三輪晁勢画伯、三輪晃久画伯に特別に描いてもらった作品を基に製作されている。
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