旬菜の旨みを引き出す。京都・桂川『天ぷら 川辰』の薄衣の天ぷらコース。

京都の桂川のほとりに佇む、『天ぷら 川辰』。毎朝仕入れる野菜や魚を使った、薄衣の天ぷらをコース料理で提供しています。食材の甘みや旨みを存分に引き出した天ぷらは、そのままでもおいしくいただけます。

桂川そばの隠れ家

JR桂川駅から歩いて10分ほど。桂川のすぐ近く、住宅街の中にひっそりと佇むのが『天ぷら 川辰』です。普通の一軒家のような佇まいですが、門をくぐると料亭を思わせる敷石や暖簾が上質な雰囲気を醸します。

『天ぷら川辰』外観
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「ひいおじいさんが明治の終わり頃に始めた店で、昔は夏に屋形船を出していたこともあったんですよ」と、四代目の竝川(なみかわ)拓也さん。鍋料理を中心とした料理屋を代々営んでいたそうですが、「料理するのは好きだったけど、お店を継ぐ気はなかった」と、一般企業へ就職。

ところが、毎日飲み歩きをするうち、「作る側も楽しいのでは」と思い始め、料理人の道へ。料理学校や祇園の天ぷら専門店で修行を積み、2007年、改築と共に、天ぷらを主体とした店としてリニューアルオープンしました。

『天ぷら川辰』座敷カウンター
座敷カウンターは、目の前で揚がる様子を見られる特等席。
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『天ぷら川辰』店主の竝川さん
華麗な手さばきで天ぷらを揚げていく竝川さん。パチパチと小気味よい音と共に、香ばしい香りが立ち上り、食欲をそそります。
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カラリとした上品な薄衣

料理は、昼夜ともにコースのみで、天ぷらの食材は季節ごとに変わります。この日、登場したのはキスの天ぷら。上品に仕立てられた天ぷらをひと口頬張ると、サクッとした薄衣の中から、ふわふわとした白身が顔を出します。

『天ぷら川辰』キスの天ぷら
明石産のキスの天ぷら。
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軽やかな衣の秘密は、揚油に使われている米油。コースでいただいても重たさを感じません。「ビタミンEも多く含まれていてヘルシー。また、時間が経っても油特有の臭みが出ないんです」と竝川さん。

『天ぷら川辰』車海老の天ぷら
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熊本産活き車海老の天ぷらは身が締まっていて弾力抜群。そのままでもおいしいですが、「一番天ぷらの素材を引き立ててくれる」という沖縄の塩「シママース」をつけると、さらに甘みが増します。

『天ぷら川辰』外観
ホクホクした食感と魚本来の旨みが楽しめる琵琶湖産の子持ちモロコ。まるでモロコが泳いでいるよう。
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甘みを引き出した野菜の天ぷら

野菜の天ぷらは客からの評判も高い逸品。「旬にこだわり、毎朝八百屋に足を運んで仕入れています。そもそも野菜の仕入れが好きで」と、農家の畑に直接行ったり、京丹後に自ら山菜を採りに行くこともあるそう。また、食材ごとに最適な温度と時間で揚げることで、素材のおいしさを引き出します。

この日は、アスパラガスや九条ネギの天ぷらがスタンバイ。香川県産アスパラガスの天ぷらは、みずみずしく甘みたっぷり。シャキシャキとした食感を損なわない、絶妙な揚げ加減がたまりません。九条ネギの天ぷらは、京都で400年以上続く『樋口農園』のもの。噛むほどに、甘みがじゅわりと広がります。

『天ぷら川辰』アスパラガスの天ぷら
天ぷらと器の組み合わせにもセンスが光ります。この器は信楽焼の『嘉祥窯(かしょうがま)』のもので、特別に作ってもらったそう。
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『天ぷら川辰』九条ネギの天ぷら
九条ネギの天ぷら
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ドリンクには、天ぷらに合うワインを4〜5種、日本酒を10種程度取り揃えています。それぞれ旬の味覚に合わせてラインナップも変わるので、天ぷらとのマリアージュを楽しめます。

「和食の中でも、天ぷらは特に季節を感じられる料理。四季の移ろいを楽しんでいただけたら」と、竝川さん。コース内容は2〜3ヶ月ごとに変わるそう。旬の味覚を楽しみに、他府県から訪れるリピーターが多いというのもうなずけます。

『天ぷら川辰』個室
会食やお祝い事にもぴったりな個室。中庭からの光が注ぐ雪見窓も風情があります。
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