大阪・天神橋筋六丁目『ご馳走 ね音』、天ぷらとだし料理で魅せる夫婦の味

天ぷらと大阪が誇るべき食文化でもあるだしを使った料理を軸に、四季折々の旬の食材が目と舌を楽しませてくれる『ご馳走 ね音(ねね)』へいざ。

夫婦二人三脚の落ち着いた和食店

天神橋筋商店街の喧騒からは、少し離れた場所にある『ご馳走 ね音』。こちらを営むのは、穐村(あきむら)朋憲さんと望さんのご夫婦です。

『ご馳走 ね音』内観
店内は調理場をぐるりと取り囲むようなカウンターがメイン。4名まで利用可能な個室も一室完備しています。
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出会いは中津の人気割烹『沁ゆうき』での修業時代。いつか自らの店をと考えていたおふたり、ご主人の朋憲さんは和食の中でももっと専門性を身につけたいとその後人気天ぷら店『天星』へと道を進め、女将の望さんは『沁ゆうき』で日本料理人としての研鑽を積みました。

『ご馳走 ね音』穐村さんご夫妻
カウンター席からは常におふたりの料理人としてのきびきびとした姿を見ることができます。食材に真摯に向かい合うご主人と笑顔の素敵な女将のコンビネーションはさすがの一言。
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衣の軽さと薄さを追求した天ぷら

朋憲さんが手がける天ぷらは、これが極限なのでは? と思うほどカラリと軽い仕上がりなのが特徴です。たくさん食べても胸焼けしない天ぷらを目指し、今も試行錯誤を続けているのが衣。使用する小麦粉は、−60℃をキープできる冷凍庫の中で徹底的に水分を飛ばしてからふるいにかける作業だけでも3日間を費やします。それに合わせる卵水もしっかり泡立てて気泡を作ることで理想の薄衣を作り出しているのだそうです。

『ご馳走 ね音』天ぷら
天ぷらの切り口にご注目を。衣の薄さは一目瞭然…! 口に運ぶと衣の存在を感じるのは一瞬で、素材の旨みがぐっと広がります。
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もちろん揚げ方にも工夫がたくさん! 綿実油を用いて低温でじっくり火を通すことで食材にストレスがかからず、本来の味わいを引き出せるのもいい点だと朋憲さんは話します。ディナーでは「より低温でじっくりと揚げられるので」と、綿実油に太白胡麻油をブレンドするというこだわりぶり。

『ご馳走 ね音』調理風景
天ぷらを揚げる音はとっても静か。それだけでいかに低温で揚げているかが伺えます。
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そして望さんが手がけるのは、おでんを筆頭に炊き合わせなどだしをふんだんに使った料理の数々。天然の羅臼昆布や上花かつお、メジカやウルメのだしをブレンドすることで「コクと旨みをしっかり効かせています」と話します。そんなだしの味わいを目指すのも、店でズラリと揃える日本酒に合わせて欲しいという願いから。

シメにまで感動がある週末限定のランチコース

夜のおまかせコースもおすすめですが、初めての訪問ならば週末のみいただけるランチコースはいかがでしょう。ふたりで一緒に手がけることが多いという小鉢に始まり、天ぷら9種、ごはん、お味噌汁、香の物までたっぷりと堪能できます。

『ご馳走 ね音』小鉢
この日の小鉢は新じゃがいものすりながしと春野菜の胡麻和え。すりながしは望さんご自慢のだしがしっかりと効いた味わい。
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『ご馳走 ね音』天ぷら
この日の天ぷらは自家製のカラスミを添えたハリイカの大葉巻き、ヤングコーン、春子鯛、山菜のコシアブラに稚鮎など全9品。これだけいただいても、揚げ物特有の重さは全くなくお酒もご飯もスルスルと手が伸びます。
『ご馳走 ね音』天ぷら2
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ランチコースのお楽しみは、最後のご飯。女将が土鍋で炊き上げる銀シャリには漬物盛と青唐辛子明太子、牛しぐれ煮、そして“天ぷらやさんの玉子かけごはんセット”なるものがセットになっているのです。銀シャリの上にのっているのは卵の黄身の天ぷら! お箸で割って醤油をかけて食べ、トリュフオイルの香りを纏ったメレンゲを加えてまた食べ、最後にはそこに天かすを加えて…と玉子かけごはんは3通りで楽しめます。朋憲さんと望さん、おふたりだからこそ作り出せる料理とおもてなしが心を満たしてくれる一軒です。

『ご馳走 ね音』ご飯セット
朋憲さんが追求した薄い衣を纏った卵の黄身の天ぷらは、まず割る楽しみから! 黄身の色も濃く、ねっとり濃厚な味わいにも感動があります。天ぷらランチコース5500円(小鉢や天ぷらの内容は季節によって変わります)。
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