
『京菓子司 末富』伝統と進取の気風を大切に、弛まず挑戦し続ける
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ハレの場に華を添える
初代は『亀末廣』で修業。独立後は東本願寺の御用達として努力を重ねながら実績を積み、茶人や寺院への出入りを許されるようになりました。
俳句や茶道などへの造詣が深かった2代目は独自の境地を開き、薄い麩焼き煎餅の間に甘みを加えた梅肉を挟む干菓子「うすべに」を考案。さらに評判を高めます。エリザベス女王が京都を訪問された際に裏千家の要望を受けて、カキツバタをモチーフにした「唐衣」を調進するなど、京菓子の奥行を深め、格式を高めることにも貢献しました。
3代目も『末富』らしい菓子作りに邁進。日本古来の伝統行事だけでなく、クリスマスやハロウィーンを題材にした菓子も手がけるなど、ハレの場に華を添える京菓子が多くのファンを魅了しました。
当代の山口祥二さんもその流れを継承。伝統を重んじながらも進取の気風を取り入れ、京菓子の新たな境地を提案し続けています。
末富ブルーを缶の意匠に
2025年春、お披露目されたばかりの新作は、2代目の名を冠した「竹次郎の缶(5400円)」。『末富』の代名詞にもなっている、竹次郎氏が日本画家の池田遙邨画伯にデザインを依頼し、当時は珍しかったブルーを全面に用いた包装紙が缶にプリントされています。
「クッキー缶が人気を呼んでいるじゃないですか。それを参考にしてみました」と祥二さん。中には、末富の檜扇、右近の橘、左近の桜、都の情景を映し出す牡丹と柳と紅葉をモチーフにしたふやき煎餅と打物がぎっしり。隙間には金平糖が詰められています。
また、末富ブルーの名で知られる包装紙を現代風にアレンジも。手提げバッグのような意匠に仕立てたパッケージに包まれているのは、扇の焼き印が押された小ぶりのどら焼き「京の華扇(3個入り、1296円~)」。生地はプレーンと黒糖の2種があり、間には北海道産小豆をじっくり炊いた小倉餡またはこし餡が挟まれています。
京菓子×コーヒーをサブスクで
京菓子を生活の一部に取り入れて欲しいとの想いから始めた、京菓子とコーヒーの組み合わせが届くサブスクリプション販売も話題を呼んでいます。
「コロナ禍において店舗に足を運んでいただくことが難しい状況になった時、ご自宅で楽しめるようにと考えました」
コーヒーは、「感動するほどおいしいコーヒーを提供したい」との想いを持つ三重県の『colorfulcoffee』と共同で、数十種類のコーヒー豆の中からイメージに合う物をセレクトしてブレンド。『末富』の京菓子に合うオリジナルの味を開発しました。
ファンを魅了するユニークなアイディアの数々は、ジャン=ポール・エヴァンやアラン・デュカスなど、様々な世界の匠たちとの交流から生まれることが多いと祥二さんは話します。また、大学でも教鞭を取っていて、「学生たちとの会話も良い刺激になっています」。
伝統を重んじつつ、新しい技法や素材を一層アグレッシブに追及する『AoQ(青久)』ブランドのカフェスタンドも運営。「現代のお茶時間」に合うお菓子を日々発信しています。
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- 店名
- 京菓子司 末富
- 住所
- 京都府京都市下京区松原通室町東入
- 電話番号
- 075-351-0808
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 定休日
- 日曜・祝日
- 交通
- 地下鉄五条駅から徒歩5分
- メニュー
- うすべに6枚入り1296円~、京の華扇3個入り1296円~、竹次郎の缶5400円、コーヒーと京菓子の定期購入・生菓子2個とドリップバッグ3240円(送料別)~。
- https://www.instagram.com/suetomi.kyoto/
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