• amakara.jp
  • おいしいお店
  • 真っ当においしい!正統派ビストロ、大阪・天満橋 『ル・ビストロ クードポール』

真っ当においしい!正統派ビストロ、大阪・天満橋 『ル・ビストロ クードポール』

1983年創業。蔦が絡まる外壁に煉瓦敷のエントランス、クラシカルな店内、オーナーシェフの手になる料理も量感たっぷり。しみじみおいしいオニオングラタンスープや、鴨のコンフィなど、記憶に残る名物料理目当てに、足繁く通う常連客も多数。今では数少ない本格ビストロです。だけど敷居は高くなく、1000円ほどのランチからアニバーサリーを祝う豪華なコースまでスタンバイ。様々なシーンに活躍してくれる一軒です。

蔦が目印の居心地良いビストロ

天満橋駅から谷町筋から少し西へ。静かな一画に、蔦の緑が目印のお店があります。「この蔦は開店のときに植えたものです。初夏にはバラもたくさん咲くんですよ」と、“イケオジ”なオーナーの田中悦男シェフ。扉を開けると、気軽なカウンター席。奥には、アンティークなキャビネットを配した落ち着いたテーブル席が余裕をもって配されています。創業以来40余年、たくさんのゲストの美味しかった記憶、楽しかった思い出が降り積もっているような、温かな空間です。

『クードポール』の店内
アンティーク家具やプレートが配された温かみのあるテーブル席。フローリストである奥様による季節のお花が華やかさを添えています。
10

伝説のペンションでキャリア・スタート

長野県白馬村にあったペンション『ベル・プレ』の名をご記憶の方もいらっしゃるでしょう。時は1970~80年代。当時、脱サラして田舎暮らしをしたい人々がこぞってペンションを始め、一大ブームとなっていました。そんな中、『ベル・プレ』は、プロの料理人で、京都で自分の店を営んでいた胡(えびす)英二郎さんが始めたとあって、料理の質が高く、メディアに盛んに取り上げられていました。今ならオーベルジュと呼ばれたはずです。

そんな『ベル・プレ』に、若き日の田中シェフが飛びこみました。サーフィンやスキーなどアウトドア・スポーツが大好きだった田中シェフは、友人の紹介で白馬のペンションにアルバイトに行き、そこで『ベル・プレ』の主・胡氏と運命的に出会ったのです。「カッコイイ人でね。この人の元で料理人になりたいと思ったんです」。大学を中退して、田中シェフのキャリアがスタートしました。

胡氏の元で5年ほど腕を磨き、故郷の大阪に戻った田中シェフは、ミナミや北新地のフランス料理店を経て、1983年、29歳という若さで独立。タンシチューや牛バラ肉のビール煮込み、スモークサーモンなど、胡氏から薫陶を受けた料理は、田中シェフに今も大切に受け継がれています。

『クードポール』の田中シェフ
エントランスはオレンジ色。「デザイナーに任せたんだけど、結構気に入ってる」と田中シェフ。頭上に灯るステンドグラスのランプは、かつて『ベル・プレ』のダイニングを飾っていたものを譲り受けたそう。
10

素直においしいと思えるビストロ料理

「伝統料理って、おいしいからずっと残ってる。こういうのが好きやね」と田中シェフが話す料理の一つが、開店当初から作り続けている鴨のコンフィ。ランチのメインディッシュとして、骨付きのもも肉1本が1人前に大盤振る舞い。これぞビストロです。
「元々フランスの保存食。油に漬けて壺に入れて地下室に貯蔵してたものですよ」。気取って食べる必要なし。骨周りのおいしいお肉もかじりついていただきます。しっとりジューシーな身は絶妙の塩加減で、赤ワインとの相性抜群。
田中シェフの料理は、老若男女、どんな人も素直に「おいしい!」と笑顔にさせる、原初的なパワーが漲っているようです。

『クードポール』の鴨のコンフィ
料理はクードポールランチ3520円(5品)から。メインは肉か魚、数種類の中から選べる。名物・鴨のコンフィ。ケッパーや玉ネギなどで作る甘酸っぱいラヴィゴットソースを添えて。
10
『クードポール』の海の幸のサラダ
前菜の海の幸のサラダ。ムール貝にハモ、厚みのある自家製スモークサーモン、イカなどが盛り込まれて。魚介は田中シェフが毎日のように木津市場に出向いて、その目で選んできたもの。
10

夏場になると常連客たちが、今か今かと心待ちにしてきたお楽しみが解禁。冷たい桃のスープです。少しジャガイモを加えて、まったりとした口当たりを作り、白ワイン、ヨーグルトで爽やかな酸味を加えたシンプルな桃のスープは、夏だけの味わい。冬のオニオングラタンスープと双璧を成す人気メニューです。

『クードポール』の桃のスープ
日替わりのスープをこの季節限定の桃の冷たいスープに変更可能(プラス330円)。「山梨産の桃を使うことが多いです」という田中シェフの桃のスープは、今か今かと待っている常連多数。例年8月中旬頃まで。
10
『クードポール』のデザート
デザートまで田中シェフのお手製。この日は、マンゴーとヨーグルトのムースと、オレンジのパウンドケーキにチョコレートのアイスクリームのせ。
10

「シンプルでおいしい方がええんちゃう?」。
田中シェフの何気ない言葉に含蓄があるのは、40余年の間、いつも真摯に料理に向き合ってきたからに違いありません。今も休日はテニスを楽しんでいると言う田中シェフ、71歳。まだまだ元気溌剌です。