創業70余年の老舗、大阪焼き鳥の草分けの店。法善寺横丁『二和鳥』

石畳の風情ある法善寺横丁に灯る赤提灯は、格好の映えスポット。観光客が撮影する光景をよく見かけます。「二和鳥」と染め抜かれた赤提灯は、創業70余年の焼き鳥店の目印。貫禄に圧倒されて、暖簾を潜るのは少し勇気が必要でしょうか。でも実はコース5000円までとリーズナブル。大阪焼き鳥の草分けの店の実力をぜひ味わってみてください。

70余年の歴史ある横丁の顔

格子戸をガラガラと開けると、奥までずうっと伸びた立派な檜の一枚板が目を引きます。カウンターの内側、焼き台の前でよく似た背中を並べているのは、2代目の片野裕之さんと息子の雅幸さん。

1953年に、裕之さんのお父さんが、銀座の名店で習い覚えてきた焼き鳥の専門店として、この法善寺横丁に暖簾を掲げました。当時、東京で人気の焼き鳥は、大阪ではまだまだ馴染みが薄かったとか。大阪好みの味にアレンジした『二和鳥』の焼き鳥は、徐々に大阪の人に支持され、今ではすっかり横丁の顔として定着しています。

『二和鳥』の店内
檜の一枚板も貫禄があるカウンター席。2代目と3代目が肩を並べて、渋団扇でパタパタ煽ぎながら、上質な紀州備長炭で丁寧に焼いています。
『二和鳥』の店内
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名物のつくねと大根おろし

おまかせコースは、小さめの丸いつくね2本からスタート。ジューシーで、ほんのり甘くてコリコリした食感が軽快。つくねは、親鶏のモモ肉とムネ肉、玉ネギなどを合わせて毎日手作りしています。

最初に供される名物の大根おろしとも好相性。この大根おろし、とってもフワフワな食感に驚きます。大きい粒が残らないように、目の細かいおろし金でおろして、さらにミキサーに掛けるのだそう。

『二和鳥』のつくねと大根おろし
コース4950円から。小さな丸3つが串に並んだ可愛いつくね。追加は1本220円。箸休めのフワフワの大根おろしも創業以来変わらないおいしさ。
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技ありコースは意外にリーズナブル

軽快な食感の砂ズリ、鳥ねぎ、皮目はパリッと肉はジューシーな手羽、合鴨ロースなどが、次々に焼きたてで一本ずつ、鳥マーク入りの信楽焼の皿に載せられます。鶏肉に自信があるから、ほとんど塩焼きです。
唯一のタレ焼きは肝。「タレで膜を作る感じになるので、中がしっとり焼き上がるんですよ」と片野さん。確かに濃厚な味わい。
コースは他に、椎茸、鳥青唐辛子、心臓、エリンギ、うずらの卵、季節の野菜の全13串で4950円と、リーズナブルな価格帯が嬉しいですね。

『二和鳥』の鳥青唐辛子、手羽、鳥ねぎ
左からピリッとした辛みがアクセントの鳥青唐辛子、皮目パリパリ、身はジューシーな手羽、焼き鳥と言えばこれ、鳥ねぎ。
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『二和鳥』の心臓、砂ズリ、肝。
左から心臓、砂ズリは塩で、唯一タレで味わう肝。
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炭は打ち合わせるとキンと金属音が鳴る上質な紀州備長炭。それを惜しげなく投入し、渋団扇でパタパタと煽いでいます。「火を強くするというより、炎を消すために煽ぎます。煙で少し燻製風の香りが付くんですよ」と片野さん。2代目から3代目へ、火の前で1本1本の様子を見ながら団扇を使う技は、しっかりと継承されています。

実は、『二和鳥』卒業生の焼き鳥屋は全国にあります。鳥マークのお皿があったら、卒業生のお店かもしれませんよ。

『二和鳥』団扇イメージ
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