優しい兄弟のほっこり割烹、大阪・島之内『酒菜屋(さかなや)なないろ』

ちゃんとおいしくて、内容に見合った価格帯で、思い立ったときに数日前の予約で行けて、年齢層も問わない。つまりは頃合いの店って、ありそうでない…。ここは、まさに“頃合い”という言葉がピッタリ。コース主体の店が多い中、好みで一品も選べるし、肩ひじ張らずにおいしいお造りや煮炊きもの、居酒屋っぽいメニューも味わえる。まさに欲しかった一軒です。

創業20年、変わらぬ優しい居心地

かつて「東成の星」と称された『酒菜屋 なないろ』。安さ一番を競い合うような下町で、驚くほど上質な魚介や新鮮な野菜を繰り出して、居酒屋の雰囲気ながら、割烹級のクオリティーだと賞賛されていました。 オープンから8年後の2013年、満を持してミナミの島之内に移転。店は落ち着いた割烹の雰囲気になりました。だけど、メニューは親しみやすいラインナップ。東成時代からのゲストに加え、ご近所さんやお勤め帰りのサラリーマン、奥の小上がりでは女子会と、ますます老若男女に愛されています。

店主は、和食や韓国料理店、魚屋でも経験を積んだ原田貴司さん。相棒は、焼肉と韓国料理の店に8年勤めた弟の雄史さんです。この店のほっこりした居心地は、原田兄弟のお人柄の賜物。出過ぎず気取らず、大人気店になっても謙虚な姿勢も変わりません。

『なないろ』の店主原田さん兄弟
右が店主で兄の貴司さん、左が弟の雄史さん。メニューや50種近く揃う日本酒選びに迷ったらお二人におまかせを。奥の小上がりは個室なので、会食や接待などにも利用可能。
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まずは兄の目利きのお造りから

席に付くと、まずはひと口のおだしが先付代わりに。じんわりと胃の腑に染み渡る美味しいだしで、食欲に火が付きます。

絶対欠かせないお造りは盛合せでいただきましょう。淡路島のトリ貝、長崎の剣イカ、塩釜の本マグロ、島根の穴子は薄造りで、千葉のキンメダイはちょいと炙って、気仙沼のカツオはタタキにして。貴司さんの確かな目利きで、毎日市場から仕入れる魚介は、どれも上質。酒の勉強も怠りなく、食中によく合うところが揃っています。

『なないろ』のお造り
造り盛合せ1人前2200円(写真は2人前)。取材時は淡路島のトリ貝、長崎の剣イカは素麺状に、脂がのった塩釜の本マグロ、島根の穴子薄造り、千葉のキンメダイ炙り、気仙沼のカツオのタタキ。カツオと穴子はポン酢で。「磐城寿 純米吟醸」5勺(75ml)660円。
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味わい深い庄内野菜の一品も

季節毎の野菜を使ったメニューも人気です。高級割烹やレストランがこぞって使う山形県庄内の野菜が東成時代から揃っています。「元は常連さんの紹介で取ってみて、美味しいなと思って使い始めた」と言う貴司さん。生産者に会いたくなって、はるばる山形まで足を運び、以来、毎年のように通って、今や太いパイプを持つに至っています。

この日は、そんな庄内から届いた里芋を唐揚げにして、難波葱と共に炊いた一品が。大阪名物・油カスを加えて、こっくりとした旨みのある酒に合う仕立てになっています。

『なないろ』の野菜料理
庄内里芋と難波葱 油カス仕立て1210円。だしがおいしく、うどんを入れたくなるほど。山椒を一振りすれば爽やかに。
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弟担当・韓国惣菜もお楽しみ

もうひとつ、『なないろ』ならではのお楽しみは韓国風惣菜。弟・雄史さんの出番です。「僕自身韓国冷麺が大好きなんですが、よくある蒸し豚より牛肉の方が合うなと思っていて」と、ゆうじの冷麺には、キムチとキュウリの酢の物や卵など定番のトッピングに加え、大きな牛肉が一枚載っています。スープは鶏ガラと牛スジ、たっぷりの野菜を3時間炊いて取っていて、ごくごくと最後まで飲み干してしまうおいしさ。チヂミやチャプチェなどもあるので、ビールと共にぜひ。

とびきりの魚介に、野菜に韓国惣菜…何を食べようか迷ったら、原田兄弟にお任せ。先付を食べる様子や会話の雰囲気などさりげなく見て、ゲストそれぞれに合った“頃合い”の数品を供してくれますよ。

『なないろ』の韓国冷麺
締めに人気、ゆうじの韓国冷麺1260円。大きな牛肉の焼肉がのっているのも〇。お腹の具合に合わせて小さいサイズにも対応してくれる。
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