これぞ本物、大阪イタリアンの巨匠の技を味わおう！西天満『ジュンジーノ』

お髭のシェフはナイスガイ

店主の八島淳次シェフは、イタリアの星付きレストランで4年修業し、1989年に苦楽園に『オステリア・エノテカ・ダル・ジュンジーノ』を開業して以来、関西イタリアンを牽引し続けてきた方。苦楽園から六甲、元町、淀屋橋などで、レストランを展開してきました。

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そして、2019年、料理人人生45年目にして、西天満で初のカウンター主体の店を開きました。長年のファンは、目の前で八島シェフの料理する姿を見られるとあって、カウンターにかぶりつきで、その手際の良さに惚れ惚れと見入っています。そうそう、組長などと呼ばれていますが、八島シェフはちょっぴりシャイで、とってもハートフルなナイスガイですよ。

手打ちパスタの伝道師の実力

こちらは、夜はワインとオードブル、パスタだけでもどうぞというスタイル。だけど、まずはコースでその実力を体感していただきたいもの。昼は6600円、夜は8800円からと巨匠のコースは意外にリーズナブルなのです。

その内容は手抜き一切なしの本格イタリアン。例えば、夜のコースは、まずは“たこ焼き”ならぬ旬の素材を詰め込んだ丸いクレープ仕立てからスタート。前菜は鯛のカルピオーネ。生っぽさを残した鯛の旨みを活かしたイタリアの南蛮漬けです。旨みは、ボッタルガというイタリアのカラスミでプラス。スライスと粉状、そしてニンニクと合わせたクリームソースにもたっぷりとイタリア産カラスミが使われています。さらに、ナスの甘酢、トロトロに炒めた玉ネギ、紅芯大根などの野菜も盛り合わせて食べ応え十分。

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そして手打ちパスタを関西に広めた伝道師との異名も持つシェフの真骨頂、パスタは手打ちのタヤリンを使って、ポルチーニ茸のソースで。「龍の卵」というブランド卵を贅沢に使っているので麺が真っ黄色。2ミリほどの細麺ですが、シェフが気合と腰を入れて捏ねているので歯ごたえがしっかりとしています。
ソースは自家製チキンブイヨンとバター、パルミジャーノチーズでシンプルに。キノコの旨みとブイヨンの滋味、チーズのまろやかさが混然一体となってパスタに絡みます。八島シェフのパスタを一度でも食べたら、虜になること間違いなし。パスタとはこれほどおいしいものかと改めて感動するレベルです。

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なぜこんなにおいしいの？と思わず訊ねたら「パスタは空気が大事でね」とシェフ。「たとえば、生クリームはそのまま舐めてもおいしくないけど、ホイップクリームならいくらでも食べられるでしょ」。攪拌して空気を含ませるから、口の中で空気が弾けてソフトな食感とともにおいしさを感じさせるのだとシェフは言います。「酢と卵と油はそのままではおいしくないけど、マヨネーズになるとマヨラーなんてそのまま大量に食べるでしょ。あれも同じ原理」と。

それにしても、パスタとソース、具材の一体感の見事さは何事だろう。「それはタイミングかな。ブイヨンとチーズやバターが乳化するタイミングを逃さずパスタと和える。若いとき、ペペロンチーノを泣くほど作らされたから、身体が覚えてるんだと思うな」とシェフは当たり前のように言いますが、カルボナーラだって格上のおいしさです。

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本格イタリアンを堪能する

メイン料理も一品ご紹介しましょう。この日は鴨肉。八島シェフの肉料理には、いくつかの部位が一緒に盛られてくることが多いのです。鴨もムネ肉とモモ肉が。「部位によって異なるおいしさがあるから、どうしても両方食べてほしくてね」とシェフ。

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イタリア修業時代、肉や魚の一番おいしい部位・ツラミやカマは、上客に出すシーンを何度も見たとシェフ。「近頃はその一番おいしいところは骨周りだったりして食べにくいし、調理法が分からないと、店のスタッフの賄いにしてしまう若い料理人も多いようですが、もったいないですよね」。八島シェフは、マニュアル本には載っていない、本場で学んだ調理法を山ほど自分の脳内引き出しに持っています。
だから、鴨肉もムネはローストに、骨のある手羽元は煮込みにして供してくれます。栗の花のハチミツと赤ワインビネガー、そしてたっぷりの赤ワインで煮込まれた手羽元は、肉本来の濃厚な旨みと煮込みソースががっぷり四つに組んで、口の中を幸せで満たします。ちゃんと食べやすく骨を取り除いてくれているので、ご安心を。

イタリアンってこんなにおいしいんだと改めて感じさせてくれる巨匠の味を、ぜひ一度ご堪能ください。