
京の料亭『建仁寺 祇園丸山』名刹の傍らで味わう、四季と遊び心
門を入った時から始まる至福の時間
八坂の塔から西へと向かう坂道沿い、建仁寺の南側に立つ店構えは一見、ごくさりげないため、初めて訪れる方は意外に感じるかもしれません。しかし数寄屋造の門に足を踏み入れるとすぐに丁寧な出迎えがあり、古風な待合から玄関に至る数歩のうちに、外とは異なる時間が流れ始めます。座敷に落ち着く頃には、料亭ならではの雰囲気に身を委ねる楽しさに気付くでしょう。
五感で季節を感じさせる料亭のもてなし
主人の丸山嘉桜さんは、格式ある京料亭で修業をはじめ、20代で既に名だたる店の料理長を歴任。その後、1988年に自身の店『祗園丸山』をひらいて国内外に知られる存在となりました。2店目となるこちらの『建仁寺 祗園丸山』の開店は、98年のことです。
「日本料理に携わる人間は、おいしい料理を作るだけやのうて、日本の季節や文化を大切にして伝えていくことが大切やと思っています」と丸山さん。その思いは茶道や京料理に初めて触れた若き日から変わらないとのこと。
例えば秋のある日。床の間には石川丈山の書と新酒のお供えに、秋の花。大きな飾り盆に描かれた螺鈿(らでん)のうさぎに見惚れていると、「あれは月の精なんですよ。日本人にとって秋の月は特別なものです。今日は料理やしつらいで月を感じていただければ」と丸山さん。
先付は、何年もかけて作り上げたという煤竹(すすたけ)に漆をひいた横笛を模した器に盛り込まれて。「料理には楽しさもなくては」という丸山さんならではの遊び心にあふれた一品です。気がつけば箸置きもうさぎの意匠、引盃も添えられて、昼のお座敷にいながらにしてお月見の気分が味わえます。
伝統の京料理に新しい味の融合も
日月椀の中は、名残の鱧を贅沢に使った真薯(しんじょ)が主役の汁。最初ははんなりとした旨みが口中でほのかにたゆたいますが、食べ進むうちに椀種の味が溶け出してきて複層的なおいしさに。この加減の見事さと独特な歯触りの白舞茸を取りあわせるセンスに瞠目(どうもく)させられます。
先付の胡桃豆腐に添えられた鴨ロースの中にはフォアグラが挟んであり、濃厚な素材を掛け合わせた絶妙なバランスに驚かされましたが、太刀魚の焼きものに添えられているのはなんとライム。「和の柑橘とはまた違う相性の良さでしょう?」と笑う丸山さん。ガラス器の中の葛そうめんは最近創作した料理とのことですが、思いがけない食感に生姜の風味が鮮やかで口直しにぴったりです。
昼夜共通の季節の料理コースはもちろん、昼のみに提供される2種類の懐石コースでも、素材を見極める確かな目と卓抜した料理の技、さらに進取の気風が詰まった風雅な料理が次々に登場します。
昼の懐石コースは料亭入門編としてもおすすめ
『建仁寺 祗園丸山』の季節のおまかせ料理は、夏は天然鮎、冬は松葉ガニといった旬素材を座敷前にしつらえた炭火で焼きあげて供されるなど、料亭ならではの風雅なひとときを堪能できます。
しかし、まずは、今回ご紹介した昼の懐石コースで料亭の魅力に触れてみるのもおすすめです。
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- 店名
- 建仁寺 祇園丸山
- 住所
- 京都府京都市東山区小松町 566-16
- 電話番号
- 075-525-0009
- 営業時間
- 11:00~15:00(最終入店13:00)、17:00~21:30(最終入店20:00)
- 定休日
- ⽕曜、第2・4⽉曜 、不定休
- 交通
- 市バス「清水道」から 徒歩5分
- 個室
- 6室(2~40名)※掘りごたつ席1室、座敷(椅子席も可能)4室、茶室1室。席は個室のみ。
- メニュー
- 昼/懐石コース(昼のみ)18975円~。夜/4~10月は37950円~。11~3月は50600円~。お⼦様⽤ミニ懐石(昼・夜)7590円。※税・サービス料込み。
- 外国語メニュー
- 英語
- 備考
- キャンセル料あり、ドレスコードあり
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