京都・笠置の料理旅館『松本亭』の味わい深いキジ鍋コース

珍しいキジ鍋コースをいただける京都山中の料理旅館は、昼夜共に食事だけの利用も可能。お店がある笠置山までは京都からも大阪からも、車で約1時間30分。春は桜、秋は紅葉が見事なので、ドライブを兼ねての小旅行にもピッタリです。

明治23年から続く料理旅館

京都市内から車を走らせること約1時間30分。古くから信仰の場として知られている笠置山に『自遊宿 料理旅館 松本亭』ができたのは、明治23年(1890)のこと。宿のすぐ上に建つ笠置寺やその奥にある魔崖(まがい)石仏に詣でる人が多かった時代に、参道の茶店を兼ねた宿屋として始まったそうです。

『松本亭』外観
宿があるのは、笠置大橋から山道を頂上付近まで上がった先。創業当時の建物を適度に残した宿は、独特の風情があります。
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時代のニーズに合わせて増改築を繰り返した結果、現在は約50畳の多目的ホールや大広間まで備えた設えに。音楽サークルや大学生のゼミ合宿の場としても親しまれているそうで、屋号に掲げている“自遊宿”の名の通り、多彩な滞在を楽しめるちょっと変わったお宿です。

『松本亭』の5代目亭主・松本敏明さんと奥様の孝子さん
5代目亭主の松本敏明さんと奥様の孝子さん。お二人が立つのはフロント脇にある『和café鹿鷺(かさぎ)』。こちらは定食のほか、カフェ利用も可能なスペースです。
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名物のキジ鍋コースは先代が考案

キジの姿を模した愛らしい陶皿が印象的。宿の名物として知られるキジ鍋の歴史は意外と浅く、「‟自然に囲まれた環境の中でいただくに相応しい個性ある料理を“と先代が考案したんですよ」と5代目亭主の松本敏明さん。色んな方が楽しめるようにと、食事だけの利用も可能。笠置山ハイキングに訪れた方が利用されることも多いそうです。

『松本亭』のキジ鍋
写真のキジ鍋は2人前。カツオや昆布を利かせた鍋だしは甘さ控えめの醤油ベースです。
『松本亭』の食事処
山景色が美しい昼利用がおすすめ。大きな窓を備えたこちらの個室が特に人気です。
『松本亭』の箸置き
先代が特注したという愛らしいキジの箸置きも素敵です。
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キジは笠置山の麓にある『ナカムラポートリー』を通じて、高知や愛媛などの国産養殖を丸のまま仕入れ。松本さん自ら、日ごとに捌いています。「自分で捌くから、ムネやモモだけでなく、肝や心臓、ネックなどの内臓まで余さず楽しんでいただけます。骨からとてもよいだしが出るので、鍋の最初に加えていただく仕立てにしているんですよ」と、松本さん。

キジ鍋コースは1人前6500円から用意。ボリュームを抑えたキジ小鍋定食もありますが、ここまで来るなら、おすすめはキジの塩焼きや釜めしまでまんべんなく堪能できるキジ鍋弥勒(みろく)コース8500円です。

塩焼きは、パリッと焼けた皮目から滲み出る濃厚だけれどキレのいい脂が何とも言えないおいしさ。
噛み締める度にコクのある旨みを感じるモモ肉や胸肉は、鶏肉と鴨肉の中間といった印象。醤油ベースの鍋でいただくコリっとした砂ずりや肝・心臓などの内臓もまったくクセがなく、きれいな味わいです。

『松本亭』キジ鍋コースの先付と鹿肉のタタキ
先付はゴマ豆腐、オクラのゴマ和えなど季節の前菜盛合せ。キジ鍋弥勒(みろく)コースだけに付く鹿肉のタタキはポン酢とモミジおろしでいただきます。
『松本亭』キジ鍋コースのキジ塩焼き
キジ塩焼きは自分で焼いていただくスタイルです。部位はモモ肉、胸肉、皮。お好みで柚子コショウや抹茶塩を付けて。
『松本亭』キジ鍋コースのキジ釜めし
キジ肉のほか、ゴボウや椎茸、ニンジンなどを加えたキジ釜めしは一客ごとに炊き上げてくれます。カツオと昆布のだしにわずかな塩と薄口醤油を加えただけの優しい味付けです。
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1300年以上の歴史を育み、巨石「弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)」をご本尊とする笠置寺まで徒歩数分と、観光にも恵まれた立地。食前や食後の運動を兼ねた山道散策も気持ちが良いですよ。

『松本亭』すぐ側にある東海自然歩道入口
笠置寺までは、宿の脇にある東海自然歩道入口を行けばすぐです。
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