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イタリア人シェフの故郷・サルデーニャ島の料理が主役 兵庫・苦楽園『ASUNI(アズーニ)』

苦楽園口駅からほど近い坂道の三叉路に掲げられたイタリアの国旗と、見慣れないイタリア・サルディーニャの旗が目印。2025年2月にオープンした『ASUNI(アズーニ)』。イタリア人オーナーシェフ、メリス・マリオさんの故郷・サルデーニャ島の町の名だ。

サルデーニャ島のパスタをランチで

16席がゆったりと配され、昼間、外光がたっぷり入る明るい店内。カジュアルなランチセットが、早くも近くに住むイタリア料理好きの人気を集めている。
前菜盛り合わせにパン、本日のパスタかリゾットをチョイスして1900円。本日の自家製パスタに変更すると、プラス500円。パスタやリゾットに加えてメイン料理も追加する場合はプラス1100円~。ランチは当日のお腹の具合、気分や好みで選べる、何度も食べたくなる内容とリーズナブルな価格だ。

『アズーニ』の店内
店内はシンプルでモダンなインテリア。緑豊かなテラス席があって、ワンちゃんを連れた客が食事する光景も。
『アズーニ』の外観
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シンプルな味わいのスープ、様々な味の前菜の盛り合わせにも満足するが、何といっても珍しいのが、サルデーニャ島の粒状のパスタ「フレーゴラ」。クスクスよりも粒が大きく、プチプチした食感が面白い。アサリやハマグリ、ムール貝などのだしでいただくと、旨みとパスタの香ばしさで止まらなくなるおいしさだ。

『アズーニ』のフレーゴラ
サルデーニャ島の粒状のパスタ「フレーゴラ」。ランチセット1900円から。取材時は、アサリ、小松菜、フレッシュトマト。フレーゴラはアサリやハマグリ、ムール貝など貝類と合わせるそう。
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サルデーニャ島のラビオリと言われる「クルルジョネス」がオンメニューしていたら、ぜひ味わってほしい。ジャガイモ、ペコリーノチーズ、ミントを生地で包んで、麦の穂をイメージした形に仕上げたもの。もちろん手包み。チーズの風味にほんのりミントの香りで、もっちり、ぷるんとした優しい食感は、一度食べたら忘れられなくなる。

クラシカルだけでなく、モダン料理も得意

マリオシェフは、様々な店で腕を磨き、伝統料理だけでなく、モダンイタリアンも身につけている。その技を夜のコースでさりげなく披露する。そんな一皿が「サツマイモのカンノーロ」。一見、シチリア島発祥の伝統菓子「カンノーロ」だが、筒状のものは、薄くスライスして揚げたサツマイモ。中はリコッタチーズクリームではなく、サラダ仕立てにした鯛と洋梨。さわやかで驚きのある前菜に仕上がっている。
「イタリア料理の新しいスタイルを知ってほしい。昔ながらのトラットリアや家庭料理を出すイタリアンは日本にたくさんあるけれど、イタリア料理もどんどん若手シェフの新しいスタイルになっている。今のイタリア料理を食べてほしいんだ」とマリオさん。

『アズーニ』のサツマイモのカンノーリ
コース「ジョバンナ」4500円から。前菜「サツマイモのカンノーロ」。サツマイモをごく薄くスライスし、カンノーロの型に巻いてフリット。鯛と洋梨をサラダ仕立てにして中に詰めている。サルデーニャでは、魚や炙った馬肉をフルーツと合わせて前菜にすることが多いそう。
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そして、「サルデーニャやイタリアのことを、もっと知ってほしい」と熱く語る。
そのため、ワインリストにはマリオさんが選んだサルデーニャワインが5種類。サルデーニャワインを使った料理もコースに組み込む。「グラスフェットビーフのヒレ肉のロースト」のカンノナウソースだ。サルデーニャの代表品種カンノナウで造られた赤ワインは果実味豊かでスパイシー。「この料理は、ぜひカンノナウワインと一緒に」とにっこり。コク深い味わいに、ワインをもう一杯。

『アズーニ』のグラスフェットビーフのヒレ肉のロースト
8000円のコース「アンナ」から。「グラスフェットビーフのヒレ肉のロースト カンノナウワインソース」。サルデーニャの伝統的な薄焼きパン「パーネ・カラザウ」と。
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ノンナ(おばあちゃん)の味を大切に

「マンマ(お母さん)も南イタリア出身。僕自身はミラノで育ったけれど、小さいころからサルデーニャ島でノンナ(おばあちゃん)が料理をするのをみて、料理と食べることが好きになった」と、14歳から料理人の道に進んだマリオさん。
「毎朝、ノンナが窯で焼いたパンを食べ、山羊や羊の搾りたてのミルクを飲んでいた。ノンナが焼いたビスコッティをミルクに浸して食べていたんだ」。マリオさんの料理の原点は、サルデーニャのおばあちゃんの味だという。

「ナポリ出身のマンマのティラミス、おばあちゃんが作るラビオリや仔羊の煮込み…。僕は料理上手の女性たちに囲まれて育った、最後の世代かもしれない」。
夜のコースには、父方のおばあちゃん・ジョヴァンナ、おばさん・イーダ、マンマ・ジューズィー、母方のおばあちゃん・アンナと、それぞれ、マリオさんの人生に大きな影響を与えた女性の名前を冠している。

マリオシェフの料理を味わいながら、まだ訪ねたことないサルデーニャ島、料理上手のノンナやマンマへの思いを募らせる。

『アズーニ』のマリオシェフと奥様
料理はマリオシェフが、サービスは奥さまの布弥子さんが担当。マリオシェフは1976年生まれ。14歳から料理の道に。その一方、ロックバンドでヴォーカルを担当。ツアーに出て大きなステージに出演、アルバムも2枚出している。
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