宇治橋のたもとで、約860年。京都・宇治のお茶屋『通圓』

お茶の名産地として知られる京都・宇治。新旧さまざまなお茶屋が軒を連ねるが、その中でも長い歴史を持つ老舗が『通圓』だ。「お茶の品質を保つため」と、店舗は今でも宇治の本店のみ。ここで、860年以上お茶で客をもてなし続けている。

橋守の初代が1160年に創業

お店の始まりは、1160年。源頼政の家臣で古川右内という武士が、隠居後に宇治橋の橋守役(守護職)を任された。その際に、奈良と京都を行き来する人に水を振る舞ったのが起源だ。

現在のお店は、1672年に建て替えられたもの。直射日光がお茶に当たるとお茶を劣化させるため、ひさしは深く、間口は北を向いている。また、客が出入りしやすいよう間口を広く、柱は少なくしており、客の足が向く設計がなされている。

『TSUEN』外観
宇治橋の橋守であることから、かつてお店は宇治橋と “セット”のように扱われ、橋の架け替えや建て替えの際に、店も一緒に建て替え・修繕してもらっていたそう。
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店頭で毎日淹れたてのお茶を提供

店に入ると目に飛び込んでくるのは、壁に並べられた大きな茶壷の数々と、店を見守るかのように飾られた木像。これは、狂言『通圓』という演目で、茶せんと茶碗を持ち舞っている狂言師の姿を、とんちで有名な“一休さん”が彫ったものだとか。そんなところからも、歴史の深さを感じさせる。

『TSUEN』一休和尚作「初代通圓」木像
一休和尚作「初代通圓」木像。狂言には同店を題材とした『通圓』という演目があり、そのワンシーンを彫ったもの。
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そしてこの一角で、24代目店主・通円祐介さんは、毎日客にお茶を振る舞っている。祐介さんがお茶を淹れる動作は、息を吸うように自然だ。茶葉の香りをかぎ、湯釜で沸かしたお湯を柄杓でとり、茶碗に移す。

この日提供していたのは、「煎茶 宇治橋三ノ間」。苦味が少なく、だしのような旨みが口いっぱいに広がる。そして、後味が長引き、飲んだ後もしばしその余韻に浸ってしまう。

「うちで使用している茶葉は、肥料をたっぷり与え、手間暇かけて育てられたものです。芽が若いうちに摘んでいるので、お茶の味が濃厚。さらに、お茶本来の香りを楽しんでもらうために、基本的に強い火入れはしないんです」と、祐介さんは話す。

『TSUEN』24代目店主・通円祐介さん
祐介さんは、代表就任から15年。親から継ぐように言われたわけではないが、常連客や祖母の言葉、家業を継ぐ友人が多い宇治の街で育つ中で、ごく自然に継ぐ選択をしたそう。
『TSUEN』客に振る舞うお茶
「煎茶 宇治橋三ノ間」は通常購入すると、50g1900円、100g3800円。
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ブレンドが生み出す味

同店では、煎茶や玉露、抹茶、ほうじ茶、玄米茶、有機栽培茶など、多様な種類のお茶を取り揃える。なかでも、定番の煎茶・玉露・抹茶はそれぞれ7種以上を用意。「すっきりしたもの」「旨みの強いもの」など、好みに合わせて選べるラインナップが魅力だ。

「お茶の収穫は気候に左右されることも多いので、リスクヘッジの観点からも自社で農園は持っていません」といい、約10軒の農家や問屋から仕入れた茶葉をブレンドして店の味を作っている。地域に住む昔からの常連客はもちろん、海外からも「ここのお茶でなければ」と繰り返し訪れる客も多いという。

『TSUEN』店内販売商品
お茶は、50gや100gなどの袋入り商品のほか、手軽に飲めるティーバッグタイプも販売。
『TSUEN』玉露商品
玉露の人気商品「玉露 ふじつぼ(50g)」1900円、「玉露 夢の浮橋(50g)」2900円。
『TSUEN』店内
缶入りの商品はギフト用にもぴったり。「煎茶 まつかぜ(80g)」1330円、「玉露 ふじばかま(80g)」1930円、「煎茶 あおい(80g)」2250円。
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宇治川を眺めながら一服を

店内には、お茶や甘味をいただける喫茶スペースも併設。目の前を流れる宇治川を眼前に望める店内席は、時の流れがゆったりとしていて、ホッとひと息くつろげる空間だ。

『TSUEN』店内からの眺め
大きな窓は宇治川に面しており、川にかかる宇治橋も見える。
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『TSUEN』店内席
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メニューには、抹茶や煎茶などのほか、サンデーやぜんざいなどの甘味メニュー、茶そばなどのお食事メニューも。

なかでも人気なのは、宇治茶とお菓子のセット。宇治茶は、抹茶、玉露、煎茶の3つ、お菓子は、ようかん、茶だんご、もなかの3つの中からそれぞれ好きなものを選べる。お茶は挽きたてのものを提供しているので、お店に来たのならぜひ店内で一服したい。

『TSUEN』お抹茶(鳳凰の昔)セット
「お抹茶(鳳凰の昔)セット」1160円。同店でも最高級の抹茶「鳳凰の昔」は、苦味が少なくお茶の味が濃い。茶だんごは、粘りのある食感と、お茶の優しい風味が特徴だ。
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創業以来のポリシーは品質を守ること。近年、インバウンドの人気を受け、宇治茶の需要は高まっているが、売れるからといって無理に拡大はしない。「管理が行き届く範囲で、この場所で味を守り続けることを最も大事にしています」と、祐介さん。

宇治橋のたもとで、訪れる人を茶でもてなす。860年以上経った今も、お店の原点は変わらない。

『TSUEN』
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