大阪・福島の『あやむ屋』でごちそう焼鳥を味わい尽くす
若者にも優しい価格で
『あやむ屋』にはフードライターになる前、おそらく社会人1年目の頃から通っている。
初めて訪れたとき、それまで食べていた焼鳥とは別格!と感動して、辛抱たまらず週に2日訪れたこともある(笑)。20代の給料でも通える値段だったのだ。
店主の永沼 巧さんは、元商社マン。数々の名店の食べ歩きで鍛え上げられた確かな味覚を生かすべく転職。大阪の焼鳥店で修業して、1999年に開いたのがここ『あやむ屋』だ。
開店当時からその味は飲食関係者の間で話題となり、有名料理人がカウンターを埋め尽くす夜も。瞬く間に人気店の仲間入りを果たしたが、サラリーマンの財布事情をよく知る永沼さんは、あくまでも庶民的な価格で食べ手を唸らせる焼鳥を提供し続けてきた。
「うちは今も若いお客さん、多いですよ。頑張れば払えない値段じゃないですし」と穏やかに語る。開店から四半世紀が過ぎても若者の懐に優しく、こちらで焼鳥の味を覚えられるのは幸せなことだと思う。
ひと通り味わえる10串コース
今回ご紹介するのは、10串のコース4300円だ。わさび焼き、ねぎま、豚バラ、せせり、三角、ナンコツ、ズリ、ハツ、つくね、肝に焼き野菜も付いている。
始まりはいつも鮮やかなすりたてのワサビをのせたささみの串から。しっとりとしなやかな身質を生かして、火を通し過ぎないで白く美しく。永沼さん曰く「温かいお造り」のような状態で提供する、挨拶がわりのひと串目。長野県安曇野産の上質なワサビが品よく鼻を抜けていく。
さて、傍にはビールが欠かせない。美酒を愛する店主が注いでくれたのは『SAPPORO』 の「SORACHI Golden Ale」。きめ細やかな泡と喉を抜けた後の独特の風味、ふくよかな余韻がリッチながらも爽やかで、炭火焼鳥によく合う。
鶏は長年使ってきた丹波鶏に加え、近年は博多地鶏も部位によって仕入れている。
素材の持ち味を引き立てる塩は、焼く前に打つ特製ブレンド塩と、仕上げ用に希少な対馬の天日塩をと、使い分ける。
タレももちろん特製だが、特筆すべきは酒の種類。日本酒、マルサラ酒、シェリー、ポモー・ド・ノルマンディー、赤・白ワインにマデラ酒と、耳を疑うほどの数を調合している。砂糖は使っておらず、これらの酒が深みとほのかな甘みをもたらす。
わさびから始まったコースは、塩もの、タレものの串へと続いていく。ギリギリ形を留めていて、噛まずとも口の中でほどけていくようなふわりとしたつくね。お酒もそろそろワインに移行するとしよう。
こちらでは初心者でも選びやすいように「赤A」飲みやすい果実味系「赤B」しっかりめ、と記してあり、それぞれグラス、デキャンタ、ボトルと3サイズで提供。さらに、ブルゴーニュはハーフボトルから、店主おすすめのボトルワインもスタンバイしているので、ワインと焼鳥のマリアージュを存分に楽しむことができる。しっかり飲みたい夜ならボトルを空けるのもいい。他にも、日本酒、焼酎、ハイボールにシェリーまで、厳選した珠玉の酒が揃う。
お腹に余裕があれば単品の追加を!
串はボリュームがあり、食べ応え充分。一般の方なら10串のコースでも満腹かもしれない。けれど職人が技の限りを尽くした完成度の高い串を味わううちに、他のものも食べてみたくなるのが食いしん坊の心理だ!
という言い訳をかましながら、いつも気になる品を追加する。コースを食べたお客は単品の焼鳥を1串から注文できるので、ここからは名物紹介の延長戦に突入だ。
茶色と白のうずら卵は、串に刺せているのが不思議なほど半熟の状態。炭の香りを纏ったぷるっとしたうずらはいいアテで、リピート率も高い人気の串だ。パリっとした焼き目がたまらない皮はぜひとも塩で。炭の熱で余分な脂が落ち、皮本来の旨みを感じられる。
鶏の首周りの肉「せせり」のおいしさは『あやむ屋』で教わった。どの部位とも異なるブリブリとした弾力と溢れる肉汁がたまらない。こちらも塩で味わうのがおすすめだが、他にも「スパイス」と「おろしポンズ」もあり、今回はおろしでさっぱりと。
手羽の唐揚げも永沼さんのレシピらしく、独特の手法だ。特製のタレに漬けたあと、しばらく温かい炭床の上の方に吊るして表面を乾燥させている。この時間で余分な水分を飛ばし味を閉じ込めたあとキャノーラ油でカラリと揚げる。香ばしい皮目と艶やかな骨周りの身の旨さ。これまたハマりそうな魅惑のひと品。
締めには、炭で香ばしく焼いた「焼きおにぎり」もおすすめなのだが、この日は満腹ストップ! ビールとワインを1杯ずつ飲んで、新鮮な鶏の焼鳥をコースと単品で思う存分満喫してお会計は8000円弱だった。
技と味は継承されていく
飲食店の移り変わりが激しい街・福島で暖簾を掲げて今年で27年目。開店当時まだ1歳だった永沼さんの長男の大和さんが、今、焼き台の前に立っている。
学生時代から『あやむ屋』を手伝い、大学卒業後は、日本で初めてミシュランを獲得した焼鳥店・東京の『バードランド』に修業に出た。東西の有名焼鳥店の偉大な焼き手2人を師匠に持つ大和さんのこれからが楽しみでならない。
まさに今、父から子へ、味が継がれている最中。息子の成長を優しく見守る永沼さんの姿にこちらまでほっこりとして店を後にする。
data
- 店名
- あやむ屋
- 住所
- 大阪府大阪市福島区福島5-17-39 楠ビル
- 電話番号
- 06-6455-7270
- 営業時間
- 17:30〜21:30(LO)
- 定休日
- 日曜、祝日、他不定休
- 交通
- 福島駅・新福島駅から各徒歩5分
- 席数
- カウンター13席、テーブル4席
- メニュー
- ※お通し440円。せせり(塩かスパイス)550円、ムネ(山わさびかポン酢)400円、スープ250円。グラスワイン800円〜。
- https://www.instagram.com/ayamuya_/
writer

三好 彩子
Miyoshi Ayako
愛媛県生まれ。関西の飲食店の皆様に育てられ、丸々成長した食いしん坊フードライター&編集者。特技はレストランの厨房に潜入取材をすることで、調理師免許も取得。イベント司会や企業のプロモーションも担う。共著書に『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく神戸』(株式会社KADOKAWA)がある。
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