京都『西洋茶屋 山本』の、和食材が巧みに融合するデザートコース

七味唐辛子が香るアーモンドのキャラメリゼにはアルザスのスパークリングワイン、ヨモギのプリンには玄米茶とハッサクの蒸留水を合わせたモクテルを。ソムリエ資格を持つオーナーパティシエ・山本智弘さんがのびのびと編むデザートコースは、初めて出合うおいしさの連続。渾身の全5品を4杯のペアリングドリンクと共にいただいて8400円は、高級だけれど惜しくはない。

京都を味わうデザートコース専門店

JR梅小路京都西駅東口から歩いて3分ほど。ツタに覆われたミステリアスな外観が目を引く『西洋茶屋 山本』は、コアなスイーツファンの間ではちょっと名の知れた存在だ。

開業は2018年で、カウンター5席のみの小人数制。レコード盤からジャズが流れるほの暗い空間は、バーのような雰囲気。デザートコース専門店が今ほどメジャーじゃなかった開店当初からワインペアリングを提案。さらに「京都で出合った美味を和洋問わずに生かしたい」というオーナーシェフ・山本智弘さんの想いの下に、思いもよらない食材とスイーツとの素敵な出合いを教えてくれる。

『西洋茶屋 山本』外観
グリーンのタイルにツタが多い繁る印象的な外観。左手にかかる藍色の暖簾の先が入口。
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『西洋茶屋 山本』店内とシェフの山本智弘さん
オーナーシェフの山本智弘さんは1987年兵庫生まれ。神戸のパティスリー『ラヴニュー』で2年修業後、京都のフランス料理店『モトイ』でシェフパティシエを務め、2018年に同店をオープン。
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プロローグは‶甘くない″小菓子

「デザートは、料理の後に頂くのが通常のスタイル。ですから、当店では最初に塩気のある小菓子をお出ししています」と、山本さん。今回注文したのは、最も人気が高い全5品のMenuB4200円。スイーツを楽しむための序章だというコース一品目のアミューズから、思いもよらない変化球が飛んでくる。

三日月形の漆器とガラスプレートに盛り込まれたその小菓子は3種類。ほんのり温かい塩味のパウンドケーキ「ケーク・サレ」の生地に混ぜ込まれているのは、奈良漬けとすぐきだ。
京都で約370年続く『七味屋本舗』の華やかな辛みが鼻に抜ける「七味のアーモンド・キャラメリゼ」は、ビールや赤ワインにも合いそうなピリ辛感。残るひとつ「フラン」は、いわゆるプリンで、和歌山『湯浅醤油』の白醤油を使用。甘じょっぱい味が、みたらし団子のタレを彷彿とさせる。

意外性がありながらハマるおいしさに、つい顔がにやける。

『西洋茶屋 山本』のアミューズ
一品目の「塩味の小菓子」は常に3種。「ケーク・サレ」に使用する漬物は基本的に京都の老舗『京つけもの西利』から。季節によって壬生菜漬けなどに変わる。
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幸せ過ぎる、焼きたてタルト

2品目に洒落た名物チョコ「トリュフのトリュフ」を堪能したら、3品目はアヴァンデセール「ヨモギのプリン」が登場。続いて二者択一のグランデセールという流れ。この日は「和歌山産ブラッドオレンジのチョコレートタルト」を選択。すると、目の前のオーブンから取り出したばかりの熱々で供された。
「焼きたての幸せをぜひ」と山本さん。その特別な味わいは言わずもがな。贅沢な演出にキュンとする。

『西洋茶屋 山本』トリュフのトリュフ
高級食材トリュフが香るひと口サイズのホワイトチョコトリュフ「トリュフのトリュフ」。時季によって京都産のバラを使った「バラのトリュフ」に替わる。
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『西洋茶屋 山本』グランデセール
グランデセール「和歌山産ブラッドオレンジのチョコレートタルト」は柑橘の甘みとチョコのほろ苦さが、大人びたバランス。
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ノンアルも選べるドリンクペアリング

細部まで手の込んだスイーツもさることながら、山本さんが1品ごとに選定するワインやモクテル(ノンアルコールカクテル)のペアリングも素敵だ。

やるからには本格的にと、ソムリエ資格も習得している山本さん。ワインは産地を問わないフリースタイル。さらに「お酒が飲めない方にもペアリングの楽しさを知っていただきたい」と蒸留器を購入して大活用。ショウガや大葉、ハッサクなどのフレーバーを利かせた自家製蒸留水を使ったこだわりのモクテルは、間違いなくここだけでしか飲めない一杯。希望すればワインとモクテルを織り交ぜたミックスペアリングにも応じてくれるという。

『西洋茶屋 山本』のワインペアリング
3品目の「ヨモギのプリン」に合わせてくれたのは、軽快な酸味のフランス・ロワール産の白ワイン。そのほか、この日は塩味の小菓子にはフランス・アルザス産の辛口スパークリング、オレンジタルトには山梨産のチャーミングな果実味の赤ワインなどという組合せ。ワインペアリングはコースごとに用意されていて、4杯4200円。
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『西洋茶屋 山本』のモクテルペアリング
京都らしさを意識して日本茶ベースで仕上げる色彩豊かなモクテルペアリングは4種4200円(写真は5種5300円)。玉露には大葉、ほうじ茶にはショウガ、炒り番茶にはカカオという具合に自家製蒸留水を巧みにブレンド。どれも甘さ控えめで飲みやすい。
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‶山﨑″香る燻製マカロンにて終幕

締め括りのお茶菓子にも、興奮せずにはいられない。当日朝に焼いたばかりのフィナンシェともちもちのカヌレ、実山椒の生キャラメルなど、これでもかと言わんばかりに7種類も登場するのだから。

しかもそのうち一品は、国産ウイスキー「山﨑」を利かせたマカロンを、目の前で瞬間燻製にするプレゼンテーション付き。山本さんの引き出しの多さと溢れ出るサービス精神に、もうときめきが止まらない。

『西洋茶屋 山本』のお茶菓子
全7種のお茶菓子は、ベーシックなフィナンシェ、カヌレ、瞬間燻製マカロンが定番。そのほか、七味のメレンゲ、肉桂(ニッキ)のサブレなどが付く。
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自称?世界一軽いショートケーキ?

MenuBの5品だけで充分な食べ応えだけれど、もしお腹に余力があったらコースに追加したいのが「ショートケーキ」。山本さんが「世界一の軽さを目指した自信作です!」と力説するそれは、口の中で完成を迎える仕掛け。夢のようなフワフワ感に癒される。

『西洋茶屋 山本』のショートケーキ
和三盆風味の生クリーム、イチゴシャーベット、細かく砕いたスポンジを組み合わせた「ショートケーキ」。仕上げにウイスキー「山﨑」を吹きかける演出も洒落ている。
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コース追加のみで楽しめるショートケーキは1200円。こちらをプラスしても、計9600円。これだけスイーツとドリンクに酔いしえられて1万円以内なら、本望だ。

writer

川島 美保

kawashima miho

両親曰く、「生まれた時から食いしん坊」。3歳の頃から庖丁を握り、8歳から菓子作りにハマる料理好き。趣味と実益を兼ねて食メインの編集兼ライターになり、気付けば20余年。酒は弱いが、味は好き。甘いものはいくらでも。食べたいものを好きなだけ食べられる健康的な身体造りを目指し、週2回の筋トレに励んでいる。

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