和菓子の枠を越えて。 京都『吉村和菓子店』が届けたいもの

2016年、京都の老舗『京菓子司 亀屋良長』から生まれた『吉村和菓子店』。健康への意識とおいしさの両立を目指し、従来の和菓子の枠にとらわれない商品を生み出している。その原点にあるのは、家族の病気をきっかけに見つめ直した“食”への思いだった。

食を見つめ直して生まれた和菓子

ブランド誕生のきっかけは、店主・吉村由依子さんの夫であり『亀屋良長』八代目当主でもある吉村良和さんの病気だった。治療や生活習慣の見直しを経験する中で、日々口にする食べ物について改めて考えるようになったという。

「身体にやさしいお菓子を作れないだろうか」。

そんな思いから始まったのが、こちらの菓子づくりだった。健康志向が高まり始めていた時代背景も後押しとなり、従来の和菓子の考え方にとらわれない挑戦がスタートした。

吉村和菓子店内観
『亀屋良長』に併設された店舗。京菓子の技術を礎に生まれた、新しい和菓子との出合いが待つ。
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ただ砂糖を減らすだけでは、おいしい菓子にはならない。こちらが目指したのは、健康とおいしさを両立させることだった。

ココナッツシュガーや甜菜糖などの素材を取り入れながらも、ベースにあるのは老舗が長年培ってきた餡づくりや菓子づくりの技術。和菓子だからこそできる表現を探り続けてきた。

由依子さんは、かつてパリでフランス料理を学んだ経験を持つ。異国の食文化に触れたことは、現在の菓子づくりにも大きな影響を与えているはずだ。

伝統を大切にしながらも、新しい素材や技法を柔軟に取り入れる姿勢。その感覚は、和菓子と洋菓子という垣根を越えた発想にもつながっている。 「和菓子だからこうあるべき」という固定観念ではなく「もっとおいしくできるのではないか」という好奇心から生まれるアイデア。その自由な視点は真似できないだろう。

吉村和菓子店内観
菓子を選ぶ時間もまた楽しみの一つ。素材や製法へのこだわりが感じられる商品ばかり。
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白餡とココナッツの出合い

同店を象徴する存在ともいえる「美甘玉(みかもだま)」。亀屋良長を代表する銘菓「烏羽玉(うばたま)」から着想を得ながらも「体に愛を向ける和菓子」という新たな発想から生まれた看板商品である。

白餡をベースに、一般的な砂糖ではなく低GIのココナッツシュガーや甜菜糖、ココナッツミルクを使用。やさしい甘さの餡を丸め、外側をココナッツシュガーの寒天で包み、けしの実を添えて仕上げる。

吉村和菓子店美甘玉
「美甘玉」(6個入)972円。
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小豆の煮汁から生まれた、驚きの食感を持つ和菓子が「焼き鳳瑞(やきほうずい)〈あづき茶〉」だ。
通常は捨てられることの多い小豆の煮汁を泡立て、メレンゲのような生地に仕立てるという。

これまでの和菓子の概念を覆すようなエアリーな口どけは、一度体験すると忘れられない。手土産として喜ばれるのはもちろん、自分だけの静かなひとときに楽しみたい、唯一無二の一品である。

吉村和菓子店焼き鳳瑞
「焼き鳳瑞〈あづき茶〉」(9枚入桐箱)1,523円。
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吉村和菓子店焼き鳳瑞
きな粉、有機発芽玄米+雑穀、抹茶、塩ポン菓子、いちごカカオ豆、いちご、小豆、柚子山椒というラインナップ。
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京菓子に新しい風を吹き込む

「体にやさしい」と「おいしい」を両立するための挑戦は、今も続いている。
現在は京都府立大学と共同し、自然界に存在する希少糖「D-アルロース」を活用した和菓子の研究を進めているという。カロリーがほとんどなく、食後の血糖値上昇を抑える働きが期待される一方で、一般的な健康志向の甘味料にありがちなクセが少なく、豆の風味を引き立てるという特長を持つ。

しかし、素材を変えれば済む話ではない。和菓子は砂糖が味や食感、色合いに大きく影響する繊細な世界だからこそ、新たな素材との相性を一つひとつ丁寧に見極める必要がある。

流行や話題性だけで飛びつくのではなく、自ら食べ続けて確かめながら取り入れる姿勢も同店らしいところ。健康意識の高まりとともに和菓子の在り方も変化するなか、新しい素材や価値観を柔軟に取り入れながら、次世代へ和菓子文化をつないでいく。
その尽きることのない探究心が、これからの歩みを支えている。

吉村和菓子店吉村由依子さん
パリでフランス料理を学んだ経験を持つ店主の吉村由依子さん。その地で磨かれた感性は、現在の和菓子づくりにも息づいている。
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