京都『御菓子司 亀屋則克』が変わらぬ味を守り、時代に応える京菓子
初代の独創性が礎となる店
『亀屋良則』で修業した初代は、暖簾分けを受けて舞鶴で店を構えた後、昭和初期に京都で独立した。代表銘菓「浜土産」は、別の用途で使われていた蛤の殻を見て「別の使い方ができないか」と考えたことから生まれたという。
その発想は、この菓子だけにとどまらない。よもぎを使う桜餅や、独自の製法で仕上げるわらび餅など、代々受け継がれてきた菓子には「ほかとは少し違うことを」という初代の気質が色濃く表れている。
変わらぬ味を守る、そのために
四代目の森田祥司さんが何より大切にしているのは、創業以来受け継いできた味を変えないことだ。
「子どもの頃、おばあちゃんに連れてきてもらった方が、大人になって食べた時『思っていた味と違う』と感じてしまうのはダメだと思うんです」。
そのため、昔から続く菓子は餡や寒天の配合を変えず、代々の製法を守り続けている。
一方で、時代の変化には柔軟に向き合う。近年の暑さを踏まえ、夏場は品質を保つためクール便での発送を勧めるほか、修業先で培った技術を生かした新しい菓子づくりにも力を注ぐ。
「変わらないところと、変えていくところ。その両方を考えながら続けていきたいですね」。
受け継いだ味を未来へつなぐために、守るべきものと見直すべきものを見極める。その積み重ねが、今日の『亀屋則克』を支えている。
会話が生まれる、昔ながらの座売り
同店では畳に座った売り手がお客を迎える「座売り」の形式を今も続けている。
「ショーケースなら『これとこれ』で終わります。でも、うちは『これはどんなお菓子ですか』と聞いてもらえる。包装を待つ間にも会話が生まれるんです」。
買い物の時間まで含めて楽しんでもらいたいという思いから、この販売方法を守り続けてきたのだという。
店内を埋め尽くす木型も現役の道具。季節ごとに木型を選び、四季や歳時記を菓子へ映し出す。昔の職人が彫った木型は今なお美しく、一度洗えばきれいに型が抜けるというから驚きだ。
驚きを重ねる夏の銘菓「浜土産」
蛤の殻を開くと、琥珀色の寒天。その中央には浜納豆が一粒。
見た目の意外性だけでなく、口に運べば寒天の甘みと浜納豆の塩味が互いを引き立て合い、この菓子ならではの味わいを生み出している。
蛤の殻は一つずつ磨き、色合いにも気を配る。中へ浜納豆を収める工程は企業秘密。炊き上がるまで仕上がりは分からず、受け継いだ技術が試される。
昔ながらの檜葉を添えるのも変わらない。防腐の役目を果たすだけでなく、夏らしい景色まで一緒に届けてくれる。初代の発想は今なお色褪せていない。
焼き印が彩る季節の一品
夏の人気商品として「浜土産」と並び、多くの客が目当てにするのが「葛焼き」。
吉野葛とあんを練り合わせて蒸した後、粉を付けて表面を焼く製法が一般的だが、同店では粉を付けた後、時候の焼き印を押して仕上げるため、やわらかくもっちりとした独特の食感が生まれる。
焼き印は七夕や祇園祭など季節ごとに替わり、お茶席で使われることも多いのだとか。
冷凍すると食感が損なわれるため地方発送は行っておらず、わざわざ訪れて購入する価値のある一品だ。
シンプルな素材で生み出す干菓子の妙
干菓子にも、この店ならではの個性がある。
グラニュー糖を無添加で挽いた粉糖と水だけで作る独自製法は初代から続くもの。最初は「パキッ」とした歯触りがあり、その後、体温でゆっくりほどけるように溶けていく食感は、一度味わうと印象に残る。
「京都には、それぞれの店を代表するお菓子があります。お客さんも『これを買うならこの店』と足を運んでくださる。うちも、そう思っていただける菓子づくりを大切にしています」。
変わらぬ味と技を礎に、その魅力をこれからの世代へ届けていくことも、同店が大切にする役割。季節の移ろいを小さな菓子に映していく積み重ねが『亀屋則克』らしさにつながっている。
京菓子とともにある風景
初代が考案した「浜土産」、独自の製法で仕上げる「葛焼き」、四季折々の意匠を映す干菓子、客との会話を楽しむ座売り。その一つひとつに、創業以来育まれてきた店の美意識が表れている。京都の四季や歳時記を映した菓子は、今日も変わらぬ佇まいの中で客を迎える。
data
- 店名
- 御菓子司 亀屋則克
- 住所
- 京都府京都市中京区堺町通三条上ル大阪材木町702
- 電話番号
- 075-221-3969
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 定休日
- 日曜・祝日、第3水曜
- 交通
- 阪急烏丸駅から徒歩10分
- メニュー
- 浜土産(1個)500円※9月中旬までの販売、葛焼き(1個)480円※9月末までの販売、季節のお干菓子(1箱)1,700円
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