京都のショコラティエが作るカレーと、パフェ。『SHiQ』が描く“食の風景”
西陣の住宅街にオープンした『SHiQ(シック)』。営むのは、ショコラトリー『織 SHIKI』のオーナーショコラティエ・奥野光さん。チョコレートの世界で数々の賞を受賞してきた奥野さんの次なる舞台はカフェだった。季節の果実を使ったパフェ、本格的なカレー、そしてこれから始まるパン作り。ジャンルは違っても、その根底には一つの思いが流れている。
看板のないショコラショップが、西陣の日常を変えた
西陣の住宅街を歩いていると、「ここがお店だろうか」と思う建物に出会う。控えめな外観に、大きな看板はない。それがチョコレート専門店『織 SHIKI』だ。奥野さんは、あえて看板を掲げない。店そのものが街並みの一部になり、建物の佇まいがブランドになるよう設計した。西陣には古くからの町家が残り、ゆっくりと時間が流れる。その景観を壊したくないという思いもあった。
「看板のないショコラショップ」。
そんな口コミが少しずつ広がり、今では京都だけでなく全国からファンが訪れる店になった。店を知る人が訪ねてきてくれる、その距離感が心地よいのだという。
店が建つ場所は、かつて実家があった場所でもある。祖父や父は、京都を代表する老舗喫茶店『六曜社』を営んできた。幼い頃からコーヒーや喫茶店が身近にあり、人が集う光景を見て育った。その記憶は、形を変えながらも今の店づくりへとつながっている。
ショコラティエという肩書の先へ
奥野さんは大阪の洋菓子店で経験を積み、チョコレートブランドの立ち上げにも携わった。独立後はショコラティエとして国内外のコンテストへ挑戦し、数々の賞を受賞。「仕事だけでは身につかない技術を、コンテストを通して学びたかった」という言葉どおり、奥野さんにとって受賞はゴールではなく、新しい技術や表現に出会うための通過点。大人になっても競い合える場所があることが、自分を成長させてくれると話す。
その探究心は、ショコラだけに留まらなかった。「食に関わることは基本ひと通りやりたい」。そう考えるようになった先に生まれたのが、『SHiQ』だった。
ショコラ作りの経験を生かした、本気のカレー
『SHiQ』は『織 SHIKI』から500mほど離れた場所にある。訪れてまず驚いたのは、カレーだ。ショコラティエのカフェは、パフェやケーキが主役だろうと思っていた。その予想はいい意味で裏切られる。
ビーフカレーには、牛骨だし、牛すじだし、赤ワイン煮込みの煮汁という3つの旨みを重ねる。その味を生み出すために、奥野さんは京都市内のカレー店で約2年間、朝の仕込みから学んだ。
夏限定のキーマには、鶏の首皮から取るだしを使い、仕上げには青実山椒をワインビネガーに漬けた特製のアクセントを添える。スパイスを重ねるだけではない、だしの文化を感じさせる一皿だった。
四季の旬を味わうパフェ
店名の『織 SHIKI』には、「四季」への思いが込められている。その考え方は『SHiQ』でも変わらない。初夏はレイニアチェリー。夏は和歌山・荒川の桃。秋になれば栗やりんご、かぼちゃ。定番メニューを増やすのではなく、その時季に最もおいしい素材を主役に据える。
次はパン作りへ。フレンチトーストのパンも自家製
SHiQは、まだ完成形ではないと言う。店内にはすでに製パン設備が入り、次はクロワッサンをはじめとするパンづくりを視野に入れている。チョコレートを学び、カレーを学び、季節の果実と向き合う。
そして次はパンへ。ジャンルが変わっても、ものづくりへの姿勢は変わらない。
祖父や父が育んできた喫茶文化、ショコラティエとして培った技術、そして新たな挑戦。そのすべてが重なり合って、SHiQという場所は少しずつ形になっていく。
「食に関わることは、できるだけ自分たちの手で」。奥野光さんが描く「食の風景」の発信をこれからも楽しみにしたい。
※記事内の写真やメニュー、価格等はすべて取材時の内容です。最新の情報とは異なる場合があります。
data
- 店名
- 織 SHIKI(シキ)
- 住所
- 京都府京都市上京区笹屋町1-529
- 電話番号
- 075-748-0949
- 営業時間
- 11:00~18:00
- 定休日
- 不定休 ※Instagramで要確認
- 交通
- 市バス今出川浄福寺停留所から徒歩4分
- 公式サイト
- https://shiki-kyoto.jp/
- 店名
- SHiQ(シック)
- 住所
- 京都府京都市上京区智恵光院通中立売下ル山里町237-7
- 営業時間
- 10:00~17:00(L.O.16:30)
- 定休日
- 不定休 ※Instagramで要確認
- 交通
- 市バス智恵光院中立売停留所から徒歩2分
writer
中野 弘子
Nakano Hiroko
京都コーディネーターⓇ&フリー編集者。京都の月刊情報誌「Leaf」編集長時代に「町家でごはん」を企画。京都の日常暮らしから全国の伝統文化、エンタメなどを多数取材。著書「よそさんが心地いい京都」(交通新聞社)、ペンネーム古瀬ヒロ著「京都謹製きもの和こもの」「京都いっぴん日用品」(淡交社)などがある。
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