元チャンプが魂込めて幻の地鶏を焼く、大阪・福島『炭火焼鳥 とり央』

焼鳥激戦区と言っても過言ではない福島。そんな中、2018年のオープン以来“大人のための上質系”として、大人気のこちら。店主は何と元日本チャンピオンだったボクサー。過酷な減量や練習を続けてきたストイックな生き方が、“焼鳥”をとことん旨くする!? 

元チャンプの華麗なる?転身

店主の安田幹男さんは、元日本バンタム級王者。カメラマンのリクエストに気軽に応えて見せてくれたファイティングポーズも決まってる。
写真中央の安田さんを囲んで、右は安田さんが焼き鳥の修業先で意気投合し、この店の料理長に迎えた相棒の岩田さん。「彼に料理を全部委ねて、僕は焼鳥に集中してます」と全幅の信頼を置く。左は、昭男くん。「昭男も元ボクサー。スーパーフライ級の世界ランカーやったんですよ。根性ありますよ」。
息の合った3人が元気に迎えてくれる焼鳥屋だ。

『とり央』の店内
店内は、木の温もりある落ち着いた雰囲気。
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安田さんは30歳でボクサーを引退。その後営業職などに就いたが、飲食の世界に興味を持ち、「日本一美味しい!」とほれ込んだあぐー豚で勝負しようと沖縄へ飛び修業。でも、「周囲から飲食未経験で一発目に豚しゃぶ専門店は難しいで」とアドバイス受け、老若男女が年中食べる焼鳥に転向した。
1年弱、焼鳥店で経験を積み、2018年に独立。5年後には向かいに、あぐー豚のしゃぶしゃぶ専門店『とり央別邸』もオープン。順風満帆のチャンプの華麗なる転身劇だ。

味・もてなし・コスパ3拍子そろい踏み

『とり央』の魅力は、熊野地鶏の旨さ、丁寧なサービス、そしてコスパの良さ。
熊野地鶏は、三重県認定ブランド鶏。1日限定100羽の出荷とあって幻とも言われる希少なものだ。100日以上かけて、抗生物質不使用の飼料で丁寧に飼育されている。「あちこち焼鳥を食べ歩いて、日本一美味しいと思ったのが熊野地鶏。地鶏の硬さがなく食べやすい。脂に甘みがありダイレクトに旨みを感じる。僕の表現したい焼鳥にはこの鶏だと思って」と元日本一のチャンピオンが“日本一”と見込んだ鶏だ。これを丸鶏で仕入れ、店で毎朝捌く。
「捌き方? YouTubeで覚えました。何回も何回も見て。もしかしたらプロの人が見たら、なんやこれって言われるかもしれないけど」と安田さんは豪快に笑う。

『とり央』の店主・安田さん
「仕込みが仕事の8割。準備が大事ですね。ボクシングと一緒。練習でできていないことは試合でできないですから」。何かを極めた人の言葉は含蓄がある。
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6600円コースで大満足

では、おまかせコースの全容をご紹介しよう。焼鳥7串、野菜1串の串8本に、季節の茶わん蒸し、もずく酢、季節の一品、締めの麺まで付いて6600円。

まず、焼鳥一本目はささみでご機嫌伺い。紀州備長炭でふっくらしっとりと焼き上げられていて、思わず笑顔になる。「塩加減いかがですか?」と安田さん。一本目で好みを伺って、以降は塩の強弱を客の好みに合わせて変えるという気配りもウレシイ。
続いて、暑い時期だからと、冷製の茶碗蒸し。だしがまろやかだ。この日はスイートコーンだったが、季節ごとに変えるのだそうで、9月にはポルチーニきのこの茶碗蒸しが供される予定だ。

『とり央』の茶碗蒸し
6600円(串8本、料理4品)のコースから。スイートコーンの冷製茶碗蒸し。甘いコーンがたっぷり。
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箸休めの鬼おろしや、沖縄で仕入れ先との繋がりが持てたという天然もずく酢など挟みつつ、串はプリプリのせせりや肉の旨みが溢れるネギマなど。
「消し炭のクッションを当てて、点でなく面で火を入れる感覚で焼いてます。まだまだこの炭のポテンシャルを僕は完全には出せてないと思うんですけどね」と謙虚なチャンプだが、実に丁寧な火入れで熊野地鶏のおいしさを堪能させてくれる。
しかも、「飲んでるお酒の種類や、味の濃いのがお好きそうなら皮を焼くし、あっさり好きなら抱き身を入れたりします」と、ゲストの様子を見ながらカスタマイズ。「8本の串に意味を持たせたい」と真面目なチャンプ。

『とり央』のせせり
ジューシーで旨みのあるせせり。串は一本ずつ焼きたてを信楽焼の置台へ。エッジの効いた焼き物は信楽焼の杉本 祐氏の作品。
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『とり央』のねぎま
ねぎま。熊野地鶏のおいしさが明確に伝わる一本。
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『とり央』のつくね
つくねは軟骨なしのソフトな食感。地鶏の破材と若鳥、京鴨ロースをミンチに。キンカン付きで。
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『とり央』のささみネギ塩ユッケ風
この日の季節の一品はささみネギ塩ユッケ風。低温調理して、しっとりとソフトな食感に。
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締めは、にゅうめん。極細素麺が濃厚な鶏の白湯(パイタン)スープを纏って、旨い。
追加の一品も色々あるが、コースの内容で十分に満足満腹。日本酒やビールなどいただいても1万円に満たないお会計で、コスパ最高の評価にも納得だ。
何よりチャンプの気配りが行き届いていて何とも居心地良し。リピート率が高いのも納得の焼鳥屋。覚えておいてソンなし。

『とり央』のにゅうめん
自家製鶏スープが濃厚なにゅうめんで締め。もっと料理を堪能したい方は、鳥刺し、地鶏のタタキが付いて、お好きな締めも選べる極みコース8800円もおすすめ。
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『とり央』の外観
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飲んで食べてもだいたい10,000円!

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writer

団田 芳子

danda yoshiko

食・旅・大阪を愛するフリーのフードライター。その地の歴史や物語を感じる食べ物・気質・酒が好物。料理人さんに“姐さん”と呼ばれると、己の年齢を感じつつもちょっとウレシイ。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。

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