魚介だし100%で仕立てる和風中華そば。兵庫・青木『鈴鳴食堂 三番館』
魚介節の旨みを重ねた、力強く澄んだ一杯
提供されたとたん、凛とした美しいたたずまいに目を奪われる。
温められたどんぶりには、整然と麺がおさまり、黄金色のスープがキラキラと輝く。 こうした麺の流れを、プロやラーメン好きの間では「麺線(めんせん)」と呼ぶのだという。
スープは魚介だし100%。
カツオ、ウルメ、サバ、メジカ(ソウダガツオ)を用い、あえて雑節を多めに煮出すことで、和食のだしよりも力強い味わいに。そこに「dashi塩そば」シリーズでは、塩や貝だしで作る塩ダレ(カエシ)を加えて奥深い味わいに仕上げている。
麺は、京都の名門製麺所「麺屋棣鄂(ていがく)」によるもの。エッジのある細麺を使っており、全粒粉や焙煎ふすまを配合した国産小麦100%の麺は、すすると香りが鼻に抜け、芳しい。
「動物系素材を一切使わないだしに合わせるため、噛んだときに全粒粉の香りがしっかり立ちあがり、ツルッとした繊細な喉ごしを重視しました。また、細い麺の方がスープを抱き込みやすいため、すすったときに口の中のスープと麺のバランスが良いんです」と店主の津葉井克則さんは話す。
無駄を削ぎ、魚介の旨みを際立たせる
東京で長年、飲食業やラーメン業界に携わり、経験を積んだ店主・津葉井克則さん。それまで鶏ガラ系のラーメンを作っていたが、感銘を受けたのが、鶏ガラや豚骨といった動物系素材を使わず、魚介だしのみで作る「和風中華そば」だった。
「うどんや蕎麦にしかイメージがなかった魚介の節だけで、これほど味わい深いラーメンができるのか」と大きな衝撃を受けたという。美しい麺線にシンプルな具材、手頃な価格。その無駄のない師匠のスタイルに魅了され、その精神を受け継いだ。
「ラーメンは高級品ではありません。手間をかけて、不要なものを削ぎ落としたい」と話す津葉井さん。麺の上にのせるのは、基本的には極太メンマとチャーシュー、細く美しく切られたネギのみ。極限まで無駄を削ぎ落としたからこそ生まれる、凛とした美しさ。そこには引き算の美学が息づいている。
そんな一杯に添えたいのが、「麺屋棣鄂(ていがく)」特製の大きな皮で包んだワンタンだ。
豚ミンチに生姜やニンニク、醤油などをほのかに効かせたシンプルな味付けが特徴で、皮の滑らかな舌触りと、噛むほどに溢れる肉の旨みが、クリアな塩そばのスープと調和する。
実山椒香る、季節限定「冷やしdashiそば」
この季節のおすすめは、昨年の登場から瞬く間に人気を集めた「山椒と鴨ロースの冷やしdashiそば」。キリリと冷えた塩と白醤油のスープに、高知県仁淀川産の実山椒が鮮烈な香りを添える。しっとり仕上げた鴨ロースと鶏モモ肉の2種類のチャーシューが贅沢感に拍車をかける。
「当店の冷たいスープには、山椒が絶対に合うという確信がありました。上品なスープの邪魔をしないよう鴨肉を合わせ、さらに仕込み段階でスタッフと試作を重ねて『これも欲しい!』と声が上がった鶏肉も添えることにしました。昨年初めて出したら想像以上に大好評で、『今年もまだやっていますか?』と待ってくださるお客さんの声が多くて、もう引けなくなってしまって(笑)」と、津葉井さんは話す。
家族連れにもやさしい一軒
「当店は、特に子どもイスや紙エプロンといった用意はありませんし、カウンターだけのお店ですが、それでも良ければお子さま連れの方にも利用いただいています。せっかくだったら、お子さまにも、パパやママにもおいしくラーメンを食べて欲しいので、大人のラーメンを取り分けるのではなく、ほんの少し薄味にチューニングしたお子さま用ラーメンをお出ししています」と津葉井さん。
「お子様ラーメン」は、「dashi中華そば」をベースにした一杯。麺の量は子どもに合わせて増減可能で、400円と手頃な価格も嬉しい。
「鈴が鳴るような笑い声が絶えない、明るい店にしたい」という思いから名付けられた『鈴鳴食堂 三番館』。ほっと心がほどけるような、洗練の一杯を求めて出かけてみてはいかがだろうか。
data
- 店名
- 鈴鳴食堂 三番館
- 住所
- 兵庫県神戸市東灘区北青木3-20-23
- 営業時間
- 11:00~14:00、18:00~21:00 ※日曜は11:00~15:00
- 定休日
- 月曜
- 交通
- 阪神青木駅から徒歩5分
- 席数
- カウンター8席
- メニュー
- dashiわんたん中華そば1200円、dashi味玉中華そば1080円、dashi中華そば950円、dashi味玉塩そば1080円、dashi塩そば950円、チャーシューわんたん麺1500円。麺大盛り150円。チャーシュー丼420円、たまごかけご飯280円、ご飯200円。

writer

佐藤 良子
satoryoko
料理取材に徹して20年の食ライター。歴史が好きなため、料理史の観点から見るレストラン取材がライフワーク。日々賑やかな小学生2児の母。
Instagram@ryocosugar
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