大阪『ポアール』のプチシュー。みんな笑顔になる、本格洋菓子店・不朽の名作。

一口サイズのキュートなシュークリーム。フワフワのシュー生地の中は、ぎっしりとカスタードクリームが詰まっていて、プチサイズのわりに持ち重(おも)りするほどで満足感あり。だけど甘さは控えめで、バニラの香りが上品で、ついもうひとつ、もう一個と手が伸びる。半世紀以上に渡り大阪人に愛されてきた大阪『ポアール』の不朽の名作・プチシューのこと。

帝塚山マダム御用達の本格洋菓子店

大阪・帝塚山『ポアール』看板
10

大阪屈指のお屋敷街・帝塚山。賑やかな大阪のイメージとは異なる、気品漂う閑静な住宅地に、1969年に誕生した洋菓子専門店『ポアール』。今では『帝塚山本店』、『あべのハルカス店』などの4店舗のほか、北新地には焼きたてフィナンシェ専門店『ポアール・ル・ボン・ブール』、新大阪の駅構内『PLUSTA Gift Shin-Osaka』にも焼き菓子を置いていて、大阪ギフトとして大活躍。
大阪の本格洋菓子の歴史をけん引してきたこの店の創業当時からのロングセラー・プチシュー。それは老若男女誰をも笑顔にするキュートなお菓子だ。

大阪・帝塚山『ポアール』プチシュー
10

帝塚山本店は、いつ訪れてもたくさんの人でにぎわっている。
1階はまるで宝石箱。洒落た焼き菓子、大人のハートをくすぐるショコラ、アイスクリームなどなど、常に目新しいお菓子で溢れていてキラキラしている。生ケーキのショーケースもどれもこれも食べたくなるスイーツばかり。それでも、やっぱり外せないのはプチシュー。小さな姿と、しっとり柔らかな生地、生地とクリームが一緒になって口溶けると、ああこれこれと懐かしさにニンマリする人も多い。ところが…。

少しずつ変わっているプチシュー

創業当初からあるプチシューは、ずっと変わらない味として親しまれているけれど、実は、少しずつ進化しているのだそう。

「バニラ・ビーンズの産地や種類を見直し、砂糖の量を減らしたり、パフを切らずに下から注入するように変えたり」、色々進化しているのだ。とはいえ、ジャンボサイズや、ガリッと堅いシュー生地が流行っても、そこはどこ吹く風。ガラリと変えることはなくただ同じベクトルで、「常にベターをめざしていくと、それがベスト」と、進化させ続けているらしい。

大阪・帝塚山『ポアール』プチシュー、箱と手提袋
1つ1つ専用のアルミケースに載ってお行儀良く並んだプチシュー(8個入り)994円。賞味期限は当日中。ネットから「店舗受取予約」ができる。
カスタードクリームの隠し味はラム酒。これは「バカルディ8」という8年熟成させたものを使用。
10

素材の良さには定評のある『ポアール』だけど、いろいろ物価高の昨今。バニラビーンズもコロナ前に驚くほど高騰し、バニラ風味の香料にこっそり代えているパティスリーも多いと聞くが。「値段が上がりすぎて困ったなと思っていたら、たまたまマダガスカル産が手に入るという人と知り合いまして」と、ビッグ・スマイルを見せるのは2代目・辻󠄀井良樹さん。

大阪・帝塚山『ポアール』2代目・辻󠄀井良樹さん
人の縁を大事にする人だから、出会いをきっかけに生まれたスイーツも数多い。「コブクロ」黒田俊介さんや、作詞家・松本隆さん、漫画家・荒木飛呂彦さんとのコラボなどなど、辻󠄀井さんのお顔の広さは驚くばかり。そんな辻󠄀井さんだから、良縁が寄ってくるのだろうか。
10
大阪・帝塚山『ポアール』外観
10

食べた後に、食べたことを忘れるほど軽やかにしたい―という願いを叶えられる最上のバニラビーンズが手に入っているという。
「お菓子の甘さをどこまで抑えられるかは、ひとつの課題。良質なバニラビーンズなら、自然な甘い香りの分、甘みは抑えられるんです」

季節限定などの種類も多彩

大阪・帝塚山『ポアール』
「プティシュ・アルコリック(期間限定)」2160円。
10

プチシューには、ショコラをコーディングした「プチエクレア」という仲間がいて、ハーフ&ハーフの「プティ・タ・プティ」も定番だ。さらに完熟イチゴとイチゴチョコを載せたイチゴプチシューとのハーフ&ハーフ「プティ・タ・プティ フレーズ(『あべのハルカス店』限定)」や、呑んだくれのプチシューと題した6つのお酒のガナッシュが楽しめる「プティシュ・アルコリック(期間限定)」なんて仲間も増えた。
「プチシューが酔っぱらったら、って考案したものです。ほかにも季節限定で、きなこクリームとか、夏はミックスジューシュー(ジュースじゃなく、シュークリームのシュー)とか、ほうじ茶、抹茶とかも」
これおいしんちゃうと急に作ってみたりするのだそう。面白がりは、さすが大阪人。「シュークリームは千円札で買えるくらいがいいでしょ!」と、プチシューは1箱994円とコスパも最高。

イートインではもうひとつの名物をぜひ

プチシューはせっかく本店に来たなら、2階のカフェで生ケーキと一緒に味わいたいもの。ケーキをどれにしようか迷ったら、おすすめは、モンブラン。
よくあるモンブランとは佇まいから違う。これは…「欧州最高峰の山の姿をかたどっています」。

大阪・帝塚山『ポアール』モンブラン
モンブラン832円(イートインの場合は847円)。
10

2枚のマロンペーストは、ホワイトチョコを隠し味にした滑らかな舌触り。中には、カスタードクリームと生クリーム、底にロールケーキが潜んでいる。

「これは、山の形も、レシピも創業当時から変わりません。完璧で変えようがないんです」と辻󠄀井さん。
進化の幅があれば進化させるけれど、このままが最高においしいものは、変えない。なるほど。ショートケーキ、チョコ、そしてモンブランは、常にトップ3を堅持しているとか。不動の名物を味わってみて。

大阪・帝塚山『ポアール』2階のイートイン席
店内にはポアール(フランス語で洋梨)やモンブラン、プチシューをモチーフにしたあしらいがところどころに。奥に見えるのは、2階のイートインスペース(半個室)とモンブラン型のランプ。
10
大阪・帝塚山『ポアール』壁紙
10

編集部選☆間違いない関西手土産

詳しくはこちら

writer

団田 芳子

danda yoshiko

食・旅・大阪を愛するフリーのフードライター。その地の歴史や物語を感じる食べ物・気質・酒が好物。料理人さんに“姐さん”と呼ばれると、己の年齢を感じつつもちょっとウレシイ。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。