大阪『菊壽堂義信』の「高麗餅」。老舗菓子舗の名物は握り寿司と梅干し?!
創業から180年あまり。大阪で指折りの菓子補
大阪・北浜のビジネス街の真ん中。見過ごしてしまいそうな小さな木造2階建てがひっそりとたたずむ。のれんもない、看板もない(実は、表の窓の内側にある、表札程度の小さな木札に店名が書いてあるのだが)。営業しているのかな? 場所はここで合ってるはずだけど…。店の前でうろうろしている人のそんな心の内が見えるよう。
ここは、大阪で指折りの歴史ある菓子舗『菊壽堂義信(きくじゅどうよしのぶ)』。
評判を聞いて、大阪のみならず東京、九州や北海道からも、ゴロゴロとキャリーケースを引いてくる人が大勢いる。
お目当ては、取り寄せできない名品・高麗餅。
『菊壽堂義信』の創業は天保年間(1830~44年)。
「船場で創業して、戦後、焼け残っていたこちらに移ってきたと聞いてます」とは、18代目の久保哲也さん。2018年に家業を継ぐことを決意して、今は17代目の父・昌也さんと共に菓子作りに勤しんでいる。
これだけの老舗なのだから、自分の代で潰してはならんとの強い想いがあったのではと思いきや、「継いでくれなんて両親には言われたことがない。3つ年上の兄は銀行マンですし、私もデパート勤めで宝石を担当していたんですよ」と話すから驚いた。
「結婚を機に、既に出来ているものを売るのではなく、最初から最後まで自分で作ったものを売るのもいいなと。自己完結できる仕事って今や少ないでしょ」と。
いやしかし、継いでくださって有難い。おかげで我々はこの先も高麗餅を味わえるのだから。
「1分で完成、お待たせしません」
さて、その高麗餅。哲也さんの曽祖父に当たる15代目が考案したのだそう。
「当時は、喫茶店やカフェなど多くない時代。お待たせせずに、出来立てをさっと出せるお菓子をと考えたようです」
確かに、おもたせにする菓子を買いに来て、包んでもらう間にちょっと一服と、高麗餅を所望すると、ほんの1分でお茶と共に供される。
「高麗餅」の作り方
特別に、作っているところを見せてもらった。
1つ分の餡22~23gを右手に取り、小さく切った求肥を餡に載せて、ちょいと親指で押し込んで、キュッと2度ほど握るだけ。これを5回繰り返せば1セットが出来上がりだ。
直伝!「高麗餅」の食べ方
店内でいただくと、5個がきれいに積み重ねられて登場する。
おいしく食べる順番ってあるのだろうか。
「まず、白あん、次に粒あん、ゴマ、こしあん、最後に抹茶。お好きに食べていただいていいんですけど、尋ねられたらこのようにお伝えしています」とのこと。
実践してみると、なるほど白あんの優しさから入って、ゴマで味変して、一番強い味わいの抹茶で〆ると、より違いがよく分かる。
おいしいあんこの秘密
それにしても、これほどまでに滋味深く品よく、おいしいあんこは、どのように生み出されるのだろうか。
「『ここのあんこは格別においしいね』と、よく言っていただくんですけど。子どものころから食べてる私にはこれが普通。ほんとに普通に作ってるだけなんです。材料だけはええもんを使ってます」と哲也さん。
粒あんは「丹波大納言小豆」を用い、1度に1升以上は炊かないと決めているとか。鍋底の小豆が潰れてしまわないようにとの配慮だ。たくさん注文が入ると、2度3度に分けて炊く。
白あんは希少な「備中白小豆」。
「時間もそれほど掛からないんですよ。粒あんを炊くのも3時間掛からない。僕は父に、父は祖父に教わった通りにやってるだけ。うちのお菓子はめっちゃ細かい細工とかないんで、大体仕事も覚えられましたし」と、哲也さんはこともなげに言う。
あくまでも、餡がメインで商品数も絞っている。だからこそ、昔ながらのやり方で続けていられる。今や、“昔ながら”が貴重なのだ。
隠れた名物は楽しいだまし菓子
大福もちや葛ふくさなど、ほかにもおススメしたいこの店のお菓子は色々あるが、ここではもうひとつだけご紹介しておこう。梅干しだ。
本物の稲縄で括られた小さな木樽の中には、塩を吹いた、いかにも酸っぱそうな梅干しが詰まっている。実は赤いのは紅羊羹で、中は薄い求肥で包んだ白あんだ。塩に見えるのは上白糖で、紫蘇も塩出しして蜜に漬けた自家製。
これも15代目が考案した、しゃれっ気たっぷりの半生菓子だ。本名は甘香梅(かんこうばい)というのだが、今はもう梅干しで通っている。おもたせにすれば、先様に笑顔を届けられるお菓子だ。
「高麗餅」が買える場所は
ところで、なぜ暖簾も看板も出さないのだろうか。
「暖簾ね、昔々はあったらしいんですけど」と哲也さん。
「別に一見さんお断りとかいうこともないんです。とにかく作れる量が限られてるから、求めてきてくださった人にお渡しでけへんことになっても困る。ほなもっと作ったらええけど、量を作るとなるとやり方を変えなあかん。それも困る」というわけで、敢えてのこのスタイルらしい。
もったいぶっているわけではない。ただこのやり方しか知らんので――というのが、実直かつ万事控えめなこの店らしい。
一度は、北浜の店を覗いてみてほしいが、実は、大阪の百貨店でも、高麗餅と梅干しは限定曜日のみ置いているので、まずは一度味わってみてはいかがだろう。
【販売店(数量曜日限定)】
・『大阪高島屋』…火、土曜(高麗餅・3粒入り梅干し)
・『阪急梅田本店』…水曜(高麗餅・3粒入り梅干し)
・『阪神梅田本店』…月、土曜(高麗餅・大福)
・『あべのハルカス近鉄本店』…水曜(高麗餅・大福)
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- 店名
- 菊壽堂義信
- 住所
- 大阪府大阪市中央区高麗橋2-3-1
- 電話番号
- 06-6231-3814
- 営業時間
- 持ち帰り/10:00~16:30、イートイン/11:00~16:00LO(土曜午前中は数日前の予約受け取りのみ)
- 定休日
- 土・日曜、祝日
- 交通
- 地下鉄淀屋橋駅から徒歩約8分
- 席数
- テーブル12席
- メニュー
- 高麗餅5種1セット800円(イートイン、持ち帰りとも)、梅干し木樽入り10ケ2700円。

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