大阪『長池昆布』の白とろろ。違いが分かる人に贈りたい、高貴な味わい
昆布は採れなくとも大阪名物
昆布は、北海道のほかは、東北のほんの一部でしか採れないのに、古くから大阪名物とされてきた。そこには深い意味と歴史がある。江戸時代、北前船ではるばる運ばれてきた昆布が、大阪で、高知や鹿児島から届いたかつお節と出合い、世界遺産である和食の根幹・だしが生まれた。さらに、堺に連綿と築かれてきた刃物の技術があったから、昆布をとろろやおぼろに加工できた。
そうして、だしを取る昆布と昆布加工品は大阪の名産品として全国に知られるようになったわけだ。
そんな歴史を今に伝える老舗『長池昆布』の白とろろ。ふわりと蕩ける旨みは、食通の先様へのここぞというときの贈り物として、知っておきたい銘品だ。
希少な真昆布を職人技で
初めて、白とろろを口にした人は、必ず目を見張るはず。ふわふわと粉雪のような食感。口の中で雪が解けるように蕩けていくと、昆布の香りに包まれる。あとには旨みの余韻がずっと続く。うどんやそばにふわっとのせると最高だ。冷ややっこや漬物にもいい。
「これは真昆布でしか作れません」と、5代目・ 天野元次郎さん。「利尻昆布は繊維が硬すぎるし、羅臼だと溶けてしまうんです」。
北海道は道南・函館近海でしか採れない天然物の真昆布は、近年、大変に希少なもの。白とろろは、そんな真昆布でなければ作れないらしい。
作り方は、まず真昆布を酢に浸ける。柔らかくなったところで専用の包丁で糸状に削っていく。表面の黒い部分を削ったのが黒とろろとなる。表皮が剥けた内側の白い部分を削ったのが白とろろだ。ちなみに、板状に削るとおぼろ昆布になる。そしてこれ以上削れないという最後に残った薄い昆布が白板昆布。鯖寿司とかバッテラにのっているあれだ。
黒、白とろろ、おぼろとそれぞれ専属の職人がいる。いや、「居た」というべきか。
「職人さんが激減してね。うちも手掻きだけでは量が追い付かないので、一部機械で削ります」と天野さん。
筆者も20年ほど前に、堺でとろろやおぼろを作る職人さんを取材したことがあるが、高齢の職人さんたちは手足を使い続けたことで指が変形しておられ、それはそれは大変な仕事だと実感した。
「とろろ昆布は道具を作ること、刃を研ぐこと自体から技術が必要で、刃研ぎ10年なんて言ったものです」と天野さんが店内に展示している古い機械を見せてくれた。昔はどこの昆布屋にもあったという包丁の目打ち機だ。「包丁の刃の目を立てる機械。とろろ昆布を引く包丁は3か月で15cmの刃がすっかりなくなるんですよ」。
江戸末期創業。令和も大忙し。
長池昆布は、江戸末期の慶応元年(1864年)、大阪・曽根崎村長池筋(現在の北区曽根崎)にて創業。現在は、淀屋橋からほど近い大阪高等裁判所北西にひっそりと店を構えている。ひっそりとは言ったものの、実は店内はお中元時期などはてんやわんや。阪急百貨店や全国のファンへの配送準備に追われている。
6代目となる元貴さんが、10年の商社勤めを経て実家に戻り、経験を生かして、プレミアムな食品を扱うスーパーマーケットとの取引や、無添加醤油の醸造元などとのコラボ商品を続々開発し、新たな挑戦を様々始めているらしい。それがまた人気を呼んで、かなり忙しいとのこと。
「私が家業を継ぐ頃に『昆布屋なんてあと10年保てへんで』と言われたもんやけど。案外、みんな昆布食べてるんですよね」と天野さん。はい、昆布の旨さは日本人のDNAに訴えてくるものがありますから!
もうひとつの逸品「美味山椒」
数ある昆布製品の中から、もうひとつ「美味山椒」もご紹介したい。昆布と実山椒を醤油と砂糖で炊いた佃煮だが、“美味”と自ら名乗る自信の理由が幾つもあるという。
「山椒は34種類あるんです。うちが使うのは「朝倉山椒」。仕入れ値でいうと「ブドウ山椒」の軽く3倍はしますが、一番香りがいいんです。モナコの王妃さんが『これ好き』っておっしゃったとかでヨーロッパで人気が広まって、以来高騰し続けてるんですわ」と天野さん。
さらに技術にも自信あり。「炊くと硬くなる品種なんですが、うちの弟は50年炊いてますからね」と、軽やかな食感に仕上がっている。
加えて味付け。「醤油が違うんです。継ぎ足し継ぎ足しの、老舗のウナギ屋のタレのようなものでね」。昆布を炊いて醤油から上げる。その醤油に新しい醤油を足してまた炊く。これを長年繰り返して、醤油自体に昆布だしがしっかり出ているのだそう。
甘辛味も程よく上品で、ピリリとしたしびれ感も心地よい。違いの分かる方に贈りたい。
「白とろろ」が買える場所
【販売店】
・『長池昆布 本店』
・『阪急梅田本店』…B2階「日本の味」コーナー(一部商品を取り扱い)
その他、催事情報は公式サイトで。
data
- 店名
- 長池昆布 本店
- 住所
- 大阪府大阪市北区西天満4-7-6
- 電話番号
- 06-6364-6368
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 定休日
- 日祝日
- 交通
- 各線淀屋橋駅から徒歩10分
- メニュー
- 白とろろ袋入り28g648円~、とろろ・おぼろ詰合せ3種箱入り2160円。
- 公式サイト
- https://nagaikekonbu.jp/
- https://www.instagram.com/nagaikekonbu/

recommend






