1803年創業の京菓子司『亀屋良長』の、個性派栗菓子3様

江戸時代から8代続く店を繋いでいくための挑戦を厭わない、京都・四条堀川の京菓子司『亀屋良長』。家伝銘菓を大胆にアレンジしたラム酒が香る「まろん」やデコラティブな羊羹「山の幸」など、個性異なるここならではの栗菓子3種をご案内。

和洋の技法を編んだ「まろん」

最初にご紹介するのは、コロンと丸い形の「まろん」。こちらはフランスの星付きレストランでシェフパティシエを務めていた藤田怜美さんの瑞々しい感性を生かした和洋菓子を作るために2010年に誕生したブランド”Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA”の代表作。

1803年の創業時から受け継がれている銘菓「烏羽玉」の完成された美しさに感銘を受けた藤田さんが、黒糖味の餡玉を和栗ペーストに代えたら面白いのではと閃いて生まれた逸品だ。

表面を寒天で艶やかに覆う伝統的な技法や形状は「烏羽玉」そのままに、滑らかな和栗ペーストにラム酒で香りを、生クリームでコクを添えた洋テイスト漂う栗きんとんは、たちまち話題に。販売から15年たった今も、定番商品として衰えない人気を誇っている。

『亀屋良長』の「まろん」
「まろん」は1箱9個入り1458円。トップに飾られたアーモンドの香ばしさが程よいアクセント。
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素朴な焼き栗風「野路の里」

チョンと上を尖らせた栗の形がなんとも愛らしい素朴な栗菓子「野路の里」。こちらは30年ほど前に先代が考案したという秋限定商品。登場を心待ちにする長年のファンが多いという。

口に含むとほろりと崩れ、栗のほっくりした風味と共に広がるのは白餡の優しい甘み。どこかコクのある甘みの秘密は、ほんの少しだけ加えている練乳だそうだ。

「味のある形は、ひとつひとつ職人が手で成形しています。それから高温短時間で焼くことで、このホックリ感が生まれるんですよ」と、8代目の吉村良和さん。江戸時代から220年以上続く京菓子司は、さりげない工夫と人の手が生む丁寧な仕事を、とても大切にしている。

『亀屋良長』の「野路の里」
「野路の里」は9~11月末頃までの期間限定商品。1個270円・5個箱入り1566円。
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『亀屋良長』の「野路の里」製造風景
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秋限定の映える羊羹「山の幸」

栗の甘露煮やドライイチジク、紅葉型に抜いた羊羹などがぎっしり!様々な素材で隙間なく飾られたデコラティブな羊羹「山の幸」は、錦秋という言葉がピッタリのビジュアル。女将・由依子さんの「ドライフルーツたっぷりのパウンドケーキのように、華やかで食べ応えある羊羹を作りたい!」という想いをきっかけに、2012年に登場した。

『亀屋良長』の「山の幸」
「山の幸」は9~11月末頃までの期間限定商品。1本1728円。
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伝統を大切にしながら、素材や技法の幅を広げて新しい和菓子を編み出すのが、当代・良和さんの揺るぎないスタンス。
秋の夕焼けを思わせる橙色のスティックは、蜜煮した柿。羊羹にサクッと軽快な食感を加えているのは、さりげなく混ぜ込んだマカデミアナッツ。和洋の素材が違和感なく融合している羊羹は、緑茶はもちろんワインやウイスキーのお供にもなると評判だ。

『亀屋良長』の「山の幸」製造風景
美しい盛り付けにするため、デコレーション作業に入るのは、ひとつずつ専用の箱に羊羹を流し固めてから。
『亀屋良長』の「山の幸」製造風景
「山の幸」がズラリと並ぶ光景は壮観。幾つもの素材を、すべて人の手で盛り付けている。
『亀屋良長』の「山の幸」製造風景
仕上げに表面を寒天でコーティング。トッピングを羊羹に固定するだけでなく、艶やかな美しさを生むための大事な工程。
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今回紹介した3品は、百貨店の常設店やオンラインでも購入可能。対照的な装いの「野路の里」と「山の幸」を詰め合わせれば、おいしい秋のお届けものとして喜ばれるに違いない。

『亀屋良長』の包装イメージ
これらのパッケージはすべて、日本の四季や風情をポップに表現する京都発のテキスタイルブランド『SOU・SOU』によるもの。
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