
夏のお悩み③落ち込み、イライラにはセロリやミニトマト/漢方薬剤師・大久保 愛先生
長引く夏に体の不調を感じているひとも多いはず。薬膳・漢方をはじめとする東洋の考え方に、現代の医学を組み合わせた「食薬」を提唱する漢方薬剤師・大久保愛先生に、薬膳の取り入れ方のコツや、いまの季節に出やすい不調と対策について教えていただいた。
燦燦(さんさん)と輝く太陽とは裏腹に、なんだか落ち込んで悶々としてしまう…そんなことがあれば、それは季節のせいかも!?
参考文献
『不調がどんどん消えてゆく お悩み別 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)
『心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『体がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) いずれも大久保愛著
8月・9月は心がバテやすい季節
中医学の考え方に、「整体観念」というものがあります。人間は自然の一部であり、季節や日照時間、気候、土地の特徴などの環境に影響を受け、互いにバランスを取り合い健全な状態を保っているという考えのこと。特定の季節に関連する「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」のバランスが乱れると、心や身体が疲れてしまいます。
例えば、夏は心(不安感・不眠)、秋は肺(悲しくなりやすい)、梅雨から夏の終わりに多い高温多湿・低気圧が多発する雨雲が多い気候の “長夏”は脾(考えすぎてしまう)といった心と身体の動き が示されています。
今の時期は、紫外線による活性酸素の増加や汗によるミネラルや水分の不足、ゲリラ豪雨や台風による気圧の変化など、不調の原因が盛りだくさん。情緒が不安定になったり、不眠に悩んだり、思考力が低下していると感じたりするのは、「心」や「脾 」が弱りやすい季節だからなんですね。
悶々としたら、香りのよいセロリを
人の身体に重要なものとして「気(心と身体を動かすエネルギー)」「血(身体や心を支えるもの)」「水(身体をうるおす)」の3つがあります。
心の疲れにはタンパク質やビタミンB群、鉄など、「血」を満たすことが不可欠ですが、そのうえで、悶々と考えごとをしてしまったり、不眠や歯ぎしりがあるという方は「気」の巡りが滞って、自律神経が乱れているから。そんなときはセロリがおすすめ。
香りに含まれるアピインやセネリンがという成分が、心を穏やかにしてくれるはずです。
同じように香りのよいものであれば、グレープフルーツやブロッコリースプラウトなどでも代替可能なので、食卓に取り入れやすいものから買ってみてください。
爆発的なイライラにはミニトマト
鬱々、悶々とした、内に秘めたような落ち込みにはセロリですが、爆発的なイライラや興奮(漢方では“熱”という)で心が落ち着かないときはミニトマトを。「清熱作用」で心を落ち着かせてくれ、活性酸素を除去してくれるリコピンも豊富。ピクルスにしたら、酸味が気の巡りをよくしてくれるのでさらに効果が期待できます。
食べものでストレス耐性が変わる
仕事や人間関係などに限らず、厳しい気候の変化など、ストレスの原因となるものはさまざまですが、同じ出来事でも、考え込んでしまうこともあれば、気楽に考えられることがありますよね。 今は心が疲れやすい時期ということを知り、心をバテにくい状態を作っておけば、大らかに受け止められることが増えて過ごしやすくなります。

writer

大久保 愛
okubo ai
漢方薬剤師、国際中医美容師、国際中医師、薬膳料理家、漢方カウンセラー。
出身地・秋田の山で薬草や山菜に触れていたことから、漢方や薬膳に興味を持ち、自らのアトピー性皮膚炎を克服。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。北京中医大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人初の国際中医美容師資格を取得。薬膳の考えを取り入れた商品やレシピ開発、メディア出演や著書執筆など活動内容は幅広い。株式会社ツムラ「漢方ビュー」など、専門知識を生かした連載も多数。
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