名店、銘店、明店、迷店?4月号は史上最高に悩んだ「名店特集」でした。
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「名店とは何か?」。真理を問うようなタイトルの4月号。星の数ほどある飲食店の中から、数十店を選ぶなんて難しい。覆面調査を重ね、悩み、議論し、セレクトした店の顔ぶれは「確かに名店だ…」と納得できるものだった。
味、人、技、歴史、空間。なぜ〝名〟なのか?
「居酒屋ながほり」の汁そば550円は土曜昼のみ
「名店特集をやってみよう」となった時に、「美味しい店を選べば良いんだから簡単じゃん!」と安易に考えていたのだが、反して、非常に悩ましいテーマであることを思い知った。
美味しい店はたくさんある。歴史の長い店も、某グルメガイド掲載店も。では何をもって「名店」と言うのか。
だから問いかけることにした、「名店とは何か?」と。
「美山荘」のご主人夫妻、なんともチャーミングな一枚…!
一生に一度は行きたい憧れの店。設えももてなしも素晴らしく、もちろん歴史に裏打ちされた確かな技もある。
担当編集Oが「美山荘」ロケハン直前に体調を崩したが、「ぶっ倒れても行きます」と気合いを見せていた。これこそ憧憬の名店の引力である。
「スペシャリテ」を食べるために行きたい店。シェフの想いやメッセージがこもったシグニチャー的な料理は、味だけでなく皿から感じるストーリーがある。
ポンテベッキオの名物「ティンバッロ」を取材した編集Kは、「撮影後にカメラマンと半分こせず、独り占めしたかった」と明かしていた。
「akordu」のスペシャリテの一つ。なんと、〝根っこ〟です
名店は受け継がれる。ある理由で閉店や店主引退を余儀なくされ、その味を遺そうと一肌脱いだ人たち。
「あの味がまた食べられる!」という喜び。食遺産とも言える名店の味を後世に伝えることの社会的意義は大きい。
「ステーキハウス久」を継いだ、「黒毛和牛 ステーキハウス もり川」のステーキ14300円
「客に愛されている」ことも名店の要素だ。古くからの佇まいを変えず、町に溶け込み、人々を酒で癒す人情酒場。
一見入りづらい「明治屋」に取材に行くと、「いつも気になっていたけど勇気出して暖簾をくぐってみた」という若い女性がいた。ツワモノ…!
天王寺のレジェンド酒場「明治屋」は今年で88年だ
食の手土産は嬉しいものである。贈る側も貰う側も「あの味なら間違いなし」という信頼感たるや。
穴子棒鮨や撞きたての草餅……。私も誰かに贈られたいものだ。
光り輝くような、「英ちゃん冨久寿司」の穴子棒鮨
「もはや店主が名物」な店もある。味はもちろん、店主に会いたくて遠くからでも常連客が通う。「店を作るのは人なのだ」と再認識する。
総じてそういう店の主人は、どんなに人気店になっても「お客様のおかげで…」と謙虚だ。だからますます愛されるのだろう。
パン焼き、洋食作り、絵を描き、フルートも吹く「トロイカ&リビエラ」の店主
変わりダネでは、めちゃくちゃ僻地にある奈良の秘境ラーメン店や、昭和から時代が止まっている和歌山のレトロ喫茶。
この空間が残っているなんて奇跡!と感動すら覚える。いつまでもお元気でいて欲しい。
公共交通機関では行けない「ラーメン河」。メニューはラーメンとマグロ丼のみ(!)
和歌山「喫茶サンスイ」のゴージャス過ぎる店内からは、立派過ぎる庭が見える
『孤独のグルメ』の久住昌之さんの寄稿も!
なんと冒頭では『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんがエッセイを寄せて下さっている。「こう書いてください」と言わずとも、本特集で伝えたいことが100%凝縮された文章なので驚いた。
そして改めて考えた、「名店とは何か?」と。
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo