涼を呼ぶ個性豊かな「鮎菓子」11種を身体測定!【後編】
前編 では、「プレーンな求肥を卵・小麦粉・砂糖をベースにした生地で包んだ」王道タイプをご紹介しましたが、後編では、一味違う個性派の鮎たちが6種登場!
前編に続き、身体測定と独自の鮎骨格タイプ診断(?)をしつつ、それぞれのチャームポイントをご紹介していきたいと思います。
冷しに、ライ麦、あん入りも!
後編では、王道タイプとは異なる、生地や中身にキラリと個性が光る鮎をご紹介。
前編同様、鮎の体重はパッケージを除いた本体のみ、身長はフォルムのカーブに沿ったものではなく、直線距離での計測とします。
鼓月「冷しかつら川鮎」|京都
冷やして食べるタイプ! 直線的でスタイリッシュなボディラインと、華奢だけど肩幅がしっかりしている感じが「骨格ナチュラル鮎」っぽい。求肥は硬くなってしまわないのかと心配していたら、中身はわらび餅ということで、心置きなく冷蔵庫にイン! だのに、持ち歩きや保存は常温でも可能というのがうれしい。
冷えても生地の締まりは感じにくい薄皮タイプに、口の中の温度でほどけるあっさり味のわらび餅がよく合う。鮎菓子とともに清流の涼感まで味わえる「冷しかつら川鮎」は、まさに新感覚。とはいえ、既に10年選手というから驚き! 2025年は8月上旬までお取り寄せ可能。
鼓月公式サイト
甘春堂「京・かも川 若あゆ」(抹茶)|京都
鴨川の河畔に店を構える甘春堂本店の「京・かも川 若あゆ」には、王道の白い求肥のほかに、抹茶入りの求肥を包んだバージョンがある。山芋を使い、ふっくらと仕立てた焼き皮は厚みがあるのに口どけがよく、エラ下から尻尾のくびれまでたっぷりと入った求肥をやさしく包んでいる。求肥の柔らかさは断面からとろんとせり出す様子からも窺える。
甘さのあとから抹茶の香りが追いかけてくる爽やかな一品。青紅葉と鴨川のせせらぎに若あゆのシルエットが浮かび上がるパッケージも素敵。2025年は8月下旬までの販売予定。
甘春堂公式サイト
亀屋良長「鮎調布」|京都
焼き皮の生地肌がきめ細かくすべすべで気持ちいい。弾力のあるグラマラスボディが特徴の「骨格ストレート鮎」。ちょんまげのような尻尾の造形がキュート。
顔や背中、尻尾の焼印のデザインは、ミニマムな線と点で構成されており、シンプルな線画が持ち味の最近のイラストレーターが描く作品にも通じる普遍的なオシャレさ。
ひと口食べて驚いたのは、浅めの焼き色から想像していた風味よりずっと香ばしいこと。原材料を確認すると、小麦粉だけでなくライ麦粉を使用している。最近のリニューアルかと思いきや、少なくとも24年以上前にはこのレシピだったというから、改めて驚きだ。 2025年は6月下旬までの販売を予定。
亀屋良長公式サイト
伊藤軒「鮎調布」|京都
ふっくら全盛の時代に、断面の並びでも異彩を放っていた平たい「鮎調布」がこちら。まごう事なき「骨格ウェーブ鮎」。
なお、焼き皮のふちの方はクレープのような薄さなので、乾燥には要注意。牛乳が入っているため、どら焼きやカステラ系とは異なる、しっとりもちもちの食感が面白い。また、甘めの求肥と、醤油強めの皮のコントラストで甘じょっぱいループが自然発生。個性は強めながらも、すんなり受け入れてもらえる親しみやすさもある。2025年は7月下旬までの販売を予定。
伊藤軒公式サイト
谷常製菓「鮎のささやき 若鮎」|兵庫
持った瞬間、笑ってしまうくらい厚みのあるグラマラスな「骨格ストレート鮎」。
昭和26年に八木川の清流を泳ぐ鮎を模してつくられ、菓子箱の底に笹の葉を敷いていたことから「鮎のささやき 若鮎」と命名された一品。パッケージに描かれた笹の葉にその名残をとどめている。また、但馬地方ではアユをアイと呼ぶことから、「愛のささやき」とも読めるのがウマい。
焼き皮の香りが尋常じゃなく良い!と思ったら、バターの仕業であった。求肥とあんこで相当ヘビー級かと思いきや、気づいたらなくなっていたレベルで食べ心地はライト。ある意味、とても危険なささやき。「鮎のささやき 若鮎」恐ろしい子…!※7月以降規格変更あり
谷常製菓公式サイト
俵屋吉富「鴨川あゆ」|京都
まだ清流の中を泳いでいるかのような淡い水色のビジュアルが個性的な「鴨川あゆ」は、調布製ではなく最中のような薄種(うすだね)で生姜風味の求肥を包んだ一品。
パリッとかサクッではなく、パフッとした儚げな食感の先に、きりりと爽快な生姜の辛さ。この小ぶりなサイズ感だから成立する絶妙なラインの、辛そうで辛くない少し辛い生姜…。
その手につかまえた!と思っても、するりと逃げていく若あゆのように、一瞬の刺激を残して引いていく匙加減がお見事。2025年は7月末までの販売予定。
俵屋吉富公式サイト
最後に「鮎菓子の骨格診断」まとめ
今回、全ての鮎には分類コメントができませんでしたが、独断と偏見と勢いで始めた「鮎菓子の骨格診断」の特徴を最後にまとめておきます。
『たねや』さんの「稚鮎」はストレートとウェーブの中間、『菓匠 千鳥屋宗家 』さんの「鮎」はウェーブとナチュラルの中間かなぁ? フォルムが似ていても求肥の弾力や焼き皮の厚みがそれぞれ違うので、分類には本当に悩みました。
皆さまもぜひ、いろいろな鮎菓子を観察しながら食べ比べてみてください。
【骨格ストレート鮎】
・厚みのあるグラマラスボディ
・焼き皮に弾力やハリがある
・求肥のハリを感じる
・腰の位置が高い
・上重心
このタイプの有名鮎…谷常製菓「鮎のささやき 若鮎」、亀屋良長「鮎調布」、三英堂「清流菓 あゆ」、彩雲堂「若鮎」
【骨格ウェーブ鮎】
・華奢でなだらかなソフトボディ
・断面が薄く平たい
・ハリよりも伸びのよさがある求肥
・腰の位置が低い
・下重心
このタイプの有名鮎…伊藤軒「鮎調布」、大極殿本舗「京 桂川 若あゆ」、甘春堂本店「京・かも川 若あゆ」
【骨格ナチュラル鮎】
・直線的なスタイリッシュボディ
・フォルムがしっかりしている
・肉感的ではない
このタイプの有名鮎…鼓月「冷しかつら川鮎」、俵屋吉富「鴨川あゆ」

writer
かがたにのりこ
kagataninoriko
月に2度、あんこを炊くあんこ熱愛ライター。各種媒体での和菓子に関するインタビュー記事やコラムを執筆。ライティングの他にも、あんこの食べ比べワークショップや、和菓子イベントのコーディネート、商品プロデュースなど活動は多岐にわたる。
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