おばけキュウリでトムヤムスープを作ったら超絶うまかったの巻
カワムラケンジの「スパイスな一皿」
スパイス料理研究家として活躍するカワムラケンジさんが、その月に「ぜひ作ってほしい!」という“スパイスな一皿”をエッセイ&レシピでご案内。今月は、残暑の頃にオススメの「おばけキュウリのトムヤムスープ」です。
ウチの畑のキュウリが育ちすぎた!
昨春始めたばかりの畑が想像以上に面白くて忙しくて。キュウリって暑いほど成長も早いらしく、1日で5cm? いやもっと!? と生命力絶大。一本一本、形も違うんです。今まで脇役でしかなかったキュウリですが、すっかり主役の貫禄です。
あちこちに、長さ30cm以上の太いキュウリが重たそうにぶら下がってます。昨年は1株から120本もとれて嬉しすぎたので、今年は10株もいれちゃった。一人でへらへらと眺めていたら、畑の師匠ニシダさんがやってきました。
「早よとらんとあかんぞ。あ~もう30cmくらいになっとるがな。完全におばけキュウリや。キュウリはちょっと小ぶりなほうが皮が柔らかで味が濃いんや。これでは売りもんにならんので、昔からこの辺(大阪・高槻の山麓)では古漬けにするか、次の種をとる。どや、なんかええ料理法はあるか?」。
その場で食べてみると確かに皮が硬くて、キュウリの醍醐味ともいえる青々とした風味が感じられません。でも、決してまずいわけじゃなく、ただ味が薄いだけ。キュウリは約95%が水分と言われます。どでかいだけあって、みずみずしい以上の水気なのだ。
ということで作ってみたらびっくらポ~ン。これ、おばけキュウリだからこそ、の料理法だと確信。スープの味がしっかりと入り込み、一般的な瓜よりもややしっかりとした食感。一応通常サイズのキュウリでも試してみたら、こちらは青々とした風味が残りつつのトムヤムテイストでまたおいしい。
SNSにおばけキュウリの収穫を載せると、中国料理研究家の楊(ヤン)さんが「Qちゃんにするとおいしい」とコメ。ネットにレシピがぎょうさん載っていて。で、作ってみたら確かにおいしい。
が、せっかく味が薄いのだからもっと違うことができるんじゃないかな。そうだ! 味をつけるのではなく、染み込ませるという手がありました。インドやネパール、東南アジアなんかでは、品種名はよく分からないけど大小のウリ科野菜のスープをけっこう見かける。そうだ、トムヤムスープにしちゃお!
ということで作ってみたらびっくらポ~ン。これ、おばけキュウリだからこそ、の料理法だと確信。スープの味がしっかりと入り込み、一般的な瓜よりもややしっかりとした食感。一応通常サイズのキュウリでも試してみたら、こちらは青々とした風味が残りつつのトムヤムテイストでまたおいしい。
キュウリのトムヤムスープ、カミさんドハマり中です。
「おばけキュウリのトムヤムスープ」レシピ
【材料(2~3人分)】
・水…3カップ
・シーフードミックス…80g
※調味料漬けでないものがベター(今回は業務スーパーの小エビ、イカ、アサリのミックスを使用)。
・キュウリ…おばけサイズなら1本、通常のサイズ(約20cm)なら2本。
・トマト(中玉)…1個
・伏見甘長唐辛子…6本
・春雨…40g(業務スーパーで緑豆タイプを購入)
・ニンニク…1片(5㎜厚にスライス)
・サラダ油…大さじ1弱
・レモン果汁…大さじ1
・えびラー油…ひとたらし
〈A〉
・砂糖…小さじ1/2
・ショウガ…7g(2~3mmの厚さにスライスしたものを4~5枚)
・ナムプラー…大さじ1強(15g)
・鶏がらスープの素…小さじ2
〈スパイス〉
・豆板醤…小さじ1/2~好み量
・バイマックルート(コブミカンの葉 )…1枚(2枚連なったような形で1枚)
・レモングラス…1本
〈トッピング〉
・パクチー…適量
- ①
- 鍋に水3カップを沸かし、シーフードミックスを入れて30秒~1分茹でたらザルに取る。茹で汁は残しておくこと。
- ②
- キュウリは、両端を切って皮をざっくりと剥き、縦4等分で長さ5cmほどに切る。トマトは皮を湯むきし、3cm角に切る。伏見甘長唐辛子はヘタを取り3cm角に切る。
- ③
- 別鍋でサラダ油を熱し、ニンニク・豆板醤を炒める。香りが立ったら②を入れ、トマトはヘラなどで軽くつぶしながら、中火で約5分炒める。
- ④
- ①の茹で汁、葉脈を取って5㎜幅に切ったバイマックルー、半分に切ったレモングラス、〈A〉を加え、弱火〜中火で12~13分煮る。
- ⑤
- キュウリの色が変わり柔らかくなったら、レモン果汁・えびラー油を加え、混ぜ合わせたら火からおろす。
- ⑥
- 春雨と①のシーフードミックスを加え、蓋をして2~3分、余熱で火を入れる。
- ⑦
- 器によそい、パクチーをトッピングする
キュウリの大きさに合わせて塩加減を
キュウリのサイズに応じて、煮る時間と塩分を調整するのがポイントです。
スープの味がよく染みこんで、噛んでもコリッとはならない、でもしっとりとした弾力は残っている、というのがベスト。おばけキュウリの場合は皮をすべて剝き、拍子切りでもかまいません。煮るうちにキュウリから水分が出るので、味が薄いと感じた時はナムプラーで調節してください。
また、春雨の代わりに、タイで言うところのセン・ミー(細い米麺)やセン・レック(中太の米麺)などを使ってもいいと思います。
もしホームデーン(タイで多用するシャロット/赤シャロット/エシャロット)が手に入れば、一つだけ入れると本場タイの味により近づきます。ただ、玉ネギはちょっと違うかなぁという感じです。
主役はあくまでキュウリなのですヨ。
カミさんがこのスープを宵越ししていたらしく、素麺を入れて食べ出したもんだから、ちょっともらうとナンジャこらのうまさ。肝心のキュウリはもっとおいしくなってる! 形を維持しつつ、めちゃめちゃスープが染みているのですヨ。おでんの大根みたいな。こんな風になるんだったら、普通のキュウリの輪切りもいけますよ、きっと。
今回の最大の特徴は、絶対的脇役と信じ込まれてきたキュウリを主役に抜擢したこと。酸味と辛みでパンチを利かせることで、キュウリはますます存在感を増していきます。
辛みには、豆板醤が冷蔵庫に残っていたらぜひ使ってみてください。豆系発酵スパイスならではのわずかな塩味と旨みがあります。トムヤムスープをネット検索すると、やたらとコチジャン(韓国の発酵調味料)が出てくるのですが、もちろんこちらも美味しいでしょう。他にも、タイのプリック類はもちろん、シンプルにチリホール、なんだったら島唐辛子でも美味しくできるはず。
ということで、
おてんとさま、ご馳走様です。
Writer ライター
カワムラケンジ
Kenji Kawamura