黒胡椒がアクセント。スパイシーな大人の「イチゴジャム」レシピの巻
カワムラケンジの「スパイスな一皿」
不揃いのイチゴから生まれたレシピ「シナモンと黒胡椒のスパイスイチゴジャム」。ちょっと時間がかかりますが、レシピはシンプルなのでジャム作り初心者にもおすすめ。まさかのスパイスとのコラボが“大人のジャム”という感じで本当においしいです!
イチゴはおいしいが敵だらけ
畑の師匠・ニシダさんは毎年のようにイチゴを栽培していると言います。ですが、必ずと言っていいほど獣害に遭うとも。それでも栽培するのはなぜ?
「これがおいしいんや。獣もみんなそう思っとる。でも旬になったらなんぼでもなってきよるから少々食われたってかまへん。ただ、一度目をつけられるとやばいことになる。アライグマ、カラス、ネズミ、ハクビシン、イノシシ、サル。敵は多い。収穫予定日の朝にやられたりする。赤くなる直前にとらんとあかん」
なんだか面白そうなので僕も畑3年目にして挑戦してみました。
イチゴは草本性植物なので野菜。通常の旬は初夏だが、夏以外収獲可能な四季成り品種もある。
2022年11月1日、苗を50個購入し圃場に定植。
「わしはイチゴ栽培は得意中の得意や。葉かきや肥料やりはわしに任せとけ」と嬉しいガテン系のお言葉。ニシダ師匠の指示通り、僕は草抜きやマルチング、ネット張りなどを行いました。
ところが、ようやく4月の開花期になっても50株中30株が花を咲かせないのです。隣ではもう一人の弟子も50株やっていたのですが彼女のは一つも花がついてない。花がイチゴになるんちゃうの!?
「あれ~おかしいのぅ。こんなことは初めてや。肥料は例年通りなんやけど。気候か、あるいは木(苗)が悪かったか」
ニシダ師匠はご自身のイチゴを別の圃場で栽培されていて、そちらは成功しているとか。「見に来い」というので後日行こうとしたら「獣にやられて全滅や」とニシダ師匠は顔面蒼白。何だイチゴは幻か、と思いきや、その数日後、今度は僕の残りの20株に赤い実がなり始めました。獣が来る前に、と思い僕は急いで収獲しているとニシダ師匠がやってきました。
「なんやえらい形が悪いのぅ。小さいのばかりやし。味も弱々しい。それはジャムにでもせい。ふん、わしのイチゴはそんなんちゃうぞ。もっと大きくて艶々で甘いんや!」
なにを獣に全部食べられたくせに。というわけで今回は悔しくなってめっちゃおいしいジャムを考えました。
4月下旬、やっとこさイチゴらしくなってきた。イチゴの実は正確には花托(かたく)・花床(かしょう)といって花の付け根が肥大化したもの。種にみえるものが実。
思い切って黒胡椒
甘いイチゴジャムに黒胡椒なんて、と驚く方も多いかもしれません。が、これが本当に合うんです。ここはぜひ思い切って多めに入れてみてください。
僕は後述のレシピの際は小さじ1/3以上入れます。パンに載せて食べると、シナモンの甘い香りと黒胡椒の爽やかな香りがいい感じで漂います。その後じんわりと舌の奥に温かみが。これは黒胡椒の力です。
それにしてもこの甘い香りと暑い感じ、どこかで体験したことのある感覚だなぁと思っていたら、これは昔友人からもらったアーユルヴェーダ(インド・スリランカに伝わる伝統医療)のある薬(これも硬いジャム状)でした。胃腸の調子が悪くなった際になめると一発で治るのだと。
シナモンも胡椒も、健胃整腸、発汗作用促進、下痢・腹痛止めに効果があるとインドでは言われています。元気になれるイチゴジャムなんて最高だと思いませんか!
「シナモンと黒胡椒のスパイスイチゴジャム」レシピ
【材料】(450~500g)
イチゴ…300g
グラニュー糖…150g
レモン果汁…大さじ1
シナモンパウダー…小さじ1/3~1/2
粗挽き黒胡椒…適量
【作り方】
- ①
- イチゴを流水で洗い水分を切ってヘタを取る。
- ②
- 鍋にイチゴを入れ、グラニュー糖をふりかけて1時間ほどおく(一晩置くとなおいい)。
イチゴにグラニュー糖をふりかけておくと徐々に水分がにじみ出てくる。
- ③
- 鍋を火にかける。シナモンと粗挽き黒胡椒を加える。
- ④
- アクが出てきたら取る。蓋をして最初は中火、徐々に弱火にして煮込む。
- ➄
- 吹きこぼれそうになったら蓋をずらしてコトコトと煮込む。
- ⑥
- ヘラなどでイチゴを触って柔らかくなっていたら一度火を切る。
- ➆
- 10分ほど置いたらレモン果汁を入れて再び5分ほど煮る。イチゴが大きい時はヘラなどで軽く潰す。
- ⑧
- ガラス容器などに移し替える。
※イチゴの食感をしっかりと残すと、噛むたびに甘酸っぱい味が口の中に広がってたまりません。 そのために煮込みすぎず、形が残っているところで仕上げるためにレモン果汁を加えています。とろみをつけるのに必要なペクチンがイチゴには少ないためレモンで補充している、というわけです。
※砂糖は多めに入れています。最近は糖度低めが人気のようですが、しっかり入れることでとろみもつくし、甘みは強いほうがイチゴの風味が生きてきます。
これで形は不揃いでもイチゴの風味がばっちり味わえるのです!もちろん売ってるのは全部カンペキですけどね。
Writer ライター
カワムラケンジ
Kenji Kawamura