本場インドの王道ベジ料理、パラク・パニールがたまらないの巻

本場インドの王道ベジ料理、パラク・パニールがたまらないの巻

カワムラケンジの「スパイスな一皿」

2023.05.16

文・撮影:カワムラケンジ

ホウレン草とチーズのカレー、本場ではパラク・パニールと言います。日本でもだいたいのインド料理店のメニューにありますね。それくらいメジャーだし実際インドの人たちが大好きなカレーです。今回はこのカレーをおうちで作ってしまおうっていうご提案です。

目次

パラク・パニールとは ホウレン草の緑色とパニールの白色 パラク・パニールのレシピ ライスにもパンにもばっちり

パラク・パニールとは

パラク(パーラク、パラックとも発音)とはインドの言葉でホウレン草を意味します。そしてパニールとはチーズのこと。温めたミルクにレモン果汁などを加えて固めた熱凝固タイプのチーズです。

インド料理店などでサグ・パニールと表記していることもありますが、これも基本的には同じホウレン草とチーズのカレーを指しています。
ただし「カラシナや大根の葉を使った料理もあってそれらもサグと呼びます。つまりサグとは青い菜っ葉という意味ね」と第8話ビリヤニの巻で登場したインド人シェフ・アリムル氏は話します。

パラク・パニールはインドのベジタブル料理の代表格のひとつで、家庭から高級レストランまで幅広い場面で食べられています。
濃厚な味わいのせいかノンベジの人たちも大好きで、チキンやケバブと一緒に楽しんでいます。栄養が豊かで、作りたては特に色鮮やか。同じベジ料理でもスペシャルなパワーフード。それがパラク・パニールです。

ホウレン草の緑色とパニールの白色

パラク・パニールの最たる魅力はその鮮やかな色合いにあります。

インド料理店などで食べる際、パラクがオリーブ色や少し黄土色が混じった緑色の場合がありますが、これは時間の経過によるものです。ホウレン草を加えてから煮込み時間が長かったり、またベースにトマトを使っても同様の色になることがあります。
とにかくパラクそのものは出来上がって30分もすると変色が進み、1時間もしたら鶯色、モスグリーンという感じになります。味はすぐに変わることがないので問題はないですが、今回は自分で作るのだから鮮やかな色あいを楽しむことができますね。

パラク・パニールの色

もちろん、濃厚なおいしさも大きな魅力です。

野趣のあるホウレン草に、しっとりとした歯応えとまろやかなパニールのコントラストが最高。
インドではパニールに使うミルクは水牛かホルスタイン種などの一般的な牛がメインで、前者は乳脂肪分が多く、より濃厚な味わいです。

で、今回は国産の牛乳に生クリームとヨーグルトを加えた、目指せインド的レシピにしました。濃厚でありつつも後味はさらりとしたおいしいチーズができます。

パラク・パニールのレシピ

パラク・パニールのレシピ

【材料】(4人前)

●パラク
ニンニク…小さじ2 ※みじん切り又はおろしておく
ショウガ…小さじ2 ※みじん切りにしておく
玉ネギ…1個(約250g) ※あらみじん切りにしておく
ホウレン草…約250g ※洗って根を切っておく

サラダ油…大さじ2
塩…小さじ1と1/2~2
水…2カップ
牛乳…100ml ※生クリームに変えると、本場のように、よりこってりに

●スパイス
クミンシード…小さじ1/2
〈A〉
クミンパウダー…小さじ1
ターメリック…小さじ1/2
コリアンダーパウダー…小さじ1と1/2 フェヌグリークパウダー…小さじ1/2 ※お好みで
ガラムマサラ…小さじ1
レッドペパーパウダー…適量 ※今回は小さじ1/3

※カレー粉とガラムマサラだけでもできます。
カレー粉…大さじ1と1/2~2
ガラムマサラ…小さじ1

●パニール
牛乳…500ml ※成分無調整で乳脂肪分3.5%以上
生クリーム…100ml ※乳脂肪分40%以上が望ましい
ヨーグルト…200g ※乳脂肪分3%が望ましい
レモン果汁…大さじ1
※歩留まりは180g/800g

【作り方】

パニールを作る。鍋に牛乳を入れ火にかけ、沸騰する前に生クリームを加えて混ぜる。
再び沸騰しかけたらヨーグルトをさっと混ぜ、レモン果汁を加えてざっくりと混ぜる。

レモン果汁を加える

ぎゅっと絞り、容器を重ねるなどして重量をかけながら冷ます。
サラダ油、クミンシードを別の鍋で火にかけ、ニンニク、ショウガ、玉ネギを炒める。塩を加える。

玉ネギを炒める最終的に鮮やかな緑色にするために焦がさないように炒めるのがコツ。弱火で蓋をして煮るようにして炒めるといい。時折、蓋を開けて混ぜる。

ホウレン草をゆがく。たっぷりのお湯に塩(分量外)を加えて色よくゆでる。沸騰して1分ほどしたらザルに取る。水は切るが絞らないように。
少し冷めた頃にミキサーに移し、水1カップを加えてペーストにする。※ミキサーが小型の場合はホウレン草を2,3個に切ってください。
④にしっかりと火が通ったら〈A〉を加えてよく混ぜ、残りの水1カップを加えさらに混ぜる。

スパイスを加える

⑥を➆に加えてよく混ぜる。煮立ったら牛乳を加える。5分ほど煮たら火を切る。

ホウレン草ペーストと牛乳を煮る

③の手ぬぐいを開き、4等分にし、さらにそれぞれを4~6つに切る。
器に⑧をよそい、➈のパニールを加え、お好みでショウガをのせたら完成。

ライスにもパンにもばっちり

パラク・パニールは、元々インド北西部のパンジャブ地域から始まったと言われ、現代でも主に北インドでよく食べられているベジ料理です。
通常インドの食事は複数のおかずを食べるものですが、これは単品で食べることもあるようです。それくらい食べ応えがあるということですね。

主食はだいたいがチャパティ(全粒粉で作る薄焼きパン)やパラタ(チャパティと同じ生地に様々なものを入れた調理パン)で、時折ライスと食べることもあります。
これら主食の特徴としてはギーを使っていること。ギーとはバターを煮詰めて作る純粋バターとも言うべくもの。なので超濃厚バターという感じの香りと味がします。

最近ではチャパティやパラタ、時にロティと名のつくものが、日本のスーパーでも見かけることがありますので一度試してみるのもいいかもしれません。
が、もし入手できなかった際は、日本製の食パンでも十分においしいです。その場合はトーストにして一般的なバターを塗るとばっちりです。

Writer ライター

カワムラケンジ

カワムラケンジ

Kenji Kawamura

ライター&スパイス料理研究家。『スパイスジャーナル』編集長。幼少の頃は近所の家々を食べ歩き、16歳から数々の飲食の現場で働き、ライターに。昨年からは夢だった畑も。「うまいものがあって、おもしろい人がおったらどこへでも!」。www.kawamurakenji.net

Related article 関連記事