インドの紅茶「チャイ」でスパイスを簡単&気軽に楽しもう!の巻
カワムラケンジの「スパイスな一皿」
2、3月は畑が端境期(4月頃から収穫が始まる!)なので、前回と今回は特別編。前回は僕のインド料理の師匠アリムルくんのビリヤニでした。で、今回は何か!?インド料理を食べた後はやっぱりこれでしょ。チャイです。スパイスを簡単に楽しめるのが魅力。ぜひトライしてみてください!
茶葉はCTCアッサム
チャイとはお茶のことで、インド、トルコ、ロシアも同じ発音だそうです。インドやその周辺諸国では通常ミルクで割ったものを飲みます。これは上質な茶葉はイギリスに行ってしまうためにできた習慣だとよく耳にします。
彼らが手にできる茶葉は、加工の際に残る粉々のカスのようなもの。渋みが強すぎるためミルクで割ることでなんとかおいしく飲めたというわけですね。
また茶葉そのものが濃厚な味の出るタイプだというのもミルクが合う理由です。それはCTCアッサムという茶葉。
CはCrush(押し潰す、押し砕く)
TはTear(引き裂く、破る)
CはCurl(丸くする、巻く)
つまり、砕いて丸く巻いたアッサムのことです。
小さくてまん丸い形のCTCアッサム茶葉
アッサムとはインド北東部の地名でダージリンと並ぶお茶の名産地。ダージリンやアールグレイなどと比べて、やや渋みが強くコクのある味わいが特長です。
スパイスを手軽に楽しめる
彼らの殆どが一日何杯もチャイを飲んでいます。少なくとも3杯、多ければ5杯、いやもっともっと。
特に誰かと会う時はまずもって飲みます。ご馳走するし、ご馳走にもなる。さっき飲んだからもういらない、と言っても、まぁそう言わずに飲んでいけ、という具合です。
そんなわけで僕は今までゆうに30軒以上のインド人やネパール人のお宅、数えきれないほどのインド料理店の厨房でチャイの入れ方も見てきました。
その上で言えること。それがスパイス入りのチャイは想像以上に少ない、ということです。入っていてもジンジャー程度。お客扱いされたときに何か1種類入るか、稀にマサラ(複数種類ブレンド)チャイとなります。
何を入れるかはその時の気候や体調、好み、気分で違います。寒い時はジンジャーやシナモン。暑い時はグリーンカルダモンやミントなど冷涼感のあるものを。食後ならクローブやフェンネルで口臭予防になります。マサラチャイは豪華版の感覚かと。
ちなみにマサラチャイの王道パターンはこう。シナモン、クローブ、グリーンカルダモン、ジンジャー、ブラックペパー。それ以外に、スターアニスやフェンネルなど、時にナツメグを入れることも。これら全てを入れることはなく、通常は2~4種、多くても5~6種までです。
ホール、パウダー、ともによく見ます。
ホールはフレッシュ感や個性が出やすく、パウダーはバランスのよさと全体の力強さが特長的です。パウダーは意外にも既製品のティマサラ(チャイ用ミックス)、特にMDH社製ティプラスマサラを使っているのをよく見かけます。インドのレストランで出てくるチャイのような香りがします。
我々日本人にとってチャイはスパイスを手軽に楽しむことができるのが魅力。ぜひ自分の好みを探してみてださい。
今回はグリーンカルダモン1種で作りますが、なければクローブ、シナモン、ブラックペパーなど、どれか1種でも3種でもいいので、レシピと同じ要領で作ってみてください!
ショウガ科のグリーンカルダモン。日本メーカーの表記はカルダモン。鞘は爪で割ることができます。硬いと感じたら包丁の柄や乳鉢などで潰してください。鞘ごと使います。
「カルダモンチャイ」レシピ
インドでは、容量150㎖ほどのチャイに対して砂糖を普通に小さじ3杯くらい入れるのをよく見ます。コーヒーも同じくトロトロに甘い!
【材料】(2人前)
水…200㎖
茶葉…小さじ1と1/2~2 ※粒が小さい時は濃くでがちなので、少なめに。
牛乳…150㎖ ※成分無調整
砂糖…小さじ3程度 ※お好みで
〈スパイス〉
グリーンカルダモン…4個 ※鞘を割っておく
〈必要な道具〉
鍋、茶こし、150㎖入るグラス2個
●もしマサラチャイにするなら
グリーンカルダモン…2個
クローブ…2個
シナモン…2cm
ジンジャー…1~2cm程度 ※つぶす
ブラックペパー…4、5粒
*いずれか2、3種でもOK
【作り方】
- ①
- 鍋に水とスパイスを入れて火にかける。
- ②
- 沸いたら茶葉を入れて中~弱火にして2~3分煮出す。少しだけぐらぐらと湧き上がる感じ。
- ③
- 牛乳を加え強火にする。吹き零れそうになったら弱火にして混ぜて、30~60秒煮る。
- ④
- 火を切って砂糖を加え、よく混ぜたら出来上がり。茶こしでこして容器に注ぐ。
本場の風景
インドではあちこちでチャイを飲むことができます。食堂、レストラン、ホテルはもちろん、屋台、掘っ立て小屋、木の下でただ台を置いただけの店、公園などで台車を転がしている人なども。
そして面白いのがみなさん職人気質であること。それぞれ少しずつ入れ方が違うんです。
けっこうこのパターンが多いかな、と思うのが、茶葉とミルクそれぞれを別に温めて、オーダーごとにコップを二つ使ってミックスしていくやり方です。家では一つの鍋に、茶葉、ミルクを入れて作る方法をよく見ます。
ハイデラバード街中のチャイ職人。温めておいたミルクを入れてから茶(ネルドリップ)を注ぎ、二つのコップを使い何度か交互にミックスして提供。
コップも様々。ガラス、ステンレス、陶器。取っ手のついたマグカップタイプも。内側はステンレス製、外側は銅装飾というのもあれば紙コップなんてのもある。
味も色々で、ミルクが濃いものもあれば少なめでさっぱりしたものもある。渋みの強いもの、逆に上品なものもある。
1日に何杯も飲むこともあってか、量は少ないのが特徴です。小さいと100㎖以下。普通は120㎖程度と思われます。多くても150㎖までかなと。
あぁなんだかチャイ屋台をやりたくなってきました。あかんあかん、今から畑行ってきます!
Writer ライター
カワムラケンジ
Kenji Kawamura