
使うのは調味料4つ。簡単サツマイモきんとんのレシピの巻
カワムラケンジの「スパイスな一皿」
焼酎大好きな元九州男児、農家の大先輩タナカはんから聞いたサツマイモ栽培の裏技。ビタミンB群豊富な野菜にはターメリックでしょ。ということで、今回は超カンタン&ヘルシーなサツマイモが主役のレシピをご提案!
作るのも掘るのも楽しいサツマイモ
ある日の芋ほり会。茎の下に限らず、たまに30センチほど離れたところから出てくることもある。
畑の師匠ニシダさんの畑にて、2022年4月下旬の土づくりから手伝わせてもらって、5月の下旬に苗を定植。品種は、農研機構九州沖縄農業研究センターが改良したという「べにはるか」です。
「普通は大きくなりすぎたらおいしゅうないとか、寝かせんと甘みがでてけーへんとかいうけど、この品種は大きいなってもうまいし、掘りたてでもそれなりに甘みがあるし、寝かせるとなお甘くなる。それに病気にも強い。今までいくつかの品種やってきたけどここの土には『べにはるか』が一番おうとるみたいや」とニシダ師匠。
定植してしばらくは水やりが大切、家から畑までバイクで片道45分の道のりを毎日通勤。僕が植えた苗は計220本、20m以上の畝3本分ほど。圃場脇(ほじょうわき)を流れる小川の水を、13ℓのじょうろ満タンにいれて何度も畝まで往復。やがて膝を痛めて病院へも通うはめになりました。
そしてすぐに夏になり、トウガラシ類やトマト類、ナス類、ショウガなどの栽培に着手。あっという間に収穫期がやってきて、秋が来て、あれもう冬?と思うほど冷え込む日も。
「例年なら11月上旬まではいけるけど、なんや今年は秋が短かそうやのぅ。10月いっぱいに収穫してしもたほうがええ。サツマイモは冬のものというイメージやけど、気温10℃以下になると黒ずんだり腐ってまうからの」
というわけで、10月中旬からお客さんを招いて随時芋ほり会を決行しました!参加者は近所のご家族、旧友、仕事仲間など、3歳児から60歳越えまで実に幅広い年齢層です。それにしても年齢に関係なくみんな実に楽しそう。サツマイモ、育ててよかったです。
僕が育てたサツマイモはいろんな形をしている。
飲兵衛タナカはんは達人だった
タナカはんとはニシダ師匠の農家仲間の一人。年齢は70代。熊本出身の焼酎とラジオが大好きなおじいさんです。特徴はとにかくスロー。
たまに畑のことを教えていただくのですが、必ず最初の一言を発する前にズッコケそうなほどのタメがあって、「あれ…これ…それ…」に始まり、10秒後に本題に進む、というスピード感です。なので急いでいる時は実に手ごわい。
芋ほり大会をしていたある日、サツマイモ畑にタナカはんがやってきました。
「なんや、今日はもう終わったんかいなぁ。わしのイモ見てみるか?」
いやいや、もうみなさん帰るところですので(汗)と僕がそう言うと「どや、イモ見せてみぃ~」とタナカはんが箱の中を覗き込み、にやっと笑うのでした。
「ふふふ、やっぱりな。わしのイモ見せたるから。ほらこっちおいで」
畑は3,4人がシェアしており、僕の畝の隣にタナカはんの畝があります。タナカはんはよっこらせと備中鍬(細い刃が4本ついた鍬)をもちあげ、自分の畝にサクッ。するとその途端にサクッサクッサクッと実に軽やかにリズミカルに掘っていくのでした。なんやタナカはんめちゃクイックリー。
10数本のサツマイモが顕わになったところで「ほら見てみっ。何が違う?!」
見るとそれは真っすぐで直径3~5cmくらいの太さで、表面がつるっ。そして1株に7~8個のイモが付いている。僕が育てたものは大小様々なサイズと形で1株に3~4個です。
「うわっ、スーパーで売ってるやつみたいにキレイ!」と参加者から声が。
「なんでか知りたいか?ぶふふふ、誰にも言うなよ、これはな、一度葉をすべて落とすんや。そうやな9月に入ってすぐ。今年は1日に落とした。そのことで……ほら、なに言うの?とめる?」
リセットって感じですか?
「それそれ!サツマイモは世話要らん言うけど、やることやったらこうなるんよ。土も苗もあんたのと同じ。味も同じ。でも、この形やと保管や使い勝手がええやろ。こらっ!わしの写真を撮るなって。撮るならイモを撮りっ。ほらみんなで分けて持って帰り!」
タナカはん、実はやり手でした。
タナカはんが育てたサツマイモ
サツマイモきんとん レシピ
【材料(4~5人分)】
・サツマイモ…500g(やや大きめ1本)
※「べにはるか」以外でも可
・水…400㎖
・本みりん…大さじ2
・キビ糖…20g
※上白糖でも可
・塩…ひとつまみ
〈スパイス〉
・ターメリック…1~2g(小さじ1/3)
※ターメリックとは秋ウコンのこと。クルクミンやビサクロンなどの成分は肝臓の健康維持にとても効果的だと言われます。もちろん色映えの意味も含めて使用。
【作り方】
- ①
- サツマイモを流水でよく洗い、2,3cm幅の輪切りにして皮を剥く。
- ②
- 鍋に水、サツマイモ、ターメリックを入れて煮る。
- ③
- 沸騰したら、弱火でさらに10分ほど煮たところで、3つほどサツマイモを取り出し、2cmほどの角切りにしておく。
- ④
- さらに10分ほど煮たら、ざるにあげる。煮汁は捨てず取っておく。
- ➄
- ざるにあげたサツマイモを、弱火で加熱しながら本みりん、キビ糖、煮汁約150㎖を入れて、麺棒や木べらなどでつぶしながら混ぜる。
- ⑥
- 仕上げに塩ひとつまみを入れ、③を加えてざっくりと混ぜる。
ポリフェノールやビタミンをできるだけ逃さず
煮汁は、その時のイモの水分によって加減し、好みで調節を。やや多めに入れるのがコツ。
今回のレシピで心がけたのはカンタンであること。芋掘り会でちびっこから年配者まで幅広い年齢層の方が楽しそうにしているのを見て、みんなができるレシピを!とそう心に決めました。材料はサツマイモ、調味料4種類のみ。道具は鍋、ざる、麺棒または木べらなど。どれも家庭に常備してそうなものばかりじゃないですか。
あとはヘルシーであること。サツマイモって栄養素の宝箱なんですね。ポリフェノール成分、炭水化物、デンプン、食物繊維、ビタミンB1、B6、C、カリウム、鉄などがわんさか。胃腸を温め、便秘解消に役立つともいいます。
ビタミンB1といえば糖質の代謝を促進させるとか、疲労回復にいいとか、いいこと尽くしの栄養素。アルコールの代謝も促し、二日酔い防止にも役立つとよく聞きます。少しでもポリフェノール成分や栄養素を摂りたいので水にさらしません。
最後のポイントは、できるだけ味や手を加えないということ。本やネットを調べると、とにかくいろんな調味料や油脂、素材を加え、あれこれと加工するものが多いことに気づかされます。
見た感じは武骨に思えるサツマイモですが、湿気があり過ぎるとすぐカビるし、気温10℃以下だと腐るし、20℃くらいから以上は芽が出るし、なかなかデリケートなやつ。その上栄養の宝庫ときているので、シンプルかつ丁寧に料理したいと思いこのレシピにしました。
きんとんと言うと王道は栗ですが、ここではサツマイモそのもの。食後やおやつにペロッといっちゃってください。飲兵衛タナカはんにもお勧めしちゃお。
おてんとさま、ご馳走様です。
Writer ライター

カワムラケンジ
Kenji Kawamura