うまみが凝縮した「秋ジャガとクミンのカリッと炒め」の巻
カワムラケンジの「スパイスな一皿」
今回は、旬の「秋ジャガ」とクミンを使ったレシピをご紹介。勝手にイモファンクラブ会頭を自称する僕ですが、畑を始めて2年目にして「秋ジャガ」のおいしさにしびれまくり。侮るなかれ「秋ジャガ」を満喫しましょう!
初挑戦の「秋ジャガ」栽培
僕が大のジャガイモ好きと知ってか、畑の師匠・ニシダさんを始め他の方々から「『秋ジャガ』もやってみたらええねん。やるんやったらはよやらんと」と言われ、通常、高槻原地区では8月の末に入れるらしいのですが、僕はかなり遅れて2022年9月6日に定植しました。
が、みなさんどうも「秋ジャガ」に手を出していないご様子。理由を尋ねると「年々秋が短くなって栽培が難しいねん。ジャガイモは温度が高過ぎても低過ぎてもあかん。去年なんか夏が長くて種が全部腐ってしもた。その上春ほど収穫量はないし。いい点としては貯蔵が楽ということくらいや」だって。
そんな。でも「農家は毎年一年生」という言葉がある(長野の蕎麦屋&蕎麦農家『せきざわ』店主・関澤賢治さんの名言!)くらいで、やってみなけりゃわからない。僕にとってはジャガイモなんてなんぼあってもいいですから。
聞くところによるとちゃんと秋向きの品種があるんですね。デジマ、アンデス赤、ニシユタカ、さんじゅう丸、他にもいろいろあるそうですが、近所のホームセンターへ行くとちょうどこの4種類が売られてました。
春に育てたキタアカリも一応は秋栽培が可能なそうですが、秋向き品種に比べると発芽が遅くてやや難しく、また、メークインは普通は秋に入れないのだとか。でも、なぜか僕が来春の種用に保管していたメークインのほうだけが発芽していて、これらも入れました。ということでデジマとアンデス赤、キタアカリとメークインを入れてみたわけです。
定植した数はデジマが40個、アンデス赤8個。キタアカリが27個、メークインが9個。畝幅は約70cm、長さ約17m×2列。元肥のみの投与です。内容は鶏糞ぼかしとパームアッシュ(パームヤシの絞り粕の焼成灰)で、NPK(肥料の重要な3要素。N=窒素、P=リン、K=カリウム)の比率は5:4:7。これは昨年『オーガニックファームhara』の末延君が教えてくれた配合です。
定植して5日後の9月11日、続々と発芽するデジマの様子。その2日後にはアンデス赤が。さらに1週間後にメークイン、数日後キタアカリが出てきました。9月24日に40g/㎡ほど追肥して土寄せ。
ぐんぐん成長する様子を見ているとワクワクが止まらない。ジャガイモは植え付けから90日と言われますが、こらえきれずデジマだけ11月16日に試し掘りしちゃいました。するとすでに直径6、7cmに!60日でもいいんじゃないの!?と思うほど。
さっそく家に持って帰って蒸して食べてみると、なんじゃこらって唸るほどのふくよかな香りと味にキョウガク!こうしてみると「春ジャガ」はさっぱりとした味わいなんですね。「秋ジャガ」はうまみが濃厚。
あかん、これはやっぱりアルー・ジーラしかない。これはインドの言葉でジャガイモ(アルー)とクミン(ジーラ)のこと。イモの味や食感をとことん尊重する超シンプルな料理です。
インド料理、アルー・ジーラとは
アルー・ジーラとはインド人が大好きな定番料理で、地域や家によって少しずつ作り方が違います。スパイスもマスタードシードやカレーリーフ、時にターメリックやチリを入れる場合もあります。コリアンダーリーフやメティリーフをトッピングすることもしばしば。
でも、これだけは絶対はずせない、と言うのがクミンなのです。しかもシード。パウダーではクミンの味が強く出過ぎてしまう。シードから油に滲み出た、そのスパイス油の香りだけが欲しいのです。クミンの香ばしさはジャガイモととことん合います。
通常、アルー・ジーラはしっとりとした食感に仕上げます。時にウェット&ドライなどと言って水を加えたり、先にボイルしてから仕上げにスパイスと油を合わせる作り方もあります。
でも今回はカリッと。その理由は単に好きだから。カリッとした食感のジャガイモってたまらなくないですか。でも、ガリガリにはしません。大量の油が必要になるのと、正直イモの味が抜けてしまうので。ところどころカリッとしているくらいがちょうどいいと思うのです。
よし、今から畑へ行ってアンデス赤も試し掘りだ!いや、待てよ。畑で料理して食べちゃおー!
「秋ジャガとクミンのカリッと炒め」レシピ
【材料(3~4人分)】
秋ジャガイモ…400g(写真の赤色のイモはアンデス赤)
オリーブオイル…大さじ3
塩…適量(岩塩がベター)
〈スパイス〉
クミンシード…小さじ1/2
【作り方】
- ①
- 秋ジャガイモを流水でよく洗い、3cm幅に切る。
- ②
- フライパンにオリーブオイルとクミンシードを入れ火にかける。クミンの周りに泡が出てきたら秋ジャガイモを加える。
クミンシードは油に入れてから加熱すると失敗がないです。じっくりと加熱することで黒くなりますが、これは焦げているわけではないので大丈夫です。熱々の油に加えると瞬時に焦げます。一度焦げると苦味が出て取り返しがつかないのでご注意を。
- ③
- オリーブオイルが秋ジャガイモ全体にまわったら火を弱め、15~20分炒める。
- ④
- 全体に火が通ってからさらに5分炒め、秋ジャガイモ全体の表面が色づきカリッとなったら火を切り、塩をふりかける。
カリッとさせるコツは、これで火が通ったからもういけそう、と思ってからさらに5分加熱すること。環境によって加熱時間は変わりますが、今回は穏やかな気候の中、ジャガイモ畑で調理して22分で完成。イモがフライパンに引っ付くことがありますが、その場合は無理にはがさずそのままにしておいてください。こんがりとなったら簡単に取れますので。
基本的に、「秋ジャガ」はデジマに限らずでんぷん価が高くなりほくほく感が増すのが特長だと種苗会社のサイトにも書いていたので、この時期に売られているジャガイモはどれもおいしいはず。
あぁ収穫まであと1か月なんて待ちきれないよ!
おてんとさま、ご馳走様です。
Writer ライター
カワムラケンジ
Kenji Kawamura