初収穫!の大根で、インドのスパイス料理サブジを作るの巻

初収穫!の大根で、インドのスパイス料理サブジを作るの巻

カワムラケンジの「スパイスな一皿」

2023.01.18

文・撮影:カワムラケンジ

サブジとは、野菜を蒸し煮したインドのスパイス料理のこと。どんな野菜を使ってもおいしいですが、今回は畑で収穫した大根を使います。ジューシー&スパイシーで寒い冬にぴったりのレシピです。

目次

念願のどでかい大根 野菜が主役のインド・スパイス料理、サブジ 大根のサブジ レシピ マスターシードは、ぜひ常用スパイスに

念願のどでかい大根

収穫した大根

ついにできました!スーパーで売ってそうなデカい大根。直径10cm・長さ30cmほどあります。重量は葉を取って約1.2㎏。見た目以上にずっしりと重たいです。うぅ感無量!

実は昨年、直径2cm・長さ15cmほどのキュートなミニ大根を育ててみたのですが、大先輩のファーマー・ニシダ師匠から「自分、初心者やから黙ってたけど、これはプランターなんかでやるやつや。一反ほどの露地栽培ではもっとでかいの入れんとなぁ」と言われ、ほんまにそうやなと思った次第。

そして2022年の夏。いざ種苗店へ行ってみたら、これが数えきれないほどの品種があって何を買えばいいのやら。そこである時、地域の農家を守る組合のメンバーでもある先輩ファーマー・谷口知広さんがこう言うのです。

「おでん大根やったらええねん。めっちゃおいしいで。出汁が染み込むのがごっつ早い。大根自体にしっかりとうまみがあるから生でもうまい。包丁の入り方が違うから」

谷口さんが手にもつ種の袋には「元祖おでん大根味福」と書かれていました。谷口さんは元大手レストラン企業のメニュー開発担当者で、通常の農家とはまた違った視点でいつもアドバイスをくれるのです。よっしゃ。僕はすぐに近所のホームセンターで「元祖おでん大根味福」を購入し畑の用意をしました。

がしかし、これが意外にもしんどかった。午前中いっぱいをかけ、鍬でさくさくと土を耕し7mほどの畝をあげ、マルチシートを敷いたところでニシダ師匠がやってきて「お、土はちゃんと篩(ふる)ったよな?」という。なんですかそれ?

「あれ、教えてなかったか。大根の根はちょっとでも石にあたるとすぐに割れてまうんや。ほら、股根のことやな。見た目と違ってデリケートなんや。30cmくらい掘って全部篩ってやらんと大根は真っすぐにでけん」

僕はうなだれるようにしてマルチシートをはがし、あらためて鍬で土を深く掘り上げ、ニシダ師匠から借りたメッシュでフリフリしていきます。で、これが何かの罰かというくらいに進まない。深さ30cm分の土を篩っても15cmに減ってしまうのです。なんでやねん。よく見ると、メッシュに残るのが石ころだけかと思いきや、水分を帯びた部分の土がどんどんと大きな団子になっていっていくのでした。おいおい、わりに合わんな。

結局、完了したのは夕方5時。たった7mの畝、たかが大根、なんて思っていましたが、実際はどえらい手間暇がかかりました。あぁ久しぶりに筋肉痛です。胸板を厚くしたい人、農業いけますよ。

野菜が主役のインド・スパイス料理、サブジ

今回は、大根のサブジを作ろうと思います。前回に続いてインドのスパイス料理です。

サブジとはヒンディー語で、インドの主に北部の野菜の総菜を指します。材料もスパイス使いも実に多様。シンプルに葉物と一種のスパイスでさっと炒めたり、根菜を複数のスパイスとともに炒めてから蒸したり、後半に水分を加えて煮るレシピもあります。時にはグレイビー(玉ネギなどで作ったソース)と合わせるレシピも。主にベジタリアンの料理と思われがちですが、実際には肉や魚のカレーなどの副菜としてもよく食べられています。

サブジの最たる特徴は、常に一種の野菜が主役となることです。オクラ、ジャガイモ、ナス、その他の根菜、葉物などなど。時にはもう一種の野菜を加えることもありますが、それは主役を引き立てるための脇役です。主役の味を楽しむ、という明確さこそがインドのスパイス料理全体の特長とも言えます。

スパイス使いは例にもれず超多様ですが、基本は4パターン。スタータースパイスのホール(料理の最初に使うスパイスの原形)にクミンもしくはマスタードシード、あるいは両方、あるいはさらに別のスパイスを加えるかです。さらに加える場合、ターメリックやコリアンダーなど各種パウダー、さらに何かしらの酸味を加えることが多いです。例えばスパイスのアムチュール(ドライマンゴー)や果実のタマリンド、ライム、レモンなど。

で、前回のレシピではクミンシードを使ったので、今回はマスタードシードも使いました。

大根のサブジ レシピ

大根のサブジ レシピ

【材料(4人分)】

・大根(正味)…700g
・サラダ油…大さじ3
・玉ネギ(中サイズ)…1個(約270g)
・ニンニク(みじん切り)…10g
・ショウガ(みじん切り)…10g
・塩…小さじ1強
・レモン果汁…大さじ1

〈スパイス〉
・マスタードシード…小さじ1(約3.5g)
・クミンシード…小さじ1
・ターメリック…小さじ1
・レッドペパー(粗挽き唐辛子でも可)…小さじ1/3
※もっと辛くしてもおいしいです。
・コリアンダーリーフ…適量
※お好みで。

【作り方】


大根の皮を剥き、1,2cmの角切りにする。葉付きであれば加えてもおいしいです。

大根のサイズ今回はやや小型のおでん大根を使用。これで700g。大型なら半分でOK。通常の青首系でもおいしくできます。

大根をカット

フライパンに油とマスタードシードを入れ火にかける。マスタードがプチプチとして揺れだしたらクミンシードを入れる。

スパイスを熱するマスタードシードが弾けるので蓋をするのが安全。

玉ネギ、ニンニク、ショウガを中火で炒める。焦がさないように時折混ぜる。
15分ほど炒めたらターメリックとレッドペパー、塩を加え、よく混ぜる。
大根を加えよく混ぜたら蓋をする。焦がさないように時折混ぜる。
10分ほどして大根が柔らかになったらレモン果汁を入れて混ぜ、火を切る。皿に盛り付け、コリアンダーリーフをトッピングする。

※青首系大根の場合はもう2,3分長く蒸してください。
※葉を加える場合は5~7分蒸した頃に加えてください。

マスターシードは、ぜひ常用スパイスに

マスターシード

マスタードシードとはアブラナ科アブラナ属の種のこと。カラシナや小松菜、白菜なども同じ仲間です。

また、クミンシードと並ぶインド・スパイス料理の一番の常用スパイス。ですが、スーパーなどでは意外に入手困難のよう。ネットならなんぼでもでてくるのですが。大別してイエロー、ブラウン、ブラックと3種類あり、インド料理的に最もポピュラーといえるのはブラウンマスタードシードでしょう。使い方が多様なので、今後もご紹介できればと思います。

名前からして辛そうですが大丈夫。油で加熱してから使うので辛味はなく、ナッツのような香ばしさが出ます。ちなみに辛さの理由については、僕が主宰していた「スパイスジャーナルvol.10」の「スパイス宇宙の旅」(近畿大学薬学部・多賀淳先生とのコラボ研究会)で、シニグリンという前駆物質(配糖体)が酸素に触れることで生まれる、という話があり、大根やワサビも同様とのことでした(ワサビもアブラナ科)。

大根のインド・スパイス料理って想像とはまったく違って、濃厚なうま味が出るので人気があります。僕が三重・松阪でやっていたインド料理店「THALI」(1998~2001)でもよく使いました。みなさんもぜひ作って食べてみてください!

おてんとさま、ご馳走様です。

Writer ライター

カワムラケンジ

カワムラケンジ

Kenji Kawamura

ライター&スパイス料理研究家。『スパイスジャーナル』編集長。幼少の頃は近所の家々を食べ歩き、16歳から数々の飲食の現場で働き、ライターに。昨年からは夢だった畑も。「うまいものがあって、おもしろい人がおったらどこへでも!」。www.kawamurakenji.net

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