主役はキャベツ!超絶カンタン大人向けの麻辣炒めの巻

主役はキャベツ!超絶カンタン大人向けの麻辣炒めの巻

カワムラケンジの「スパイスな一皿」

2023.02.16

文・撮影:カワムラケンジ

今回は大人向けのスパイスな一皿を提案します。麻辣醤を使うのでシビ辛。そしてキャベツの歯応えや甘みと相性抜群。冬はお腹がポッカポカ、夏は汗ダーラダラ。さぁみなさん、ビール、水、コーラ!?をご用意ください~

目次

キャベツって本当にすごい 選んだ麻辣醤は 「超絶カンタン大人向けのキャベツ麻辣炒め」レシピ 花椒の効能

キャベツって本当にすごい

僕はキャベツへの思い入れが人一倍強いかもしれません。10代から20代まで勤めていた中華料理店での一番人気はキャベツの歯応えと甘みがしっかりと残る餃子でした。仕込み方に少しコツがあって、葉物専用の包丁で繊維をつぶさずにみじん切りにするのです。
一見すると単純にトントントン、と叩いているように見えますが、実は包丁の頭を微妙に下げ角度をつけることで切り刻んでいるのです。でないと1時間後に水分がだだ洩れて、うま味も歯応えも消えてしまうから。

ライターになってからはキャベツの特集を組んだこともあります。有機・低農薬野菜の宅配企業が発行するタブロイド新聞で、静岡のある農家を訪問。畑に植わったままのキャベツを縦半分に切り、バックには雪化粧した富士山がどっかーん。
専門農家ならではの面白い知恵もたくさん聞かせていただきました。内側の白い部分は天日干しすると1,2日で青くなる。緑の部分を生ジュースにして飲むと胃にいい。キャベツのビタミンCやB群は水溶性のため細かく切ってから水につけない、などなど。

はい、そして2022年秋、今度は栽培に挑戦したというわけです。キャベツはとてつもなく種類が多くて、大手種苗メーカーのサイトを見ると47種類。その中で僕は中生から晩生の寒玉系の苗を購入。冬どりなのでトウ立ちの心配がそれほどなく、畑での日持ちがいいのも魅力です。

畑19月27日、苗を定植。

畑212月11日、収穫直前。

今回、色んな料理法を試してみたら、こんなに甘いのかってくらい甘くて、あらためてキャベツの凄さに感動しました。
青梗菜やブロッコリー、小松菜などアブラナ科はどれも特有の強い甘みと香りがありますが、同じ科でもキャベツはそこに歯応えもついてくる。そして生、蒸、焼、煮など料理法もなんでもござれ。
キャベツは色んな品種を通年楽しめるのもいいところ。冬のキャベツは肉厚で張りがあってバリボリ食感もたまりません。柔らかで香りが高い春キャベツも楽しみです。キャベツのことますます好きになっていく~

こんなにパワフルでタフなやつだから、どんなに濃い味付けにも耐えてくれます。生食の際はマヨネーズやウスターソース。ふんだんの肉と共にバーベキュー。お好み焼きのこってりソース。ロールキャベツならトマトベース。酢漬けにしてハーブを利かせても楽しめます。

選んだ麻辣醤は

今回は思い切って、激しくシビ辛の四川系でいきました。さらにスパイスは素材そのものでなくすでに加工済みの調味料を。

2022年夏、ご近所のCさんから中国産のスパイスや調味料をたくさんいただきました。彼女は外国人相手の日本語教師なのですが、以前四川省隣の西安に留学していたそうです。で、僕がスパイス料理研究家ということで、Cさんが中国の友人に声をかけてくれてあれこれ送ってもらったというわけです。
その中で印象的だったのが日本でも少し前に流行した麻辣味のペーストでした。本場中国のそれは「麻辣香鍋(マーラーシャングォ)」というものでした。

麻辣香鍋中国でイケてる?麻辣香鍋

「基本的にはこのペーストに水を加えて、色んな材料を入れた鍋的な料理にするのですが、シンプルな炒め物の調味料としても使えます。説明書きには、ニンニクや生姜を炒め、好みで唐辛子をさらに加え、好みの材料を炒める、と書いてます。麻婆豆腐、辣子鶏、麻辣水煮魚にも使えるって」とCさんがトランスレーション。
うぉ~料理名を聞くだけで興奮してくるのは僕だけでしょうか!

さっそく自家栽培のナスやトマト、万願寺トウガラシ、スーパーで買ったタケノコの水煮などで鍋や炒め物にすると激しいシビ辛でもう汗だく。でも、ちゃんと唐辛子の香りがあるもんだから箸が止まらない。唐辛子ってナス科だから、ものによってはほんのりと甘い香りがするのですね。

これと同様のモノを探したんですけどなかなか見つからなくて。で、道頓堀を歩いていたらたまたま中国食料品店を見つけて、店員さんに相談すると「同じ四川省にあるメーカーのもの」といってこの「吉香居」製を勧めてくれたわけです。
家の近所のスーパーへ行くと日本のメーカーの麻辣醤がたくさんありました。各社それぞれで個性がありそう。片っ端から試してみたいです。

「吉香居」の麻辣醤本場四川の「吉香居」の麻辣醤

「超絶カンタン大人向けのキャベツ麻辣炒め」レシピ

レシピ

【材料】(2人前)

キャベツ…200~250g(1/6個)
※春キャベツの場合は柔らかくなりすぎないようにご注意を。
サラダ油…大さじ1
麻辣醤…小さじ1
豚肉ロースこま切れ…100g
※通常の薄切りでも可
オイスターソース…小さじ2
濃口醤油…小さじ1程度
レモン果汁…小さじ2

【作り方】

キャベツは芯を取って、4,5cmのぶつ切りにする。
フライパンを熱しサラダ油を入れ、麻辣醤を素早く炒める。

麻辣醤を炒める麻辣醤を小さじ1にして、オイスターソースの代わりに甜麺醤(テンメンジャン)にするとホイコーローになりますよ。

豚肉を加えて、ほぐしながら中火で炒める。火が半分ほど通ったらキャベツを入れて混ぜる。
キャベツがしんなりしたらオイスターソースと濃口醤油、レモン果汁を加えて手早く混ぜる。

花椒の効能

今回使った麻辣醤(マーラージャン)の麻とは、花椒(ホワジャオ)の痺れる辛みのこと。辣は唐辛子の辛み。これは四川やその周辺地域の伝統的な味の組合せです。

花椒とは日本の山椒と同じミカン科サンショウ属ですが、中国のそれは同属異種の華北山椒(カホクザンショウ)というものです。この赤い完熟の実が自然に破裂し、その果皮のみを乾燥させたまさにスパイスです。
サンショウ属は、日本、朝鮮半島、中国、ネパールなど主に東アジア一帯に存在し、最低でも250種類以上あるといいます。実際はもっともっとあるでしょう。

僕はネパール山中に住むあるお宅へ山椒の取材に行ったことがあります。向こうでは山椒のことはティンブールとかティムルなどと呼んでいます。 ティムルは庭園にも裏山にも一杯自生しており、中国同様に乾燥品と日本のようにフレッシュも使っていました。料理法もスープやカレー、アチャール(漬物的なもの)、チャトニ(ソース的なもの)など実に幅広いです。
ネパールでは山椒に対する薬効の期待がひと際強く感じられました。料理に入れることで、寒い時期に身体を温めたり、新陳代謝機能を亢進させ元気になると。それ以外ではネパール人なら誰もが知っていると言う伝統的な薬「SANCHO(サンチョ)」の原料にもなっているというので、そのメーカーへも取材に行きました。
サンチョとは「Feel better」、つまり「元気になる。気分が良くなる」という意味。複数のハーブを配合したエッセンシャルオイルで、風邪をひいた時お湯に5,6滴入れて飲んだり、鼻詰まりや喉が痛い時に鼻の下に塗る、虫刺されに塗る、などと使い方は様々。
「ヒマラヤあたりの山岳民族の間に伝わる伝統薬で、今もなお原料は主にヒマラヤ付近で採集している」といいます。ひぇ~スパイスロマンよ、どこまでも舞い上がれ。

おてんとさま、ご馳走様です。

Writer ライター

カワムラケンジ

カワムラケンジ

Kenji Kawamura

ライター&スパイス料理研究家。『スパイスジャーナル』編集長。幼少の頃は近所の家々を食べ歩き、16歳から数々の飲食の現場で働き、ライターに。昨年からは夢だった畑も。「うまいものがあって、おもしろい人がおったらどこへでも!」。www.kawamurakenji.net

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