古典と前衛の希少なグランメゾン。大阪・淀屋橋『プレスキル』

地下鉄淀屋橋駅直結の商業施設、淀屋橋odona2階の『プレスキル』。シェフの佐々木康二さんは、ヌーベルキュイジーヌの時代を牽引した巨匠・アラン・シャペルやその弟子の上柿元 勝シェフの系譜を受け継ぎ、当時の料理も作り続ける人物。古典と前衛が入り混じる料理をいただける希少なグランメゾンです。

駅直結のグランメゾン

近年のレストラン業界は、とかく小規模店の多い時代。店主一人で賄えるくらいの広さの店でわいわいする楽しさはもちろんありますが、ここで紹介したいのは、現代に希少なグランメゾンの存在です。
※グランメゾン…料理のみならず、しつらえやホスピタリティにおいても最高峰のレストランのこと。

なかでも大阪・淀屋橋の『プレスキル』は山梨県にある日本最古のワイナリー「まるき葡萄酒」が運営するグランメゾン。地下鉄に直結するビルの2階、駅のホームからわずか2〜3分足らずで最高のサービスに迎えられ、紺碧(こんぺき)のふかふか絨毯を踏んだ瞬間、気分が昂(たかぶ)ります。

プレスキル内観
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名門『アラン・シャペル』の系譜

シェフを務める佐々木康二さんは、21歳の時に神戸ポートピアホテルの伝説のレストラン『アラン・シャペル』に入店し、シャペル氏の弟子である上柿元 勝さんに師事。その後、長崎『ハウステンボス』で16年鍛え、古巣に錦を飾るカタチで41歳の時に『アラン・シャペル』のシェフに就きました。

プレスキル佐々木康二シェフ
シェフ、佐々木康二さん。70年代〜80年代のフランス料理シーンを席巻し「厨房のダ・ヴィンチ」と謳われたシャペル氏や“ヌーベルキュイジーヌ”と呼ばれる時代の料理を直接知る、最後の世代でもあります。
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継承し、伝え、未来に繋ぐ

『プレスキル』のメニューには、往時の『アランン・シャペル』でも愛されていた「若鶏のヴェッシー包み」(5日前までの要予約)を常時オンリスト。これはフランス・ブレス産の若鶏を豚の膀胱で包み、その中にフォワグラなどを使う贅沢なクリームソースを入れて加熱し、鶏を蒸し焼きにする料理です。技術や経験のみならず、ゲストの前でさばくメートル・ドテル(サービス係)の腕も問われる、まさにグランメゾンの料理。

クラシックに興味のある若手料理人なら憧れる料理ですが、手間と時間とコストがかかり、フランス本国でさえ技術が廃れゆく現実。そうした中、提供し続けるのは「誰もやる人がいないと、作れる人がいなくなる。残すためには誰かがやらないと」と佐々木さん。次世代に繋ぐための使命感だといいます。

真骨頂は古典と前衛の融合

こうした80年代の料理に出合うことができ、クラシックな面が語られがちですが、『プレスキル』の真骨頂はクラシックとモダンを織り交ぜた絶妙な塩梅の料理です。 ヴィヴィッドな色彩美で心が華やぐ盛り付けや、国産素材との融合、季節感、そしてかつて佐々木さんが経験を積んだリヨン仕込みの酸の使い方で、フランス料理らしい重厚さがありながら最後まで飽きずに楽しめる仕立てに誰もが酔いしれます。

さらにホテル時代からの仲間だというメートル・ドテル陣も最高。デザートの「クレープシュゼット」は季節のフルーツを用い、目の前でクレープを焼いてデザートを完成させる名物です。このような「デクパージュ」と呼ばれるゲストの前でのサービスやワゴンで運ばれる宝箱から好きな菓子を選べるミニャルディーズなど、グランメゾンたるワクワクが、ここそこに散りばめられています。

プレスキル料理
昼10285円のコースより、ブリと大根。ブリはペルノー(ハーブのリキュール)やディルなどでマリネ。4色の大根はヴィネグレットソースで和えたり、酢入りの湯で茹でるなどして色を美しく仕上げています。大根×ブリの取り合わせが冬の和食を思わせますが、酸みとリキュールの香りはまさしくフランス料理。
プレスキル料理
夜18150円のコースより、メインの猪鹿庵(じびえあん)鹿肉のポワレ 山ぶどうのジュ。鳥取県の猪鹿庵とはジビエの食肉処理施設。処理の技術と鮮度に佐々木シェフが絶大な信頼を寄せています。鹿肉はオーブンで出し入れして火を入れ、バターを回しかけたクラシックな技術でロゼ色に。シカのジュ(だし)と山ぶどうで作る甘酸っぱいソースが絡みます。紫白菜やカブなど季節の野菜と。
プレスキル料理
佐々木さん得意のパイ包み焼き。大阪湾で採れた舌平目と香佳ガニのパテ。『アラン・シャペル』時代、パイを学ぼうとデザート部門でも修行。当時、厨房には元『オ・グルニエドール』の西原金蔵さんや『ラ・ピエール・ブランシュ』の白岩忠志さんがいたエピソードにも歴史を感じます。(撮影:塩崎聰)
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プレスキルのショップ
以前は『まるき葡萄酒』のワインをバー遣いで楽しめたショップ。現在は手土産にちょうどいい焼き菓子や東京の姉妹店『プレスキル・ショコラトリー』のショコラなどを販売。
プレスキルのショップ
以前は『まるき葡萄酒』のワインをバー遣いで楽しめたショップ。現在は手土産にちょうどいい焼き菓子や東京の姉妹店『プレスキル・ショコラトリー』のショコラなどを販売。
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子どもとごはんvol.1:個室で“お子さまコース”大阪・淀屋橋『プレスキル』

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