京都・四条河原町の『割烹 三栄』で鱧三昧

京都・四条河原町からすぐの裏路地に佇む『割烹 三栄』で初夏から秋だけに供される「鱧旬菜御膳」は、毎年心待ちにする人が多い人気メニュー。冬から春にかけては、グッと気軽な昼の「はす饅頭(まんじゅう)御膳」が好評です。

昭和初期の風情漂う設え

網代に黒文字の枝を組み合わせた天井に、檜のカウンターと長い年月で艶を増した百日紅(さるすべり)の柱。創業は昭和9年。四条河原町の旧阪急百貨店裏という一等地に、昭和9年に創業した割烹は、花街の旦那衆の目をも楽しませた往時の雰囲気が色濃く残っています。

「宮川町へと繰り出す旦那衆に育てられた店だと、祖父母から聞いています」。現在店を預かる店主・清水敏夫さんは三代目。古き佳き店を長く繋ぐために、時代に応じた積極的な変革を進めています。

京都『三栄』外観
軒下に掲げられた『雀(すずめ)寿司』の古看板は、初代が寿司割烹を営んでいた時のもの。
京都『三栄』店内&店主
大阪の名料亭『つる家』で腕を磨き、30年前から家業に戻った清水さん。
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初夏から秋だけの鱧三昧 

その変革のひとつが、15年前から始めた「鱧旬菜御膳」です。通常の鱧づくしコースから5000円近く抑えた価格。それでいて、定番の鱧の落としや鱧しゃぶに加え、天ぷらや寿司などの鱧料理が、全9品中の6品を占めるという充実した内容。
提供開始からたちまち人気に火がついて、すっかり定番コースとして愛されています。

メインの鱧しゃぶは、炙った鱧の骨を昆布や秘密のだしでコトコト3時間炊いたスープがベース。焼きたての鱧の照り焼きにキュウリを合わせた、うざくならぬ鱧ざく的な一品や、低温でじっくり2時間揚げるカリカリの骨せんべいなど、メインの間を埋める副菜まで、さりげなく手が込んでいます。

京都『三栄』の鱧の照り焼きとキュウリの酢の物
鱧の照り焼きとキュウリの酢の物。熱々の照り焼きに冷たい土佐酢の酸味を加えることで、メリハリある味わいにしています。
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京都『三栄』鱧の骨せんべい
鱧の骨せんべいは、来店前に揚げ直してカリッとさせてから提供しています。
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京都『三栄』鱧の落とし
目の前で骨切りをして熱湯にくぐらせる作り立ての鱧の落としは、ふわふわ。定番の梅肉で頂きます。
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京都『三栄』鱧しゃぶ小鍋
鱧しゃぶは小鍋での提供です。味がしっかり付いているのでそのままで。好みでスダチを絞って。
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京都『三栄』鱧小袖寿司
鱧小袖寿司はたくあんとキュウリの細巻き付き。
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「鱧旬菜御膳」は11月末までの限定コース。松茸シーズンが始まる9月頃からは「鱧しゃぶ小鍋」に松茸を追加できる至福のオプションを追加できます。

はす饅頭御膳は初冬から早春まで

「鱧旬菜御膳」に続いて清水さんが始めた昼限定の「はす饅頭御膳」もお値打ちです。

前菜に造り、京野菜の炊合せ、揚げたての天ぷら盛合せ、それにれんこん饅頭と鯛のほぐし身やエビをあしらった華やかなちらし寿司が付いて、なんと全7品で3630円。一見さんでも老舗の味を気軽にいただけると、「鱧旬菜御膳」に並ぶ人気です。

京都『三栄』のはす饅頭御膳
片栗粉などのつなぎを使わないはす饅頭は、とろける柔らかさです。
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「春になったら、京都・西山の筍を味わい尽くすコースに切り替わりますよ」と清水さん。店舗の老朽化に伴い、近年中の移転を検討している最中だそう。昭和の風情残る店内で旬味溢れるコースをいただけるのは、あともう少しだけです。