冴える揚げ技に惚れる京都『ぎをん 天婦羅 天宗』

清流を泳いでいるかのような鮎や、黒コショウがガツンと香るホタルイカ。京都・花見小路にある『ぎをん 天婦羅 天宗』では、優美な揚げ技と適度な遊び心が光る、季節感たっぷりの天ぷらを堪能できます。

祇園花見小路の天ぷら専門店

国内外の観光客で賑わう京都・花見小路通を四条通りから南へと下がり、3筋目を西に入った南東角。大通りとは打って変わって静かな路地に、『ぎをん 天婦羅 天宗』はあります。

格子戸を引いて中に入ると、吹き抜けの高い天井に、内庭の篠竹を借景にした朱塗りのカウンター。中央に鎮座する銅の揚げ鍋が、いかにも専門店らしい風格を放っています。

京都『天宗』外観
京都『天宗』店内
ゆったりとスペースを取った、居心地の良いカウンター席。
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定番と変化球の心地よいバランス

昼夜共に3コースずつありますが、初めての方には昼の7000円コース「蘭」をおすすめします。

天ぷら11品に加え、天茶や天丼などのご飯物までしっかりいただける結構なボリューム。エビや椎茸などの定番ネタを中心に、この道30年を超えるベテラン・冨山晴雄料理長ならではの変化球を数品織り交ぜられた内容。天ぷら専門店ビギナーでも、気負わず楽しめます。

京都『天宗』稚鮎の天ぷら
夏の定番、琵琶湖の稚鮎。ヒレがピンと立つように揚げられた鮎は、まるで生きているかの様。
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京都『天宗』肥後ナスと椎茸の天ぷら
細やかな飾り庖丁が見事な肥後ナス。ふっくら身厚な椎茸は、この日は徳島から。
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京都『天宗』ホタルイカの天ぷら
中からとろけ出るワタが堪らないホタルイカは、塩とたっぷりの黒コショウで。ビールが抜群に合います。
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京都『天宗』伏見唐辛子と新ジャガの天ぷら
伏見唐辛子や生麩など、京都らしい食材も登場。新ジャガはバターとカツオ節が香る土佐醤油で。明太子&バターで出すことも。
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夜は遊び心がさらに加速

「夜はもっと色々と遊んでいますよ」と冨山料理長。来店してからのお楽しみということで詳細は避けますが、煮ツメを絡めた穴子や、ホワイトアスパラの天ぷらが、エキサイティングな演出で登場します。

京都『天宗』ホワイトアスパラの天ぷら
ホワイトアスパラの天ぷら。生ハムとパルミジャーノ・レッジャーノの旨みある塩気がアスパラの甘みを引き立てます。
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なかでも夏の夜の一番人気は、開店当初からの名物・鱚(きす)。揚げネタとしては定番ですが、異なるのはその揚げ姿。身と骨が繋がった想定外のビジュアルに目を奪われます。

揚げたてを口にすれば、身はふっくらとしながら骨はカリッと香ばしい煎餅状態。「身と骨が同時に揚げ時を迎える一瞬があるんですよ」。繊細な見極めを何でもないことのように話す冨山料理長に、熟達者の余裕が漂います。

京都『天宗』鱚の天ぷら
カリカリの中骨は、ぜひとも塩で。運が良ければ昼のコース「蘭」に登場することも。
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2階の個室は特別な夜に

2階には、5名まで入れる小さな個室を備えています。専用の揚げ場をコの字型に囲む、貸し切り気分を味わえる造り。接待や記念日の食事など特別な時間を過ごすのにうってつけの空間です。

京都『天宗』の個室
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祇園の中心街に位置しながら、お昼なら5000円からコースをいただける有難い価格設定。京都らしい風情と、見惚れる職人技を気軽に堪能できる、貴重な専門店です。