京都・四条河原町『たん熊北店 本店』の雅なる京料理

美しい骨切りゆえのふわりと口どける鱧や御所車の車輪に見立てた青柚子など、繊細な仕事が見事。昭和3年創業の名店による京料理は、伝統の素晴らしさを実感できる仕立てです。

文人墨客にも愛された京料理店

阪急京都河原町駅から歩いて8分ほど。河原町と木屋町をつなぐ小路に建つ店は、昭和3年(1928)創業。谷崎潤一郎や吉井勇などの文人墨客が愛した店としても知られている、京料理の名店です。

『たん熊北店』の屋号は、創業者の栗栖熊三郎さんの「熊」と、熊三郎さんの修業先『たん栄』の「たん」にちなんだもの。現在は孫に当たる栗栖正博さんが、3代目として厨房を取り仕切っています。

『たん熊北店 本店』外観
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『たん熊北店 本店』のカウンター
単品をいただけるのはこちらのカウンター7席のみ。正博さんの隣に立っているのは次期4代目として修業中の息子・熊一(ゆういち)さんです。
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『たん熊北店 本店』の個室
個室は全6室あります。
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心尽くしの昼懐石が1万円以下で

70品もの品書きから一品料理を自由にいただけるカウンター割烹としても有名ですが、慣れない方には断然お得な昼限定の雪会席をおすすめします。

華やかな前菜盛合せから始まり、造り、吸物など水物も含めて全8品で1万円未満。「日本料理の伝統的な味と仕事を身近に感じてほしい」という栗栖さんの気持ちが込められたコースは、見応えも食べ応えもある充実した内容です。

『たん熊北店 本店』雪会席の八寸
波模様が描かれた蒔絵の折敷と団扇を模した朝顔柄の器が夏らしい、雪会席9614円の八寸。小ナスの田楽やエビの旨煮、鱧の小袖寿司、イチジクのゴマダレがけなど季節感溢れる9品が盛り込まれています。
『たん熊北店 本店』雪会席のお造り
お造りは蛍手(ほたるで)と呼ばれる透かしを施した白磁の器に氷を敷き込んだ涼やかな装いで登場。この日は愛媛産の鯛と淡路島産の鱧の2種。繊細な鱧の骨切りだけでなく、あしらいに飾られた螺旋状のよりニンジンやより大根などのさりげない細工に、丁寧な仕事振りが滲みます。
『たん熊北店 本店』雪会席の椀物
椀物は鱧の葛たたき。滋味深いだしの旨みとなめらかに舌を滑る鱧のふわりとした口どけにうっとりします。中心をくり抜いた管ゴボウや御所車の車輪に見立てた青柚子など、こちらも美しい細工のあしらいが印象的です。
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昼限定の鰻御膳は1日10食

数年前から始めたという、夏季限定の鰻御膳も人気です。こちらは雪会席に近い前菜盛合せに、じっくり蒸してから焼き上げた鰻の蒲焼きとご飯、肝吸いにデザートが付く内容。

贅沢にも鰻は1尾丸ごと。表面はパリッと香ばしく、中はふっくらとした絶妙な焼き加減に熟達した技を感じます。

『たん熊北店 本店』鰻御膳の鰻蒲焼
鰻御膳は6~9月限定で7700円。鰻蒲焼はお好みでタレを足したり、粉山椒を振って。肝吸いが苦手な方は、予約時の連絡にて赤出汁に変更可能です。
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加えて鰻御膳は、デザートがちょっと個性的。小さなパフェが登場です。

上にのっているのはバニラと抹茶のアイス、ビワのコンポートで、グラスの底に潜んでいるのは、昔からのファンが多い豆大福。豆大福の生地にたっぷり練り込まれた赤エンドウ豆の塩気が甘みを引き立てます。

『たん熊北店 本店』鰻御膳のデザート
鰻御膳を締めくくる、予想外のミニパフェ。瑠璃色のグラスにビワの橙色やバニラアイスの白が映えています。
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今回ご紹介した鰻の蒲焼や豆大福は手土産としても購入できて、地方発送も可能。そのほかにも黒毛和牛の牛そぼろや初代考案時から味を守り続ける名物の丸鍋なども多数販売。遠方の知人などへの味な便りとして覚えておくと、便利です。