江戸時代から続く老舗酒蔵、姫路・夢前町『壷坂酒造』の直売所

「雪彦山」や「金壺」などの日本酒銘柄で知られる『壷坂酒造』の創業は1629年。現在の場所で醸造を開始したのは1805年。約220年の歴史が重ねられた風情ある蔵には直売所が併設され、ドライブやツーリング、雪彦山トレッキングの立ち寄りスポットとしても人気です。

のどかな里山にある歴史ある酒蔵

姫路市中心部から県道67号線を車で北上すること約40分。のどかな里山風景が広がる夢前町に、後方にいただく雪彦山の名を冠した日本酒で知られる『壷坂酒造』があります。築220年ほどの風情ある酒蔵は、姫路市「都市景観重要建物」に指定されていて、歴史の重みが感じられながらもどこか懐かしい温かい雰囲気が漂っています。

『壷坂酒造』の外観
姫路市香寺町で酒造りを始め、1805年に現在の地へ移転。6代目当主が建設した酒蔵は、価値ある歴史的建造物であり、『壷坂酒造』を支える発酵環境の源です。
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播磨のポテンシャルを込めた酒造り

迎え入れてくれた16代目当主の壷坂良昭さんは、東京農業大学・醸造科学科を卒業後すぐに実家へ戻り、この伝統ある蔵を継ぎました。「一切修業もせずに杜氏になりました。その頃は阪神・淡路大震災の影響を受けて経営的にも厳しく、前の杜氏さんは辞められていたので教わる人もいない。最初は大学の教科書を見て酒を造ったんですよ」と当時の苦労を明かします。

試行錯誤しながら酒造りをする日々の中で、「播磨という土地の気候や、米や水の良さ、そのポテンシャルを込めた酒を造りたい」という思いが強くなり、先代の時に醸されていたような線の太い力強い酒造りを目指すことに。「みんなと同じような管理されたものを造ったら、うちのような小さな蔵の存在意義がなくなってしまう」と、現杜氏の則政義春さんとの“二人杜氏”スタイルで、他の播磨の酒蔵の杜氏に教えを乞うなどして昔ながらの自然発酵による酒造りに奮闘してきました。
2017年には“二人杜氏”スタイルを解き、壷坂さんは異業種交流や地域活動へ時間を割くことができるように。今や“播磨の酒蔵”の旗振り役としても活躍されています。

『壷坂酒造』ご主人・壷坂良昭さんが仕込む様子
『壷坂酒造』蔵元の壷坂良昭さん。江戸時代から続く蔵の跡取りとなる自覚は少年期からあったそうです。
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日本酒の試飲も、蔵見学も可能

『壷坂酒造』の主力銘柄は、「雪彦山」と「金壺」。
2つの違いは「雪彦山」が酒造好適米、「金壺」が飯米で醸すことです。蔵に併設された直売所では試飲もでき、「純米吟醸 雪彦山 無ろ過原酒」と「しぼりたて原酒 金壺」を比較してみれば、「雪彦山」は優しさ、「金壺」は力強さが感じられます。「この辺りは鹿が走るし、猪も出る。地元で好まれる獣肉に合う味に醸しているのが『金壺』です」と壷坂さん。なるほど強い飲み応えは、人によっては間違いなくハマる味。地元では“壷坂の味”親しまれる「金壺」ですが、神戸では上品で優しい「雪彦山」の方が人気とか。そんな背景を壷坂さんや女将さんに聞きながら自分好みの1本を選べるのが、蔵の直売所ならではの醍醐味です。

『壷坂酒造』の雪彦山と金壺
華やかな香りが特徴の「純米吟醸 雪彦山 無ろ過原酒」と、あまり流通されないが人気は高い「しぼりたて金壺」。
『壷坂酒造』の純米 雪彦山 鬼辛
「純米 雪彦山 鬼辛」は、日本酒度+15、アルコール度数17%。9号酵母由来の甘い香りながらピシッとした辛口キレ味。
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売り場には、日本酒のほか、柚子、いちご、ブルーベリーを使用したリキュールも。その他、蔵人や杜氏が実際に使っている前掛け、蔵オリジナル保冷バックやきき呑口なども販売されています。
また、案内する人がいれば蔵見学も可能とのことですが、必ず見学したい場合は電話で事前予約が確実です。駐車場もありドライブやツーリングで寄りやすい立地ですが、バス停も近いので、試飲したい方は姫路駅から雪彦山行きバスで訪れることをおすすめします。

『壷坂酒造』の直売所。客と女将さん
初めて訪れる人、雪彦山トレッキング帰りの人、地元の人などが気軽に立ち寄れる店内。地域のコミュニティースペースとしても親しまれています。
『壷坂酒造』の店内販売所
ここでしか買えない日本酒やオリジナルグッズが所狭しと並んでいる直売コーナー。お気に入りとなる1本やお土産に最適な品がきっと見つかるはず。
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amakara.jp編集部

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