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大阪・野田阪神『フランス料理 大西亭』で、一級品を仲間とわんぱくに味わう。

フードライターなどという職業に就いていると「どこか美味しい店ない?」と聞かれることしばしば。相手も飲食業関係者や、海外経験豊富な人や、食べ込んだ食通が多いもの。そうした”プロの食いしん坊“にお勧めすることにしているのが『フランス料理 大西亭』です。私自身フランス料理初心者の頃から色々な味を魅せてもらった一軒です。

下町の路地の長屋にて

『大西亭』がある、野田阪神駅の周辺は、大阪の下町の昔ながらの情緒が残り、どこか懐かしい空気に包まれています。ここがシェフの大西敏雅さんの地元です。

偶然辿り着く、なんてことはあり得ない細い路地にある『大西亭』。1階が店舗。すぐそばの高架を阪神電車が走っている。
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ディナーコースは6500円+α

取材の時、値段をシェフに確認するたび、我が耳を疑います。大阪を代表する『大西亭』のディナーコースの価格は6500円なのです。「このクオリティーで? もっと高くてもおかしくないのだけれど?」と首を傾げつつも、お客としては嬉しい限り。

構成はアミューズに、前菜とメインディッシュ。食後にチーズかデザートのどちらかを。コーヒーも付いています。
メイン料理は6種類ほどあるなかから、食べたいものを1つ。毎回「どうする?どれにする?」とメニューを眺めて迷うのがお決まり。というのもなかなかお目にかかれない食材のオンパレードだから。
例えば秋から冬なら、マニア垂涎のジビエ。猪、ヒグマ、蝦夷鹿、真鴨、野うさぎ、シギなど。これらはほんの一例です。
「新潟の真鴨は、米をついばんでいるから身が甘いんですよ」。
「関西には10羽しか入ってないフランス産の森バト、届いてます」など。
こちらで初めて食べさせてもらった食材も多く、大西さんの解説に驚かされるやら勉強になるやら。以来、ピンの食材はこの店に行けば食べられる、と覚えて通っています。

「コロナのあと特にですかね、多少利益が減ってもお客さんが満足してくださる一流の食材を使って、喜んで帰っていただくのが一番じゃないかと思うようになりました」と。ジビエ以外の魚もワインもチーズも銘品を揃えて。もちろんフランス料理初心者でもウエルカムなのが下町のビストロの懐の深さです。

しかしどう考えても6500円のコースでは出せない、高級食材。ということで、選んだものによって+4000円、+5500円などのアップ料金が付きます。それでも、飲んで食べて1人12000円ほど。

さらに「チマっと盛るのは趣味じゃない!」とばかりの豪快なポーションが『大西亭』の真骨頂です。アップ料金にしたとて、この量盛れば赤字じゃないです?と心配になるほど。「+α」に値段以上の価値があり、その値打ちを知る人たちがこの店の常連客です。

リーガロイヤルホテルの最高峰メゾン『シャンボール』出身の大西さん。国内外の賓客に出す最高級の料理を学んで、1995年に独立。ワンオペレーションで店を回している。
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フランスよりフランス!なビストロ料理

この日は、親しい仲間のバースデー「何食べたい?」と聞いたところ「お肉!」というので、じゃあ『大西亭』だわ、と予約をしました。小雪の散らつく冬の日のアミューズは温かな菊芋のポタージュから始まります。

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前菜は盛り合わせで、通常サイズと大サイズ(+1500円)があります。胃袋には自信のある我々でも、怖くて挑戦できないでいるのが大サイズ。後に続くメインの皿のボリュームを思えば、別腹のはずのデザートが入る余地がなくなるのです。初めての方には、通常サイズをお勧めします‼︎

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グラスワインは赤白ともに1杯1000円。アルザスのピノブランをグラスで注文して合わせました。
この日の盛り合わせは、クスクスのサラダ。南フランスの郷土料理、アーティチョークのバリグール風煮込み。フランス国家最高職人「MOF」のエルベ・モンスのブルーチーズに、フランス・バスクの世界的シャルキュティエ・ピエール・オテイザのチョリソーを乗せて。そして白いクロスが敷かれた高級レストランであれば、白手袋をしたサービスマンがうやうやしく削ってくれてもおかしくはない量のトリュフがドン。その下にトリュフ卵のベーコンエッグが隠れています。

黒トリュフは香りも強く価格もとびきり。このサイズともなればウン十万円! リッチなトリュフ卵のベーコンエッグが前菜に盛られていた。
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トリュフ卵とは、生卵と黒トリュフを密閉容器の中にひと晩置いて、卵にトリュフの香りを移したもの。半熟の目玉焼きにナイフを入れるとトロッと溢れ出る黄身から香るトリュフのふくよかな香りにうっとり。フランス在住歴のある同行者が「ここの料理、フランスで食べるよりフランスなんだけど?」と、ポツリと呟いたひと言が印象的でした。

大西亭流・贅沢ステーキカレー!

「ステーキカレーです!」とちゃめっ気たっぷりにシェフが運んだ皿は、ジビエに後ろ髪を引かれながら選んだメインディッシュ。近年大西シェフが好んで仕入れている滋賀県の木下牧場で飼育されている近江牛「木下牛のサーロインステーキ」(+5500円)。「家族経営の牧場で健康的に育てられた木下牛は、A4、A5クラスの霜降りですけど、綺麗な後口で風味もあって、どの部位も火入れした時に旨いなぁと思うんですよ」という大西さんの話に食べてみたくなったのです。

メイン「木下牛のサーロインステーキ」。牛肉ごろごろの贅沢ステーキカレー。抜群に旨いスパイスカレーだけでもお腹いっぱいに。
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ガリっと表面をしっかり焼いて、それでいて中はロゼ色。ソースではなく、スパイスカレーをソース代わりにというのがシェフの粋な遊び心。このカレー、牛肉を掃除する際に出る端肉(というには大きすぎる塊)がゴロゴロ入り、バスマティライスも盛り込んであります。
「欧風カレーとはまた違って、スパイスカレーって面白いなと思って研究しました」という、大西さん流。すっきりサラリ、ひと口食べるごとに体がほかほかしてきて、食欲増進。サシのあるサーロインをサクサク食べさせます。

スパイス効果で、今夜はデザートまで辿り着けそう! この日はフランスのビストロや家庭で親しまれる「クレームキャラメル」です。固めのプリンに、しっかり甘くて苦みもあるカラメルの焦がし加減がエッジの立った大人味。食事をキリリと締めてくれました。

生クリームを掛けたクレームキャラメル。食後にチーズを選んだ場合はフランス産が3種類ほど盛り合わせで。食後酒と一緒に楽しむのもおすすめです。
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前菜とメインと赤白1杯ずつ飲んで、13000円。ちなみに昼にもディナーコースを注文することもできるそう。夜にヘビーなものは食べられない世代にも朗報です。

屈指の食材を使って、さり気なく豪快に。お皿の隅から隅まで抜かりなしの旨さ。それでいて堅苦しさのない雰囲気に、いつも連れとワイワイお喋りを楽しみながら飲んで食べて。「ビストロってこういう場所だよね」と、満腹すぎてできないけれど(笑)スキップしたいくらいのご機嫌な気分で店を後にします。

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writer

三好 彩子

Miyoshi Ayako

愛媛県生まれ。関西の飲食店の皆様に育てられ、丸々育ったフードライター&編集者。特技はレストランの厨房に潜入することで、調理師免許も取得。イベント司会や企業のプロモーションも担う。共著書に『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく神戸』(株式会社KADOKAWA)がある。