姫路『ドゥ・クルール』の、和の要素香るフレンチコース

鳥取産の魚介に惚れ込んだシェフが骨まで生かして仕立てるフレンチは、白バイ貝の肝ソースを添えた鳥取和牛のテリーヌや岩モズクと切干大根を潜ませたイサキのコンフィなど、和の食材や技法をさりげなく織り交ぜているのが印象的。400本揃うワインのチョイスは、陽気なマダムにぜひお任せを。

酒好き夫婦が営む気取らないフレンチ

JR姫路駅北口から歩いて7分ほど。魚町通りのアーケードから少し脇に入ると、オリーブグリーンの建物が目に入る。「2人揃ってかなりの酒好きでして」と仲睦まじく笑い合うシェフの有吉恒二さんとシニアソムリエの資格を持つマダムの由美子さん。2013年にオープンした『ドゥ・クルール』のコンセプトは、「酒飲みの 酒飲みによる 酒飲みのためのレストラン」。

店名の‟ドゥ・クルール“は直訳すると2つの色。シェフによる料理とマダムが提案するお酒、2人が放つそれぞれの個性やワインの赤と白をイメージしているという。

店の奥に鎮座する大きなワインセラーは、店のサイズに合わせたフルオーダーメイド。客席からは見えない場所にもワインセラーが潜み、年ごとに増え続けるワインは今や400本を超えている。

『ドゥ・クルール』外観
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『ドゥ・クルール』店主夫妻
シェフの有吉恒二さんは1977年姫路生まれ。24歳から料理人の道へ進み、約四半世紀が経つ。マダムの由美子さんは酒好きが高じて、ほぼ独学にて唎酒師とシニアソムリエを取得したという強者。
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『ドゥ・クルール』ワインセラー
ワインボトルを置く向きまでこだわって特注したワインセラー。98%フランス産で、2%日本産というラインアップだそう。
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魚介は鳥取の境港や赤崎港から

「2020年頃から魚介類はほぼ鳥取産ですね。境港のものを中心に、赤崎港からも仕入れています」と食材について話す恒二シェフ。きっかけは懇意にしているシェフからの紹介。地元兵庫産の魚介をうたう飲食店がたくさんある中で、あえて鳥取を選ぶことで個性を放つことができるのも理由ではあるけれど、「何より、創作意欲をそそる素晴らしい食材が多いんです。今日は白バイ貝やイサキ、甘鯛も身厚で抜群のものが入っています」と料理人としてのやりがいを語る。

和食経験も生かした深みある料理

料理は昼夜共にコース料理のみで、昼は3000円から、夜は5000円から。スープ、アミューズ(小さな前菜)、前菜、メイン、デザートの流れが基本で価格により品数が替わる構成。「これでも昔より控えめにしています」と笑う恒二シェフが作る料理は、本当にこれが一人前?と首を傾げてしまうボリューム。それでいて盛付けも味わいも繊細で構築深いのが印象的だ。

鳥取和牛のスネ肉を使った前菜のテリーヌは、追い足し続けている自家製の牛コンソメでじっくり煮込んだスネ肉に、同じコンソメを煮含めた里芋という組合せ。白バイ貝の肝を使ったマヨネーズ風ソースを添えて、よりワインを誘う味に仕上げている。
もう一つの前菜、50℃の低温でしっとり火入れしたイサキのコンフィも面白い。皿底に潜ませているのは、赤崎産のモズクと和えた切り干し大根。「切り干し大根特有の土の香りと合わせると、互いの味が膨らむんです。何とも言えない磯の香りが強い赤崎産のモズクだからできる組合せです」。

調理法を深掘りして聞いてみると、テリーヌの里芋は米の研ぎ汁で下茹でしてから味を入れ、イサキのコンフィの切り干し大根は軽く湯がいて寿司酢に漬けてからオリーブ油を絡めているそう。フレンチひと筋かと思いきや、実はホテルで5年ほど和食も学んでいる恒二さん。「自家製パンは昆布だしで練って旨みを出しています」。和の食材や技法を違和感なく使いこなし、記憶に残る味を生んでいる。

『ドゥ・クルール』の鳥取和牛スネ肉と里芋のテリーヌ
前菜とは思えないボリュームで登場した鳥取和牛スネ肉と里芋のテリーヌ。「肉のおいしさが伝わるように」と、程よく噛みごたえを残したスジ肉の煮込み具合が抜群。付合せの野菜には太くて甘い鳥取産の白ネギも使っている。
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『ドゥ・クルール』のイサキのコンフィ
こちらも前菜の一例で、境港産のイサキのコンフィ。甘夏サラダ、鳥取産の鶏肉で取ったコンソメのジュレ、切り干し大根と赤崎産のモズクを重ねた奥深い味わい。
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『ドゥ・クルール』の甘鯛のウロコ焼き
メインの魚料理・甘鯛のウロコ焼き。カリサクッと揚げ焼かれたウロコにシェフの確かな腕前が見える。甘鯛の骨でとっただしを煮詰め、鳥取産の海藻“モンバ”と合わせたバターリッチな海藻ソースも堪らない濃厚さ。モンバは品種ではなく、春先に採れる様々な海藻を指す鳥取独自の言葉だそう。
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ワインペアリングは3500円から

由美子さんが一品ごとに一杯提案してくれるワインペアリングを頼めば、料理がよりおいしくなること請け合い。控えめコースなら3500円でトータル350㎖ほど。5000円コースと合わせれば、夜でも1万円に収まる価格がまた嬉しい。

「ワインの好みも承りますし、食後酒にシェリーやハードリカーも用意しています。気兼ねせず色々とご相談ください」と頼りになる由美子さん。ベネンシアと呼ばれる細長いひしゃくを使って樽からワインを汲み出し、グラスに注ぐ技術を持つベネンシアドールでもある。

実は2026年7月から3カ月ほど休業して大改装を行うそう。予約時に指定する常連客が多いカウンター席を2席だけワインセラーの前に設けて、テーブル席メインに。現在のビストロムードから、しっとりしたレストラン風に変わる予定だそうだ。
「進化するための変化です」と、声を揃える有吉夫妻。改装前後に訪れて、違いを感じるのも楽しそうだ。

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『ドゥ・クルール』店内
現在の店構えは2026年6月末で見納め。特注のワインセラーはもちろんそのまま残し、外から見えるガラス張り(写真下)はやめるそう。
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