チン電沿いの饒舌なイタリアン、大阪・帝塚山『ラーゴ』
真ん丸な味のバーニャカウダ
上品な木製の扉を開けると、カウンター席が奥へとのびる。グレーで統一したシックな装いだ。打って変わって2階は、白を基調にした明るくカジュアルな雰囲気。帝塚山は年季の入った豪邸エリア。食の経験豊かな方が多く、「北新地もミナミも行くけど、今日は近所でおいしいものを」とこの店を選んでくるゲストが多いらしい。
そんなこの店で、一品目に選びたいのは、名物の「スペシャルサラダ」。根菜に葉野菜が色とりどりに盛り込まれてくる。一緒に届く小瓶は、自家製バーニャカウダソース。これが“モルト・ブォーノ!” 酸味、塩味、甘み、旨み、過不足なく全方位的に調和して、まん丸な味わいとでも言おうか。思わず「おいしい!」と口をついて言葉が出る。
すると店主の池邉正憲さんが目をキラキラさせながら話し出した。「青森産のニンニクのみを3回沸かしては水を代えて仕込みます。バチカン産のアンチョビも美味しい秘訣ですかね」と。ついでに野菜も1つ1つ解説が入る。「カリフラワー、ブロッコリーは別々に火入れして塩水に浸けてます。コイモやサツマイモは皮付のまま蒸して、皮を剥いて。レンコンは焼いてから、色止めにビネガー入りの塩水に。ベビーリーフは、帝塚山に水耕栽培している生産者さんがいて…」。
食材のこと、料理のこと、すべての物語を饒舌に語る池邉シェフは、「思い入れのあるものだけを愚直に作り続けていられる幸せ」を言葉と料理で伝えてくれる。
ペペロンチーノの火入れの瞬間の沈黙
池邉シェフは、関西イタリアンの雄『ポンテベッキオ』で腕を磨いた方。パスタ場も任されていたそうで、その折に習得した技をベースにしたペペロンチーノも名物だ。ニンニク、唐辛子、それに「ピュアオイルより絶対こっちがおいしい」とエキストラバージンオリーブオイルのみで作る。
「ニンニクの火入れはゾーンが狭いんです」という言葉の後、しゃべり続けていた池邉シェフが一瞬黙った。ゾーンを見極めているらしい。ニンニクが色づいたここぞというタイミングでパスタ投入。そして間髪入れず皿へ。火入れの完璧な時が一瞬なら、食べごろも一瞬。「2階に運ぶと、普通に美味しいくらいのレベルになってしまうので」と、ペペロンチーノは1階でしか提供しないという徹底ぶりだ。イタリアンパセリの緑が鮮やかなその一皿は、目が覚めるようなキリリとした味わいだ。
メイン料理は、1品に絞るのが難しいが、「黒毛和牛の煮込み」は、池邉シェフのオリジナリティーが強く感じられるかもしれない。肉は100g以上ありそうな巨大な肉塊。これを「愛知県の相生桜の味醂、島根県の井上古式醤油、玉ネギ、甜菜(てんさい)糖、そして赤ワインをドボドボ入れて3日間漬け込みます。水やブロードはなし。濾してから3時間火入れ。蒸したり圧力鍋は使いません。最後にポルチーニ茸の旨みだけで作ったスープを加えて仕上げます」。
かつて、フランス料理の有名シェフ、ドミニク・コルビさんが赤ワインだけで作ってみせてくれた牛肉の煮込みに感銘を受け、それを元に工夫したのだそう。ポルチーニの赤ワインソース、濃すぎずサラリとしているのに、なんとも滋味深い。
リクエストにより復活したアップルパイ
最後にデザートもご紹介。「昔、テイクアウトできるようにしたら行列ができるほどになった」という人気の品。「あのアップルパイはもう作らないの」と客にリクエストされ、3年前に復活。リンゴの実を、皮や芯と共に赤ワイン100%で煮込み、3回コンポートするという手間のかかる品だ。ゴロゴロと入ったリンゴの食感が素晴らしい。グニャグニャせず、さりとて硬すぎず。こうあってほしいと思う理想的な食感。
ひたすら愚直に“美味”を追求するシェフの饒舌な料理談義を聞きながら、味わうイタリアンは、要予約でランチタイムにも。チン電乗って、のんびりお出かけを。
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- 店名
- ラーゴ
- 住所
- 大阪府大阪市住吉区帝塚山中3-1-5
- 電話番号
- 06-6674-9077
- 営業時間
- 12:00~13:00(入店、前日までに要予約)17:30~20:00(入店)
- 定休日
- 火曜、不定休
- 交通
- 阪堺帝塚山中3丁目駅から徒歩1分
- 席数
- 1階/カウンター8席、2階/テーブル14席(5名以上で貸し切り可能)
- メニュー
- ランチ・ディナーコース9350円~、アラカルト前菜1650円~、メイン2750円~。グラスワイン880円~、3種ワインセット2200円~。
- 備考
- ※サービス料5%(現金お支払いの場合はなし)、2階は使用料10%別。
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