迫力のポーションかつハイクオリティーのビストロ。大阪・北浜『La Tortuga』で、どうすれば1万円分食べられるか⁉︎
「ターブルドット」の心地のよさ
北浜駅から高麗橋方面へ『La Tortuga(ラ トォルトゥーガ)』がある細い路地を目指して歩く。近年は北浜駅周辺も再開発の波が押し寄せ、あちらこちらで工事中だ。
大きく変わろうとしている街の中にある、安定感抜群のビストロは、東京や名古屋からもわざわざ目指してやってくる根強いファンが多い。
店主の萬谷浩一さんは、世界を旅する料理人だ。バルセロナの日本領事館にて料理長を3年務め、その後エクアドル大使館で4年と、20代の頃より長年海外でキャリアを積んだ。
また店を開いた後も、プライベートで各地を旅してきた。
以前訪れたというペルーの都市クスコは、世界遺産マチュピチュへの起点となる街だ。萬谷さんが入った一軒のレストランには大きなテーブルがあり、各国からの観光客がテーブルを囲んでそれぞれ食事をとっていた。「人種も様々、1人客もいれば2人連れやグループまで、知らない人同士がひとつのテーブルで食事をしている。隣り合った人たちに会話が生まれたり、そんな光景がなんだかとてもいいな、と感じて」。
『トォルトゥーガ』でも以前は個別のテーブルと椅子を置いていたが、リニューアルを機に大きな一枚板のテーブルを配した「ターブルドット」スタイルに変更した。「ターブルドット」とは、フランス語で、主人がもてなす大きな食卓というニュアンス。そこに居合わせたゲストが同じテーブルで銘々に食事を楽しむ。レストランなのだが、どこか萬谷さんの家のダイニングに招かれたようなリラックスした雰囲気が漂う。隣のゲストに運ばれる料理を横目に見て「あれも美味しそうだね!」と話す声が聞こえてくる。そんな屈託のないざわめきがなんだかとても心地がよいのだ。
ディナーメニューはアラカルト
ディナーメニューはアラカルトのみで、定番から季節料理まで、フランス郷土料理をベースに肉系が多い構成だ。また土日の昼は、夜と同じメニューを提供しているので週末に昼からがっつり食べてワインを空けるのもいい。
席に着いたらサインペンで記された味わい深いメニュー表を端から端までじっくり眺めて何を食べるか、何皿食べられそうか連れと相談する。
アミューズは、萬谷シェフの盟友で、かつて靱公園にあった伝説の店『ブランジュリタケウチ』、今は兵庫県西宮市にある『生瀬ヒュッテ』の竹内久典さん特製の「パン ド カンパーニュ」に、自家製のリエットを挟んでこんがりと焼いたトーストサンド。オリーブとチーズも付いたセットだ。この日のチーズはアルプス山脈に位置するフランスのサヴォワ地方で造られているセミハードタイプの「トム ド サヴォワ」。食前にチーズを添えるのは胃を保護してくれる効果があるからと、萬谷さん。しっかり食べるために整える、始まりの皿だ。
ワインにぴったりな前菜“パヴェ”
夏の日の前菜に選んだのは南フランスの郷土料理「イワシと野菜の重ね焼き“パヴェ”」。脂が乗った身厚なイワシに塩を打ち、茹でて薄切りにしたじゃがいも、ナスとトマト、刻んだイタリアンパセリ。オリーブにアンチョビやニンニク、オイルを合わせて作るタプナードソース。これらを耐熱容器の中に、交互に何層も重ね上げ、オーブンでじっくり2時間焼き上げる。噛むたびに各素材の味が重なり合って口いっぱいに広がりしみじみ旨い。ミネラル感の感じられるすっきりした白ワインと合わせたくなる、力強い味わいのひと品だ。
ワインの品揃えも充実している。というのも酒販免許を持つこちらでは、国内外の個性的な造り手の銘酒を多種集めてあるので、好みを相談してチョイスしよう。また仕入れるだけでなく、今、萬谷シェフは長野県のワイン生産者の元に月に1度通って、ブドウの栽培からワイン造りに参加しているという。「5年ほど前から通っていて、今年いよいよ熟成したワインをお披露目できる予定です。南アルプスを眺めながらの畑作業が最高に気持ちいいんですよ」。料理人人生の集大成として、引退する前の5年間は自分の携わったワインだけを出す店にできたらいいなと、目を輝かせながら話してくれた。
南アルプスでのワイン造りを、萬谷シェフはさらりと事もなげに語るが、他の食材を含めて、気になる生産者に会いに産地を訪ねる情熱とフットワークの軽さに驚くばかりだ。
作る人の想いを知ることで、託された素材の持ち味を最大限に引き出す料理を手がけ、提供する。私たちはその恩恵を受けて美味しく食べられている。決して蘊蓄を語るわけではなく、魅力的な人たちが丹精込めて作る食材の良さをストレートに伝える、萬谷シェフならではのごくナチュラルで愛に満ちたループがここでは成立している。だから『トォルトゥーガ』の料理は長年多くの人を惹きつけて止まない。
重量1.2kg⁉︎ 迫力のメインディッシュ
メインディッシュも魚料理1対肉料理が9割という構成だ。煮込み料理や、仔羊のロースト、鴨料理など、迷いに迷ってチョイスしたのは「鹿児島 霧島ロイヤルポーク 骨付ココット」だ。
よく運動し、健やかに育てられた、しなやかな身質で綺麗な脂の旨みが特徴の豚。
シェフが焼き始めたのはその500gの塊。旨みを逃がさないように表面を焼き付けてからオーブンへ移し加熱する。オーブンから取り出したらさらに10分ほど蒸らして肉汁を安定させる。
この厚み、塊で焼いてあるからこそ、噛み締めた時に伝わる肉汁や旨みがある。骨付き500gというポーションにこだわる理由だ。
また、豚肉の下に隠れている、付け合わせの野菜もひょっとしたら肉よりも重量が多いのではというボリューム感。この日はズッキーニ、カブ、ペコロス、豆に里芋など、数えきれないほどの野菜たちがゴロゴロと敷き詰められていた。おまけに仕上げに大きなムール貝もたっぷり加えた。
ココットの蓋を開けると湯気とともにハーブと豚、貝の香りが先に立つ。また豚の旨みを吸った野菜たちのおいしさも格別!
取り分けるのも一苦労の、肉と野菜合わせて総重量1.2キロ超えのメインディッシュ。これが5000円しないなんて、本当にどうかしている。
ワインとともに味わいながら、ゆっくりゆっくり食べて、はち切れそうなお腹。
2人だとアミューズに、前菜1〜2皿、メイン1皿が妥当なところ。4人だとメインをもうひと品オーダーしてもいける。さらに余裕があれば食後にデザートかチーズや食後酒を嗜むのもありだ。
この日は豚のメインディッシュを女性2人で食べたので、ワインを2杯とアミューズ、前菜1、メイン1でノックアウト。1人当たり5950円。やっぱり「このクオリティーの料理でこのお値段、おかしない?」と首を傾げる。around10000円に到達するにはしっかりワインをボトルで空けるしかない⁉︎
とにもかくにも、この値打ち感を知っている人たちが、密かにずっと『トォルトゥーガ』へ通い続けている。
data
- 店名
- La Tortuga(ラ トォルトゥーガ)
- 住所
- 大阪府大阪市中央区高麗橋1-5-22
- 電話番号
- 06-4706-7524
- 営業時間
- ランチ12:00〜14:00、ディナー18:00〜21:00
- 定休日
- 火曜、水曜
- 交通
- 北浜駅から徒歩3分
- 席数
- テーブル20席
- メニュー
- ランチコース(平日のみ)3300円。本日のスープ770円、パテドカンパーニュ1430円、鴨とフォアグラのテリーヌ2970円、本日の魚料理3900円〜、仔羊ランプのロティ400g〜6800円。ボトルワイン8500円〜。
- https://www.instagram.com/la_.tortuga/

writer

三好 彩子
Miyoshi Ayako
愛媛県生まれ。関西の飲食店の皆様に育てられ、丸々成長した食いしん坊フードライター&編集者。特技はレストランの厨房に潜入取材をすることで、調理師免許も取得。イベント司会や企業のプロモーションも担う。共著書に『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく神戸』(株式会社KADOKAWA)がある。
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