白いふわとろベールに包まれた“山芋ラーメン”。大阪『梅田山芋研究所』

今年6月、梅田・兎我野町に間借りでオープンした『梅田山芋研究所』。提供メニューは、“ふわとろ”のとろろをこれでもか!というほどのせた一杯だ。その白いベールの中身とは?

魅惑の「クリアドロドロ」「にごりドロドロ」

ラーメンは、「にごりドロドロ」と「クリアドロドロ」の2種類。どちらもふわっふわのとろろがたっぷりで麺が見えない。かき分けながら麺をすすると、とろろが絡みつき、“ドボドボッ”とラーメンではあまり聞き慣れない音が鳴る。

『梅田山芋研究所』クリアドロドロ
クリアドロドロ1500円。約120gのとろろが表面を覆い尽くし、麺が見えないほど。ラーメンには、かん水以外の添加物や化学調味料を一切使用していない。
10

とろろのベースとなる山芋は、長野・信州産の「アルプス長芋」。まずはマシンでおろし、なめらかになったら手で空気を含ませながら混ぜる。仕上げに手で混ぜる回数は、なんと1人前あたり約1000回。「慣れれば3~4分でできます!」とオーナーで山芋料理家の八代進一さんはケロッとした様子。この地道なひと手間が、とろろの持ち味を最大限に引き出している。

『梅田山芋研究所』とろろを作る様子
「山芋」は、長芋、自然薯など「ヤマノイモ科」の芋の総称。ラーメンに使う「アルプス長芋」は、強い粘りと甘さを持つ。
10

麺は、オーストラリア産の硬質小麦「プライムハード」と北海道産の超強力粉「ゆめちから」を合わせた自家製中太麺。もっちりとした食感、ぷりんとした弾力があり、とろろに負けない存在感だ。一方で、麺の長さは約19㎝と短め。するすると啜ることができ、最後まで食べ進めやすい。

『梅田山芋研究所』麺を持ち上げる
自家製中太麺は約19cmと短め。「とろろが重いので食べやすいように短めにしました」と八代さん。
10

そんな麺ととろろを受け止めるのが、「クリア」と「にごり」の2種類のスープだ。「クリア」は、鶏、豚、イリコを煮込み、焦がしイリコオイルを利かせた醤油ベース。「板海苔よりも風味が良い」と、バラ海苔をトッピングする。「にごり」は、鶏とイリコを使った白湯ベースのスープ。仕上げに回しかける紀州備長炭の香りを移したオイルが、まろやかな味わいに香ばしさを添える。

『梅田山芋研究所』にごりドロドロ
にごりドロドロ1500円。「にごり」「クリア」共に、鹿児島豚を薄切りし、紀州備長炭で低温調理したレアチャーシューをのせる。
『梅田山芋研究所』にごりドロドロのスープ
10

八代さんは「山芋は香ばしい香りと相性が良いので、焦がしイリコオイル、紀州備長炭のオイルをそれぞれに加えました。とろろを使うと味わいがまったりしてしまうので、そこに刺激とキレをプラスするイメージです」と話す。

必食!シメのとろろご飯

麺を食べ終えれば、とろろが絡んだスープが残る。そこに合わせたいのが、“米”だ。

あっさりと軽やかな味わいの長野県産「風さやか」ともち米のような粘り気と甘みを持つ秋田県産「淡雪こまち」をブレンドしたとろろご飯専用の米を、丼にダイブさせてもよし、茶碗でスープをかけながら食べてもよし。

スープには、とろろが溶け込み、優しくまろやかな味わいに。6分づきにした米はほどよく食感が残り、スルスルとかき込める。ラーメンも軽やかな食べ心地のため、女性でもシメのとろろご飯まで無理なくたどり着くはずだ。

『梅田山芋研究所』ご飯
ご飯 小200円、並300円。軽く塩が振られているため、まずはひと口そのままで。
『梅田山芋研究所』とろろご飯
10

始まりは山芋料理専門店

『梅田山芋研究所』の源流は、兵庫・西宮にあった知る人ぞ知る専門店『鳴尾山芋研究所』だ。

2013年、八代さんがオープンさせた当初は、ラーメンの“ラ”の字もなく、山芋料理の専門店として営業していた。開業から2年後にはアラカルトからコース料理中心へとシフトし、女性客が8割を占めるなど、一定のファンを獲得した。

しかし、「“コース料理のお店”というイメージが定着し、気軽に足を運びにくくなってしまっていました。近くに大学もあったので、若い人をはじめ、もっと多くの方に知ってもらいたかったんです」と、ラーメンを始めたきっかけを振り返る。

まかないで提供していたこと、そして何より自身がラーメン好きだったことから、2017年には昼営業に加え、深夜24時から朝5時までのラーメン部門を始動。客層はガラリと変わり、学生を中心に評判を呼んだ。営業開始も23時、22時と徐々に早まり、気づけばラーメン専門店に。今年1月の閉店まで、連日完売が続いたという。

『梅田山芋研究所』オーナーの八代進一さん
オーナーの八代進一さん。20代前半で出会った自然薯農家との縁が、山芋料理家としての原点。『鳴尾山芋研究所』は、薪×山芋料理×ジャズを融合させた『山芋研究所B.C』として西宮・甲山(かぶとやま)に移転オープン予定。甲山の店舗には製麺室も設ける。
10

目指すは『吉野家』!?山芋ラーメンを全国へ

『梅田山芋研究所』は今年6月26日、兎我野町の焼き鳥屋『羽衣のあしあと』のランチタイムを間借りする形でオープンした。八代さんによると、こちらの店舗はFC(フランチャイズ)1号店だという。

「鳴尾の店舗では、『体調を崩しかけている時に来ると身体が整う』と言ってくれる方もいて、山芋ラーメンが少しでも人々の健康に役立っているのかな、と実感しました。もっと気軽に、もっとたくさんの人に山芋料理を届けるために、ラーメン業態でのFC展開を決めました」と話す。

今年9月には、大阪・八尾への出店も決定しているといい、「元々、海外進出を視野に入れてラーメンの提供をスタートしました。まずは国内で、『吉野家』さん、『松屋』さんのように、多くの方に親しまれる存在を目指したいです」と意気込む。

「長芋は、脂肪の吸収スピードを穏やかにしてくれるんです」と山芋料理家らしく、その魅力を語る八代さん。山芋料理専門店から始まり、形を変えながらも、一貫して追い求めてきたのは山芋の可能性だ。白いふわとろベールに包まれた一杯には、そんな12年以上にわたる研究の成果が詰まっている。「ラーメンは食べたい。でも少し身体のことも気になる。」そんなお昼に頼りたくなる一杯だ。

『梅田山芋研究所』看板
8月からは昼に加えて夜営業も開始。
10

おしごとランチ、おでかけランチ

限られた時間と予算で、つい無難に済ませがちな毎日のランチ。
コスパ重視からちょっとした贅沢まで、明日行ける”ちょうどいい”一軒をご紹介。

詳しくはこちら

writer

amakara.jp編集部

amakara.jp

関西の食雑誌「あまから手帖」(1984年創刊)から生まれたwebメディア「amakara.jp」を運営。カジュアル系からハレの日仕様まで、素敵なお店ならジャンルを問わず。お腹がすくエンタメも大好物。次の食事が楽しみになるようなワクワクするネタを日々発信中。

recommend

読まれている記事

『あべのハルカス近鉄本店』お菓子売り場がリニューアル。百貨店初&関西初が続々!

兵庫・伊丹『KUROPURI』。フレンチのシェフが手がける「クロワッサン」と「プリン」の専門店

京都『和菓子&ワイン 養老軒』が届ける フルーツ大福とワインの楽しみ方

「りくろーおじさんのチーズケーキ」おいしい理由&並ばず買える方法も

安田淳一監督【前編】待ってました! 日本アカデミー賞「侍タイ」スピンオフドラマ放送。独占インタビュー

『資さんうどん』広報がこっそり教える!「実はコレも食べてほしい」隠れた名物

『粟玄』の和洋[大阪]老舗おこし屋のモダンな名品

絶対に失敗しない「くたくたブロッコリーのタラコスパゲッティ」『寺町コロンボ』のひと手間レシピ

【番外編】俳優・津田寛治さん絶賛の「おたべ」。進化系、変化球に驚き!

ギネスビールが生む深いコク。大阪・中津『IRISH CURRY』の名物ポークカレー